09 爆発の防壁
――今日は約束の日。バザガジールと関わった組にちょっと余裕を持って貰おう、もとい少しばかり頭を冷やしてもらう為に、時間を作った。
その場所へ向かう道中――、
「いやあ……俺達までご一緒させてもらえるなんて、ありがとうございます! オルヴェールさん!」
緊張感を隠す為に、ひょうきんに話してみせるのはユーディルだ。
今回は結構別メンバーでの活動。
せっかくならみんなで特訓した方がいいよねと、声をかけてみたところ、俺のパートナーであるシドニエや当事者であるアルビオとパートナーであるルイスをはじめ、ソフィス、ユーディル、ロバック、ミルア、ユニファーニも一緒である。
アイシアはポチとの訓練、それをリュッカやナタルが付き添いといったところ。
ちなみに今回はフェルサも一緒だ。何せ向こうの元パーティーメンバーだ、出席しない訳がない。
「いいの、いいの。メンバーが多い方がいいからね」
本来ならパラディオン・デュオの予選前に、こちらの情報も公にはしたくないが、そこまで険悪に競い合っている訳でもない。
結構、気楽な感覚で誘ってみたのだ。
これならアルビオ達もピリピリした重苦しい空気も出しづらいだろう。
「でも冒険者の方々にお会いする機会を用意してもらえるなんて、ありがとうございます」
バザガジールの件で根を詰めていると聞いていたが、あまりそのような様子には見えない。
アルビオは嘘を隠し通せるほど器用な性格はしていないが、本心を隠すような不器用な性格はしている。
「別に。サニラに連絡なら私を通せば簡単だから……」
「そう言われてみればそうですね。……彼についても色々と謝らなければならないと思っていたので……」
「何で?」
「いや、僕のせいで、彼は……」
どうやらバークが吹き飛ばされたことを悔やんでいるようだ。
俺達もある程度は冒険者達から話は聞いている。そこから察するに、別にアルビオのせいだとは思わなかったが、当人からすればバザガジールの狙いはそもそも自分であったことから、そう思ったようだ。
それをわかってか、ふうと呆れたため息を吐く。
「それ、バークの前で言っちゃダメ。アイツを傷つけたくないなら尚のことね」
「……!」
「そのバザガジールに斬りかかろうとしたのはバークの意思なんでしょ? だったらそれを貴方のせいにされたら、向こうは面白くない」
おっしゃる通りだと思います、フェルサさん。自称聞き上手は伊達ではないね。
バークの考えたなりの答えを否定することになる。
「……そっか、そうだよね」
「そうですよ! 男の子ってそういうの気にしますから、ね?」
ルイスは他の男性陣に同意を求めるが――、
「いやぁ……」
「えっと……」
「う、うーん……」
そんな状況に陥ったことが無いからと、何とも情け無さが滲み出るお返事。
「まあとにかくフェルサの言う通りだよ。……でも、思うことがあるなら、謝るよりお礼の方がいいと思うよ」
その方が相手側は一人の男として認められたように捉えることが出来るだろう。
良好な人間関係を成立させるなら、お互いのことを認め合わせるのが一番。
男なら特にその方がいい。
「そうだね。ありがとう、リリアさん」
納得してもらえたようで何より。俺だって伊達に元男ではない。そういう気持ちを理解してアドバイス出来ることはメリットだろう。
「それにしても私達まで誘ってもらえるなんて……」
「いいんじゃない? 知らない仲でもないし」
「まあまあミルア。シドがどれだけ強くなったか見るいい機会になったじゃない」
「うん。そうだね」
そのシドニエだが、あまり面識のないメンバーもいる影響か後ろをとぼとぼと様子を窺いながら歩いている。
「コラっ! シド。しっかりしなよ! リリアちゃんが企画してくれた強化訓練なんでしょ? しゃんとする」
「う、うん」
まあでも、ちょっと誘い過ぎたかなぁと思ってはいるが、アイシア達側にやると、レオン達が気を使いそうだし、こっちだよね。
そんな大所帯で喋りながらしばらく歩いていると、目的地である冒険者の訓練広場へと到着した。
