19 禁断の箱
窓辺で黄昏終わると、俺は意を決して大きな問題へと着手する。
トトっと歩いて向かったのはベージュのクローゼット前、緊張の息を呑む。
これから俺は女として生きていかなければいけない。
別にリリアの性格を真似るとかではないが、彼女の身体である以上は避けられない事が多々ある。
その一つ、女物の衣服を着る事だ。
――世の中には色んな主人公が存在する。
王道でいうとヒロインをカッコよく戦い助ける主人公、その独創的な発想で数多くのピンチを切り抜ける主人公、中にはダークヒーローなんてのも存在するだろう。
そんな中、クローゼットを前に真剣な眼差しで女性物の服を着る決意をする主人公は中々珍しいのではないだろうか。
リリアはおそらくだがオシャレには無頓着なのだと思う。この部屋や遺書を見る限りはそうではないかだろうか。
だが、あの両親でこの完璧容姿の娘だ。両親が黙っている訳がない。
予想するにクローゼットの中はリリアに似合う服がビッシリあるのではと推測できる。
娘を溺愛する父親があれやこれやと服を与えて、持ち腐れをしているとあの気の強い母親が、女の子なんだからとか言いながら無理やり着せている光景が目に浮かぶようだ。
だが、今の彼女の格好を見るに落ち着いた服装も少なからず用意はされている物とも取れるが……まあ部屋着くらいはね――真相は果たして!!
グッと取っ手を手にする。
「お願いします! 少しくらいなら我慢するから出来れば着るのに抵抗が少ない物でお願いします!」
意を決していざ禁断の扉を開ける時――。
「――っ」
ガチャっと扉を勢いよく開けたと同時に、目は思わず閉じてしまった。
そんな臆病な目をそっと開けると、当たらなくていい方の予想が当たった。
「………………はぁ。そうだよね、それが普通だよね」
愕然とする落ち込んだ声を出しながら脱力する。
クローゼットの中には明らかな可愛い服が綺麗に掛けられている。その下には小さなタンスも見られる。おそらく中身はズボンやスカート、ハンカチやタオル類、そして下着と予想できる。
掛かっている服を見ると色ごとに左から濃い物から順に並べられている。やっぱり女の子なんだなぁと感心した。
俺のクローゼットはとにかく乱雑に入れてあるだけだからね。
次はタンスを開けて見ることにした。
 




