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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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95 ダンジョン潜入

 

 ――俺達は迷宮(ダンジョン)の入り口。まるでゲームの中によくあるエントランスホールみたいだ。上からの光が白い台座を照らす。


 しかし、外はもう夜だ。こんな明かりが照らすのはおかしいと思う。これが迷宮(ダンジョン)というものなんだろうか。


 異界として扱われるという証拠とも捉えられた。


 そんな不思議な現象もさることながら、迷宮(ダンジョン)の道を見ると、まるで坑道だ。煌びやかに光る魔石が鉱石のように生えて、奥まで続いている。


 空気はどこか肌寒い。ローブを羽織ってはいるが、洞窟特有の冷たさが頬をなぞるようだ。


 この冷える空気の中、さらに魔物達が蔓延(はびこ)るこの環境、さらにすでに一日経っていることから猶予の無さを痛感する。


「よしっ! じゃあ早速探しに行こう!」


 アイシアは着くなり、やる気満々の真剣な表情で向こうに続く道を進もうとする。


「待ってアイシア。方針を立てよう」


「方針? リュッカ達を探すことでしょ?」


「探し方の問題だよ」


 フェルサは冒険者の経験を生かし、探し方を提案するようだ。それを知ってか騎士の二人もこの迷宮(ダンジョン)の情報を開示する。


「彼女の言う通りです。この迷宮(ダンジョン)は入り組んだ構造になっています。闇雲に探すのは危険です」


「……本来なら迷宮(ダンジョン)探索隊が既に編成、危険な魔物の討伐等を行われていたはずですが、最近の魔物の凶暴化により、迷宮(ダンジョン)管理が間に合わず、この迷宮(ダンジョン)には危険な魔物もいる筈です」