「あ、来たわね」
「お待たせ」
「……想像以上に人数が多くない?」
聞いていた人数を明らかにオーバーしてない? と表情が引く。
「まあまあ賑やかな方が重い空気にならなくて済むでしょ?」
「まあ……そうかもだけど」
――という訳であらかた自己紹介も済んだところで、早速特訓内容の説明……と言っても、模擬戦や魔法の実演練習などやることは変わらない。
いつもと違う面々であれば、新たな刺激や感性を得ることで学び取るものがあると言う主旨の元、行われる。
と言っても、ぶっちゃけ誘った面々はアルビオや冒険者側の戦い方から学ぼうという姿勢で来ている為、バーク達による模擬戦から始まった。
「こうして対面させてもらえるなんて、嬉しいぜ」
「こちらこそ。実戦経験ではそちらの方が上です。学ばせていただきますよ」
アルビオの提案で、バークとグラビイスのみと対決させてほしいとのこと。
何か試したいことがあるようで、それをルイスも知っているよう。
「今から何かするの?」
「うん。アルビオさんは二人の精霊を顕現させて戦うことが出来るようになりました――」
ただ、武器化するような直に触ることが条件、ということが前提という話だそう。
「――それを踏まえて、色んな組み合わせを考えてるんです」
「へぇ〜」
「それって、リリアちゃんの黒炎みたいな?」
「複数属性を持っているとその辺の融通も利きそうだよね」
羨みながら、周りも話に割って入る。
複数の属性を持たずとも、融通を利かせて戦うことを学ぶという観点については是非、聞いておくべき話だろう。
ルイスの話曰く、複数の属性での術式開発や精霊による事象現象などは、ある程度規模が大きなものになる。
試すにしても一人では分析できることに限界があるし、周りの魔物では試験をするには力不足。だからと言って、光属性の目覚ましい実力を持つ彼女に受け手になってくれや学校の友人達は論外だ。
そこで、今回の話はアルビオにとっても都合がいい。
冒険者ならある程度の危険を熟知しているはずだし、何より魔人事件で共に戦った旧知なら、アルビオのことも理解している。受け手としてはもってこいだ。
実際、バーク達も最近は激しい特訓をしていると耳には入れている。
そのことから、実戦経験の豊富なバーク達なら試験的に運用する複数の属性の戦い方にも対応し、自分の気付かない盲点を指摘できるかも知れないということだ。
バーク側にとってもバザガジール以来の強敵との模擬戦であり、自分達とは戦い方の根底が違う相手との戦いは、あらゆる面から見てもメリットになることは多い。
要するにはお互いメリットのある模擬戦になるということだが、周りにあの事件――バザガジールのことを知らない面々もいるせいか、そこまで緊迫した雰囲気に流されることもないだろう。
こちらとしても、ちょっと安心した心持ちで見ていられる。
「では、始めます! ――ヴォルカード! アルヴィ!」
右手には赤黒く焦げ付いた焔を纏った、全身真っ赤な片手剣、左手には片手で軽く振り回せるほどの小型の石斧へと精霊達は姿を変える。
「えっ? 二刀流でも剣じゃないの?」
「うん。使い勝手は剣とそんなに変わらないんだって……」
そのアルビオの姿に俺とルイス以外の一同は、物珍しそうな表情で見る。
「す、すげぇ……」
「う、うん。……何か迫力があるね」
熱気の影響か陽炎が揺らめき、アルビオの姿に威圧感を与える。
だがその物々しい雰囲気に怯むことなく、バークは突っ込み、グラビイスが後に続く。
「――いくぜっ!」
前に見た動きよりも速くなっている。一気に距離を詰めるその動きに前衛陣も驚く。
だが、怯まないのはアルビオも同様のようで、勢いよく突っ込んでくるバークに対し、武器を構えるだけで動きがない。
すると、ガラ空きだぜと真正面から斬り込む。
「――はあっ!」
アルビオは後ろへ軽く飛んで躱す。すると――空ぶったバークの剣先が、チリっと何かを擦る音がしたかと思うと……、
――ボボッボボオォオーーンッ!!
