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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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104 友達とは

 

 ダンジョンワームとの戦いを終え、蛆虫達がいなくなる中、みんなリュッカのところへ駆け寄る。


「リュッカ、無事!?」


「大丈夫か?」


「はい……」


 リュッカは俺達を見ると申し訳なさそうな顔で返事をする。


 みんなの服には土汚れがあり、疲労感も見えていた。こんなになってまでと、後ろめたい気持ちになったのだ。


 そんな中、向こうで見ていたソフィスともう一人の騎士もこちらへと向かってくる。


「リュッカさんっ! ごめんなさい。私が……私のせいで……」


 ソフィスもまた、申し訳なさそうに涙目でリュッカに謝る。


 それに対しリュッカは、優しく微笑むと、そっと抱き寄せる。


「大丈夫です。無事だったので、気にしないで下さい」


 自分を責めないでと優しく背中を叩いた。


 その気遣いに感極まったのか、涙が溢れ出し、ギュッとリュッカを抱きしめる。


「ごめんなさいっ! 本当にごめんなさいっ!!」


 遂にソフィスは泣いてしまった。号泣しながらも何度も何度も謝った。


 そのソフィスを抱いたまま、こちらを向く。


「皆さん、すみませんでした。ご迷惑をおかけしました。私の勝手な判断のせいで……」


 困ったようにそう謝ると、ソフィスはガバッと顔を上げた。


「リュッカさんは何も悪くありません! 私が……」


「ううん、忠告はされていたのに、ついていった私も悪いんです……」


 確かにそんなことをフェルサが言っていた。だが、俺達自身もリュッカが悪いなんて思っちゃいない。


 だがリュッカの気持ちは迷惑をかけてしまったことからソフィスや俺達に気を遣っているようだ。


 これも優しさなのだろうが、


「リュッカ……」


 俺は優しく呼びかける。座り込んでいるリュッカの目線に合わせる為、しゃがんだ。


「リュッカ、私は優しいリュッカが好きだよ。私やアイシア、フェルサとか、結構めちゃくちゃなところがあるかさ。見守ってくれる感じとか、安心するんだよ」


 俺は素直に自分の気持ちを伝える。


 俺自身この世界へ来て、リュッカに頼ることは多かった。


 何せ、中身は異世界人で外見はこの世界の人間、この歳ならこの世界の常識など知っていて当然だと思われることが普通だ。


 俺は恵まれている。リュッカもそうだが、色んな人達に優しくしてもらったから、今ここにいる。


 その中でもリュッカには一番頼っていたと思う。


「今もさ、みんなに気を遣ってあげてるあたり、リュッカらしいなとも思うよ。だけど……優しく接することだけが、友達の在り方じゃないと思うんだ」


 リュッカはそれを聞いて少し目を見開く。


「楽しいこと、辛いこと、悲しいこと、苦しいこと……色んなことがある中で、笑ったり、泣いたり、怒ったりしてさ、自然とぶつかり合えるのが友達だって思うんだよ」


 正直、中身十六歳の若造が語るようなことじゃないし、偉そうなことを言っている割には、自分もその辺はどうなのかとも思うが、それでも今のリュッカには必要な言葉だと思った。


 というかぶつかり合うって男っぽいかな?


「心配してくれるのも、気を遣ってくれるのも嬉しいよ。だけど、ちゃんと自分の気持ちもぶつけて欲しいよ。もっとさ……」


 俺がこう考えられるのは、やはり失ったからでもある。


 俺は不本意な形でここへ来た。両親や友人などに別れの言葉もなく、ここにいる。


 だから、一人で乗り切らなきゃならないと考えた。転移時は正直、不安でいっぱいだった。


 だが、その不安をリュッカやアイシア達がちゃんと受け止めてくれたと俺は勝手に思っている。


 話をしたり、食事をしたり、遊んだり、何かに取り組んだり……自然と側にいる、それが友達だと思う。


 向こうの友人もそうだ。自然と趣味の話をしたことをきっかけにいつの間にか、一緒にいるのが当たり前になっていた。


 そういう存在がちゃんと側にいる、だから頑張れる。


「ちゃんと受け止められるよ、リュッカの気持ち。私だけじゃない。アイシアやフェルサ、ここにいるみんな、ちゃんと気持ちを伝えてくれたら、受け止められるよ」


 勿論、限度はある。だけど、友達が困ってたら助けたいし、寂しいなら寄り添ってあげたい。


 楽しいなら一緒に笑ってあげたいし、何かに頑張りたいなら応援してあげたい。


 リュッカもきっと俺達が心配で、傷ついて欲しくなかったからという、優しさがあったから背負おうとしたのだと思う。


 それでもリュッカは何も悪くないのだ。


「だからさ、謝られた時……ちょっと寂しかった」


 素直に不安だったって、寂しかったって素直に甘えて欲しかった。


 俺は困ったように、しかし優しく微笑んだ。


 その表情を見たリュッカは、また申し訳なさそうに俯く。


 その時、横にいたアイシアはひしっとリュッカを再び抱きしめる。


「そうだよ、リュッカ。私達はリュッカが心配で助けにきたの。迷惑だなんて思ってないよ。怖かったよね? 寂しかったよね? ちゃんと教えて欲しいな……」


「シア……リリアちゃん……」


 俺達は今の気持ちを伝えた。リュッカはかけがえのない存在なのだと。


 アイシアに関してはその強くも優しく抱きしめるその行為から、その気持ちはちゃんと伝わったようだ。


「…………った」


 小さく、消えそうな声で呟いた。


「本当は……怖かった……辛かった……」


 涙が少しずつ溢れ、頬を伝う。


「助けに来てくれて…………ありがとう……もう、みんなに……会えないのかもって……不安だったの……」


 絞り出すように声を震わせながら、不安な気持ちを伝えてきた。


 アイシアはその不安を共有する。


「私も怖かったよ……もうリュッカに会えないんじゃないかって……凄く怖かったんだからぁっ!!」


 二人はその不安を埋めるように抱き合いながら、


「シアぁああああっ!!」

「わああああーーっ!! リュッカぁっ!!」


 子供みたいに大泣きしてしまった。


 こんなに泣かせる気はなかったのだが、ちゃんと気持ちが伝わったようで良かった。


 俺は安心した様子で二人を見守る。


「良かったね」


「ん? うん」


「二人は泣かないのかい?」


 ウィルクは俺とフェルサに友人の無事に感動しないのか尋ねる。


「私はあまりこういう感情は表に出さないから」


 そんな気はした。安心はしただろうけど、そこら辺はドライな気がする。


「リリアちゃんは?」


「私だってそりゃあ、ぐっと来たよ。でもさ……」


 再会を喜び、感動して泣き続ける二人を見ると、


「何かさ、泣きそびれちゃった」


 俺達の分まで二人が泣いてくれている。そんな気がした。


「……よし、二人が泣き止んだら帰るぞ」


 こうして友人を助ける迷宮(ダンジョン)探索は終わりを迎えたのだった――。

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[良い点] 友情って素晴らしい~
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