20 彼女はマメなようです
タンスの棚はクローゼットに合わせて綺麗に収められている。
彼女の部屋は魔術書の方が多いためか衣服の収納はおそらくここだけ。なのでタンスの中身はある程度想定できる。
「……さて、開けますか」
ここで注意です。一応彼は女の子になっておりますし、彼女として生きていく以上、衣服や下着の確認が必要なだけです。
彼は現在、物々しい表情をして息を呑み、まるで泥棒のように忍び込み、音を立てないよう気をつけながらタンスの取っ手に手を掛けようとしていますが、決して下着泥棒や変質者ではありません、ご了承下さい。
手に汗握る中、三段ある中の一番上の段から順に見ていくことにし、そっと開ける。
「あっ……タオルとか」
その中身に思わずほっと一安心。
タオルやハンカチ、髪留めなどの小物や日用物が収納されていた。綺麗に色分けされており、タオルなんて丸められて収納されている、縦巻きだ。
「女子力高っ! ホントにマメな性格なんだなぁ。俺、こんな風に収納できる自信ねぇぞ」
男女差というものを実感せざるを得ない光景だった。
俺は基本、母親に畳んでもらったものを適当にタンスに入れていただけだから、こんなマメな事はまずしない。
「ま、まあ、これからここを離れる訳だし、王都へ行くための準備の際にちょろっと弄るくらいだし、片さなくてもいいよね?」
誰に言ってるんだか、言い訳を効かせる。
「次は二段目……」
おそらく下に履くスカートやズボン類と予想。こちらもそっと開ける。
「あ……」
まあ大方予想通り。こちらも綺麗に畳まれている。母さんもこんな感じだったな。何枚か広げてみる事にした。
「んー……」
まず広げたのはスカート。淡い水色の丈の長いスカート。見た目は銀が基調の彼女だ、上を白のブラウスとか着せるとこのスカートは似合いそう。
オシャレとか意識したことないが……。
「やっぱ、スカートは着るよな。向こうの学校の制服もミニスカだろうし……はぁ」
考えていても仕方ない。彼女になった以上は超えなければならない事だ! それに俺の世界じゃスカートみたいな男物の何か、あったろ! ……多分、ミニスカはないだろうけど。
「……にしても――」
持っているスカートを両手で広げてじっと見る。
「女の子はどうしてこんな無防備な物を履くかねぇ」
男からすれば、はなはだ理解が難しい。俺は常々疑問を持っていた。
まず一つ目、今少し肌寒いからか、向こうの学校に通っていた頃は違和感がなかったが、よくミニスカで寒い中、学校へ通う事が出来るなと思った。
普通に寒くないか? ふと向こうの学校風景を浮かべる。あれだけ足を出してりゃ寒いよな? やっぱり。
二つ目。やっぱり無防備だと思う。だってこんな布一枚だよ!
――小学生の頃、いませんでしたか? スカートめくりをするスケベ男子。中には男子同士でズボンの下げあいも展開していたのもあったなぁ。それにふざけた女子が混じってその女子がパンツごと下げて、ゾウさんがこんにちはした時、その男子が赤面しながらその場を泣きながら去ったなんて事もあったなぁ。
その子供の頃の光景を思い出し、苦笑いを浮かべる。
その彼は一生の黒歴史になっただろうけど。