「――うおぉおっ!?」
「――なっ!? バーク!」
急にバークの目の前で爆発が起きた。思わず吹き飛ばされる。
「何よあれ!?」
するとその隙にと、アルビオが今度は攻め込む。
「――はあっ!!」
それを見たグラビイスが灼熱の刃を受け止める。
「……一体今のは何かな?」
「さあ? 何だと思いますっ!」
ガインッと激しい鋼のぶつかり合う音が響き、戦闘が続く。
バークも直ぐさま体勢を立て直し、二対一の戦闘が繰り広げられるが、以前としてアルビオが有利。
その訳は……、
「――ぐおっ!? くそっ……」
「大丈夫ですか!? グラビイスさん!」
依然として正体の掴めない爆発。この爆発により一定の距離を取りつつ、相手にはダメージも入る為、アルビオが有利な展開へと持ち込んでいる。
しかもどこから斬り込んでも、あの爆発が発生する。
この爆発は誰の目にも明らか。アルビオが仕掛けたものだろう。
「ねえ、ルイスちゃん。あの爆発は何?」
「さあ? 私にもよくわかりません」
どうやらルイスにも教えていないようだ。あくまで試験的な防御策なのか。
アルビオの性格上、パートナーであるルイスに教えていないというのは、見てわかる通り、危険で試すことが難しかったのだろう。
「どう見る? リリア」
「ん〜……」
正直、カラクリはわかっている。おそらくは粉塵爆発だ。
だが、粉塵爆発は密集した粉状のところで摩擦や火気が発火原因となるはず。
摩擦はおそらくバーク達が振った剣、火気はアルビオの炎の精霊の剣だろう。爆発の発動タイミングはコントロールが可能だろう。
問題となるのは、粉塵爆発を起こす為の材料である粉である。
地面はグラウンドのような乾いた砂状の地面。先程から交戦している三人の動きで軽く足元に砂煙が舞う程度。
とてもじゃないが、バークの目の前で爆発を起こすほどのものとは程遠い。
だとすると……、
「ねえ、ルイス。あの斧って地の精霊だよね?」
「うん、そうだよ」
「どういうことよ」
「……おそらくあの爆発は粉塵爆発だよ」
「ふ、粉塵爆発?」
ほとんどが不思議そうな顔をする。
魔法で爆発を起こせる世界だ、粉で爆発が起きるなんて現象は先ず想像がつかないだろう。
だが、アルビオは向こうの世界から来た勇者の子孫だ、そのような戦い方をしていた記録か何かあったのか、子孫の直感的なものがあったのか、定かではないが思いついたのだろう。
粉塵爆発の原理を説明すると、今回の爆発について予想を立てる。
「推測だけど、目に見えないほどの砂が空気上に舞っていて、剣を振ることで砂が密集。そこから剣を振り抜くことで摩擦が発生して爆発を起こした……てところかな?」
「あれだけの爆発を起こしたのは、地の精霊と火の精霊による熱量と砂の影響……」
「多分ね」
摩擦はマッチを擦った感じで、砂はおそらく可燃性のある物質として散布しているのではと予想ができる。
「え、えっと……つまり?」
話についていけないとユニファーニが首を傾げると、呆れたようにサニラが説明する――。
アルビオが粉塵爆発を起こした原因はリリアが説明した通り。そのカモフラージュとして砂をコントロールすることで、あたかも火の精霊による爆発魔法を使ったように見せる為、不用意に連続爆発を起こさなかった。
そうしない理由はアルビオの周りが吹き飛ぶことも計算には入れているだろうがと説明。
「つまり、空中に浮遊している罠型の魔法陣で自動、誘導防御が出来るって認識が正しいかしら?」
サニラの推理に俺の同級生達は感心して驚く。だがジードはその推理ではなく、アルビオに感心する。
「凄いな。さすが勇者の末裔と言うべきか」
「そんなこと言ったらリリアもじゃないですか? ジードさん」
「確かにそうだね、よくわかったね」
「いや、私も似たようなことをしたことがあるので……」
以前、アイシアとの連携でやってみせたことがある。あの時はダーク・スナッチという黒い霧状の煙で起こしたものだ。
「面白そうね、私も試してみたいわ」
だがあれとは違い、アルビオのものは融通が利くあたり、かなり厄介な防御術だ。
向こうで戦うバーク達はどう判断し、どう対処するのか――その彼らは様子を見るように距離を取る。
「くそっ、あの爆発、どうにかなれねぇのか?」
「ちょっと冷静になれ。とにかく不用意に近付くのはダメだ」
「でも向こうからも近付いてくるんですよ。無茶言わないで下さいよ」
アルビオの防御術はカウンターとしてほぼ成立しているように思う。
それは対人している二人がよくわかっている。その為、攻めあぐねている。
しかも、
「――風の精霊よ、我が呼びかけに――」
「くそっ! 呪文の詠唱まで……」
アルビオはどうやらこの防御術からの攻め方を果敢に試してかかる。
どこまで通用するものなのか、とことんまで試すつもりのようだ。以前のアルビオなら考えられない行動力。
しかも攻め方も悪くない。バーク達が攻略困難な防御術に対処できない間に、追い詰めるような呪文詠唱をすることで、考える時間にも制限をかけてくる。
攻め方にもバリエーションを増やす辺り、バザガジールの影響なのだろうか。
バークの焦る気持ちが前へ走る。
(さすが勇者の末裔ってところか、どうすればいい……)
バークはアルビオをしっかりと観察する。
アルビオが詠唱しているのは魔法陣の色から風魔法。周りは熱気による陽炎が揺らめく。
他に変わったことがないか考えていると、ふと思ったことがある。
それはアルビオに向かって剣を振った際に、違和感のある感覚があったことを感じていたことを思い出す。
その違和感は刃の部分にまとわりつくような重みを感じるものだった。
だが、身体には特に変わったことを感じなかったのにと手の平を見ると、微かに汗に湿った砂がざらついている。
(何だ? これは……?)