 最近の王都周りの事情が慌ただしいことを説明する。


 迷宮(ダンジョン)管理も大切だろうが、何より国民の安全を優先してでのことなら、文句の言いようもない。


「でもフェルサちゃん、どうするの?」


「うん。ここに突き落とされた二人の行動を考えて、そこから捜索しよう。ジードはそんな感じ……」


 フェルサはジードの人探しのやり方を提案。瞬時にそんな判断ができるあたり、冒険者と言えど色んな仕事をしているのだなと感じた。


「行動か。アイシアちゃん達ならリュッカちゃんのこういう時にどんな行動をするかってわかるんじゃない?」


「うーん……」


 俺達は普段のリュッカから行動を予想する。


 とはいえ、元々こんな状況になるなんてことがないのだ、わかるんじゃないと聞かれても困る。


「そうだな。彼女なら冷静な対応ができると思うのだが、どうかな?」


 俺達より先にカルバスが授業態度から意見する。


「そうですね。リュッカは落ち着いて行動ができると思います」


「あっ、あとリュッカはお父さんから色々教えてもらってるから、大丈夫かも……」


 アイシアは小さい頃からの記憶から、曖昧な発言をする。


「えっと色々って魔物の事?」


 俺は解体屋だと聞いていた為、問うとそれもそうだけどと言って話を続ける。


「お客さんの話とかも聞いてたし、その事を生かして考えるかも……」


「お客さんって……?」


 リュッカの実家の情報を知らない一同にその話をする――。


「なるほど、つまり彼女の実家は解体屋で、お父様や冒険者からの情報を生かし、行動している可能性があると……」


「はいっ!!」


 いい返事。だけど説明はわかるようにしましょう。


「あの、もう一人のロバティエという子は?」


 先程から(だんま)りのアルビオが尋ねる。まあクラス全員のことなんて把握できないからね。


 そこは女の子のことならとウィルクが答える。


「ソフィスちゃんは頑張り屋さんだけど、行動力は欠けているかもね。ちょっと臆病さんなんだよ」


「そうだな……」


 ソフィスはどうやら控えめな性格のようだ。カルバスもウィルクの意見に納得したような発言だ。


 リュッカよりも情報がないことに困惑した様子を見せるが、これ以上、情報が出ないと判断したのか、捜索方針を提案する。


「ならこうしよう。リュッカの行動を予測し、捜索しよう」


「つまりリュッカを優先すると?」


「行動が読めない方よりはいい筈だ」


「身の安全を考えて、その場で待機している可能性は?」


「それならそれでフェルサちゃんの鼻に頼ればいいさ。いいかな?」


「うん」


「よしっ、では捜索の作戦方針を改めて――」


 俺達はリュッカが起こすであろう行動を元に捜索することにした。


 この迷宮(ダンジョン)内に迷い込んだ者の捜索となると、その方がいいだろうという方針の元……。


 リュッカは魔物の特性を考え、身の安全の確保、もしくは脱出を考えて行動しているものと仮定して、こちらは行動を取ることに。


 ソフィスに関しては、フェルサや俺達魔術師が何かしらを感知した場合に救出するということにする。


「――なら一ついい?」


 それを聞いてフェルサがすっと手を上げて意見の発言の許可を取ると、カルバスが無言で頷き、許可を出す。


「これを辿るのはどう?」


 そのフェルサの指差すところには、何やらいくつもの球根だろうか、壁から生えているように見える。


「なにかの種?」


 俺がもぎ取るように触ろうとする。


「ダメだよ! リリアちゃん!」


 ウィルクが手を取り、制止する。


「えっ!?」


「これは魔物だよ」


 そう言うとフェルサは、その辺の小石を手に取って軽く投じる。


「――ひぃっ!?」


 その球根を軽く刺激すると、カサカサと虫らしい動きを見せて離れていく。そこから魔石が顔を覗かせる。


 台所からひょっこりと黒光りする奴を見つけた感覚だ。背筋に悪寒が走る。


 しかもコイツに関しては拳一個分の大きさがある。


 不気味さは倍増である。


「この魔物、何?」


「ファナシアンシードだ。脅威性が殆ど無い魔物だ」


「人畜無害な?」


「殆どと言ったろ……」


 カルバスは楽観視するなと小さく鼻を鳴らす。


「だけど辿るって?」


「この魔物、魔石から漏れ出る魔力が好みみたいなの。見てわかる通り、ここ入り口付近なせいか、魔力濃度が高いからね」


 迷宮(ダンジョン)の入り口は次元の狭間というだけあって、魔力が濃いらしい。


「この魔物がうようよいるでしょ?」


 俺は辺りを見ると、確かに壁の所々に球根が張り付いている。よく目を凝らして見ると、球根から脚が生えたように黒く細い無数の脚が見える。


 それを見て、先程のファナシアンシードの動きを思い出すと、鳥肌が立つ。


「い、いるね……」


「う、うん……」


 俺とアイシアは思わず手を組み合い、顔を引きつらせて怯える。


 ミルアじゃなくても気持ち悪いと思うわっ!!


「……なるほど、つまりリュッカはこれを辿ってくると?」


「うん」


 リュッカが魔物の知識があることからの意見だった。この意見には一同納得したようで……。


「ファナシアンシードは魔力と光を求める傾向から出口まで続いていると考える訳か」


迷宮(ダンジョン)はこの入り口から魔力が地脈のように流れている……」


「つまりはリュッカはそれを知って、出口を目指すっ!!」


「可能性はあるな。授業でも迷宮(ダンジョン)のことは教えている」


「決まりですね」


 俺達はファナシアンシードを辿りつつ、フェルサの嗅覚や俺達の探知魔法を駆使して捜索することに。


「ソフィスちゃんはおそらく、殿下が俺を送り出した際に言っていたんだが、ネタバラシをした後にここへ突き落としたらしいから、それを考えると、その場で縮こまっている可能性の方が高いですね」


「多分な」


「それならフェルサや私達でリュッカを捜索しつつ、探し出せるかも……」


「とりあえずはその方針で行こう」


 カルバスは侵入前に確認した戦闘陣形を取るように指示すると、俺達が陣形を取り並ぶ中、アルビオは何やらぶつくさと独り言を言っているようだ。


「どうしたの? アルビオ」


 俺はリュッカのことに責任を重く感じているのか、心配そうに尋ねる。


「あっ、えっとねフィンと話をしていたんだ」


 宇宙からの交信でも始めたのだろうかとコイツの頭を疑った。

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