25 結論が出ました
「リリアー! 早く入りなさい!」
下の方から大きな声が響いて聞こえる。よくある光景ではなかろうか。
「ああっ……えっと、もう少し待って」
弱々しい返事を返すが訊こえているかは分からない。
「どうしよう! いや、悩んだって結論は一つしか無いけどさ――」
「リリアー!!」
「は、はーい!」
今度は大きな声で返事する。母親の急かす声で思考があやふやになってしまったが……、
「結論は一つしかない、よね」
諦めながら下着の入っている棚を開ける。仕方ない事なんだと言い聞かせ、顔を赤らめながらも確認しながら下着を取る。
「ええっと……上下、色を合わせた方がいいのか? パジャマは何処に……」
確認はしたが、女の子の服なんて、ましてや下着なんて以ての外だ。準備に手間取る。
「リリア! すぐに入るって言ったでしょ!? 片付けは後でもいいから入って!」
「ああっ、うん。わかったから……」
そんなに急かさないで〜。
「それとも何? まだ、一緒に入らなきゃだめなの?」
ん? えっ!? この娘、この歳でまだ母親と一緒に入ってたの!?
一般的に女の子が親と一緒に入る年齢とか知らないけど、確か彼女は正確な年齢は聞いて無いけど十五くらいじゃないか?
「リリア〜?」
「だ、大丈夫だからー」
とは言ったものの早く入らないとあの母親のことだ、無理矢理連れて行かれて一緒に入る羽目になりそう。
急かされるままに、ぱたぱたと寝間着を探す中、ここでおかしな思考に走る。
そうだ! 一人で入って緊張するなら一緒に入ればいい! でも、あの母親と入るのは駄目だ。
先程の胸の感触から、今の俺が直視して耐えられるものではない。
歳もリリアの年齢から三十は超えているだろうと予想できるが、若々しい見た目から、無理だと結論。
なら選択肢は消去法で残り一人。
「じゃあ、父親となら――」
『パパ……一緒に入ろ♡(上目遣い)』
――このシーンは皆様のご想像にお任せ致します。
いや、ダメだ。ありとあらゆる方向から見てダメだ。俺はどうかしてたみたいだ。有らぬ妄想が膨らんだ。
だって、男の子だもん!
覚悟を決めるかとキリッとした目付きで決断する。
もう一度言いますが、世の中には色んな主人公が存在します。大体は格好がつくものが多いでしょう。
しかし、着替えを手に持ち、確かな足どりでお風呂場へと向かうという、ここまで格好が付かず、しかもその困難な試練みたいに醸し出している内容が、お風呂へ入る事である。
なんとも情けない残念美少女主人公である。
この後、見た目は素晴らしい容姿の彼女が全身ゆでダコ状態で湯船で気を失っている姿を確認されるまでにそう時間はかからなかったという。
こうして彼の長い転移後の一日目の夜は更けていった――。