確かに砂埃はたっていた。だが、手にざらつくほど巻き上がっている訳ではない。
「――バークっ!!」
「――っ!?」
詠唱が終わって警戒しろと叫び声が聞こえる。
「――サンダー・ボルト!」
二人に向かってガガァンっと激しい雷鳴が鳴ると同時に、地面に白い光が降り落ちる。
二人共、間一髪で躱しきるが、模擬戦とはいえ、直撃していれば只では済まない。
その事は黒こげになった地面を見れば一目瞭然。その緊迫した戦いに一同は息を呑む。
「はは、凄えな。……さすが俺が尊敬する勇者の子孫だぜ」
「……言っておきますが、その勇者に僕はまだまだ程遠いですよ」
尊重と謙虚の意見が交わされる中、バークはどう攻めればいいか考える。
(手の砂は多分、あの人のせいだ……そうか!)
まとわりついていた物が砂だと気付く。
爆発のカラクリはわからないが、この砂による何かが起こっているとわかるだけで十分だった。
「それなら……」
バークは剣を地面に手早く刺していくと、そのまま突っ込んだ。
「――なっ!? バーク!?」
「――!」
その行動にアルビオを含めた一同も驚く。
しかし、剣を捨てたバークは驚く間もないくらいに素早くアルビオの懐まで迫る。
だがアルビオも懐に攻め込まれることは想定内のよう。燃え盛る刃を振り下ろす。
「――はあっ!!」
だが、バークは紙一重で躱すと、アルビオに飛び掛かる。
「ぐうっ……!?」
腹に飛び掛かられた為かそのまま倒れ込むと、バークは腰に刺している短剣を素早く抜き、突きつける。
「はあ、はあ……」
「降参です。参りました」
困ったように微笑みながら、両手を上げた。
それを見たバークは、緊張の糸が解けたのか、はあっと安堵のため息を吐く。
「いやぁ、それでも凄かったよ。さすがだね」
そう言いながら手を差し伸べるグラビイス。
「いえ、実際アレの隙を突かれたのです。僕の見通しが甘かったんです」
その手をありがとうと取ると、立ち上がった。
「凄かったね。アルビオの防御術もそうだけど、バークの思い切りも良かったね」
「あ、ありがとうリリアちゃん!」
「なにデレデレしてんのよっ!!」
サニラは苛つきながら、バークの足を踏みつける。
「――いでぇっ!? お前のその人の足を攻撃する癖、何とかしろよっ!!」
「うっさいわよっ! バーカ!」
二人はお決まりの夫婦漫才を始めたので、スールしてアルビオに感想を尋ねる。
「実際どうだった?」
「はい。彼のあの突発的な行動には驚かされました。僕は色々と準備してから行動を起こすタイプなので、咄嗟の判断が難しいですね」
先程の戦いにちゃんと反省点を言えるところを見ると、ルイスが落ち込むほど没頭しているようには感じなかった。
それとも、この状況がアルビオを冷静な考えへと導いているのか。
「いや、アルビオ君のあの爆発には俺達も焦ったぜ」
「しかし、よく気付いたわね。あの爆発が摩擦による粉塵爆発だって」
隣で夫婦漫才をしていたサニラがグラビイスの意見を聞いて、バークに尋ねると不思議そうな表情で、
「粉塵爆発?」
と答えた。
「……あんた、知らずに突っ込んだの?」
「いやぁ、何か手に砂が滲んでてさ、剣は振った時重かったし、剣を捨てればいけるかなぁって」
その本能的な考えにサニラは呆れたが、アルビオはほうと感心する。
「なるほど、見破られていましたか」
「いやいや、この馬鹿のは偶然ですから……」
「いえ、きっと偶然ではありませんよ。普段から剣を振り続けた、彼の経験則から成る判断材料ではありませんか? 凄いですね」
