22 第1回リリアちゃんファッションショー
一通りクローゼットの中を確認した俺はふと出来心が生じていた。
「下着はともかく彼女にオシャレをさせるのはいいんじゃね?」
それはクローゼットの中にある服の数々を着てみようと考えたのだ。
「これからはリリアとして生きる訳だし、一人の時に出来るだけ慣れとかないとな」
渋々と言い訳がましい独り言を言うが、内心は楽しみである。何せ美少女を着せ替え人形状態にできるわけだからだ。
女物を着るとはいえ、元々彼女が着ていた物を彼女が着るだけだ。俺が着るって考えるからダメなんだ。――いや、男が着るって普通にダメだけどさ。
再びクローゼットへ。扉を開けて服を確認する。
フリルであしらわれた白いブラウスや飾り気の無いシンプルなデザインのワンピースなど色々ハンガーに掛けられていた。
色は沢山あるが、派手なデザインのものは少ないようだ。
「んー……とりあえず着てみるか」
ふとクローゼットについている鏡を見る。そこにはお人形のようなパッチリとした目で見るリリアの姿がある。
「……ぬ、脱がないとダメだよな」
そのお人形さんの白い肌が、顔が赤くなっていくのが分かる。
ああっ、これが彼女とかなら可愛いって素直に思うのになぁ。
「これも慣れだよな」
未練がましく呟きながらも、グッと着ている服に手を掛け脱ぎ出す。いつもの要領で手から抜いて服を脱ぐ。
ベッドの上に投げ捨てると、チラッとどうしても見てしまう、女性特有のたわわな胸を。男というは悲しい性でできた生き物である。
「……やっぱりあるな」
ふるふると頭を振り、煩悩を少しでもかき乱すと次はスカートに手を掛け、一思いに脱いだ。
「後はこのワンピースを……」
この季節にちょっと合わないワンピースを手に取る。
とりあえず目的としては女物を着慣れる事が目的のため、そこはちょっと考えるのをやめた。
だが、着方が分からん! とりあえず――、
「ここから……こう、か?」
試行錯誤、悪戦苦闘しながらワンピースの下の部分から顔を入れてするっと着て見せた。服の中に入ってしまった銀髪を、よく女性が両手で長髪をバサッとかき出すようにやってみた。
「お……おお」
思わず変に動揺してしまった。そして、鏡に映っている自分を見る。
「お? おおっ! おおおおっ!!」
興奮を隠さずにはいられなかった。さっきまで赤面していたのが別人かのように高揚感ある表情へと変わる。
「可愛い!! 可愛いよ彼女!! うん! いいよ!」
鏡の前でポーズも決める。側から見れば一人ファッションショーである。
「やっべぇー!! これならスカート履いてオシャレする理由も分かるよなぁ」
俺が普段から目にする高校の制服のスカートとは何とも思わなかったのに不思議だ。ワンピースだからか? そんなことないよな? だが――。
「とにかく可愛い!! よし! 次は……」
いそいそと興奮した面持ちで、次の服と棚を開けて他のスカートやズボンなどもチェックする。
俺の中で何か目覚めそうです。




