21 女の子って凄い
ある程度広げ確認し終わると、とりあえずそのままにして三段目に差し掛かる。
ここはいよいよ男子は開けてはならぬ禁断の領域。おそらくは下着だ。
「…………ごくっ」
もう一度注意。彼女は女の子です。中身が男の子で元に戻る手段が無く、仕方なく……仕方なく確認せねばならないだけです。この容姿の美少女に男物の下着を着ける方が問題ですのであしからず。
緊張からか、小刻みに手が震えて顔は赤面して強張り、とても銀髪美少女がする表情ではない。
俺みたいなネットで流出している画像知識しかない一般男子には同世代の女の子の生の下着はハードルが高い。
とはいえこのまま着た切り雀というわけにもいかない。
「ああー……俺、普通の男子とは違う意味で大人の階段を上ってる気がするぞ」
表情は落ち込むが、俺も男子。同世代の女の子の下着、一般的な意味合いでこれは健全な気持ちなんだとやや興奮しつつある。
「お、女の子に興味があるのは普通だよな。うんうん、健全な男子なんだからきょ、興味持って普通だし……」
また、誰かに言い訳する、というより自分に言い訳をしている。
「よし、開けるぞっ!」
ゆっくりと震える手で取っ手を手に取り、そ〜っと棚を開けた。まるで泥棒の如く、音を立てずに。
するとこれまた綺麗に色が並ぶ。丸く収納された布とその横には――、
「ごくっ……ブラだ」
俺自身、別に見た事がない訳ではない。ネットなどで腐るほど流出してるし、母親のだって見た経験くらいは普通だろう。
だが、その心中は違う。
思わず両胸に手を当てる。いわばこのブラは彼女が着けていたわけで。しかもこれからは自分が着けるわけで。
冷静にならねばと奮い立たせながらも落ち着かない様子を見せる。
健全な男子にいやらしい事を考えるなと言う方が無理である。
「これ……どんな生殺しプレイだよ」
声が震え、覇気もなく落ち込むように呟く。
すると丸められている布が気になり、鷲掴みに取った。
「ハンカチ……は一番上の棚にあったよな?」
薄いピンク色の素材はかなり薄く柔らかい。広げてみると三角の形をした布になった。真ん中には小さくリボンがあしらわれている。
「――うわぁっ!? これ、パ、パンツか!!」
思わず驚いた拍子に棚の方へ投げつけ後ずさる。その後すぐに大きくため息をつく。
「はあぁー……勘弁してくれ」
心底疲れた表情で下着が入っている棚の前へ。投げ捨てた下着を掴み、適当に丸め、収められていたところへ、ヒュっと手早く戻した。
「しかし、あんな薄い布地の下着にスカートって……女ってすげぇなぁ」
思わず感心してしまった。
女の子はオシャレのためなら頑張るなんて、これまたよく聞く話だが、ここまで無防備な物を身につけるってのは確かに頑張らないと無理なのかなと終始赤面していた俺は――、
「はあぁー……」
そう思いながら、脱力感のある重く長いため息をついた。
ここまででどれだけため息ついたかなぁ?
 