好きな男子を褒められると、ついサニラも喜んでしまう。
「そ、そんなこと……ありませんよ」
「何でお前が照れたんだよ」
「う、うっさいわねぇ!!」
照れ隠しに再び夫婦漫才を始めようとするが、
「貴女も凄いですよ、よく気付きましたね。粉塵爆発……でしたっけ? 粉での爆発の名前なんて初めて聞きました」
どうやらアルビオ自身が突発的に見つけたことのようだ。この現象の名前までは知らなかったようだ。
「ああ、いえ。気付いたのは彼女ですから」
「リリアさんが?」
「まあね。私も似たようなことをした事があったから……」
「何だよ、その粉塵爆発って……」
そのバークの疑問にアルビオの狙いを添えて説明する――。
「なるほどなぁ。つまり地の精霊が細かい砂を辺りに振り撒き、熱を帯びた空気の中で鋼が砂を擦ることで爆発が発生。……それなら鋼を扱ってる人間に対してはほぼ無敵の盾だな」
グラビイスが感心しながら復唱する。
剣での攻撃を行えば、確実にどこからでもカウンターが可能となる素晴らしい組み合わせだと褒めるが、当人は課題を上げる。
「いえ、結局拳や魔法など対応についてはかなり緩いものと感じました。……やはり実戦形式でやるのは違いますね」
「こっちこそ――」
このままだとお互いの褒め合い、譲り合いで時間が経ちそうなので、
「積もる話は休憩しながらでもよくない?」
「それもそうだね」
「でもバーク。今回は模擬戦ということもあってこの結果で済んだけど、本当の実戦だったらさっきのはただの無謀な突っ込みなのよ! 命を捨てるつもり?」
サニラはさっきの行動を反省しろと訴えるが、バークはきょとんとした表情。
「いやだって――」
「タネが粉塵爆発だったから良かったけど、無詠唱魔法だったら、あの行動じゃあ死んでたんだからね」
言われてみればとアルビオは、はっとなる。
「……確かにあの防壁に頼り過ぎている件はあった。それを逆手に相手にそう思わせるということも――」
ぶつぶつと分析と反省を始めた。
「ちょっとアルビオさん! 休憩しましょう、ね?」
何だかルイスやサニラが言っていた相談事って好きな男子がかまってくれなくなったことへの不安感に思えてきた。
恋愛感情が希薄なのは男子の特徴だからね。
バザガジールの影響はそりゃああるだろうが、悪い方向に行かなさそうで安心した。
するとその案に乗ったのか、アルビオは改めてお手合わせしたバーク達にお礼を言う。
「とても良い経験になりました。ありがとうございます」
「おいおい、今からだろ? 少し休憩したら、また頼むぜ」
「はい! 是非! ……ああっ、あとそれと――」
スッと握手を求める。
「この間はありがとうございました」
バークは、はっと眼を見開くと、アルビオを見た。
その彼の表情は優しく微笑み、お互いを励みに頑張っていきましょうと認め合うような感じに捉えられた。
「お、おう」
バークは応えるように、強くその手を握った。アルビオも。
俺はアルビオのその行動に驚いた。
出会った頃のアルビオはハイドラスの後ろをついていくだけだった。
誰かに手を差し伸べるなんて、ましてや認め合うような仕草を取る前向きな姿勢に、あの頃のアルビオの面影はないように見える。
それだけバザガジールとの死闘はアルビオにとって大きな出来事であったのだろう。
勿論、その限りではないだろうが。
だが、これはバークにも言えることではないだろうか。
「……こりゃあ二人がそわつく訳だ」
なんてほくそ笑むが、その成長に対して思うことは俺にもある。
俺にも変わったものがあったのだろうかと。




