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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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59 注意事項

 

「では、最後に注意事項だ。各場所にいる魔物は今の君達でも充分倒せる強さの魔物ではある」


 媚び売り貴族や魔物討伐に慣れてない人を除いてね。


「だが魔物である以上、気を引き締めて臨むように。各場所には担当の先生もおられる。万が一の事があれば報告するように……」


「はい!」


 先生引率の魔物討伐と考えればいい。何時ぞやの旅路に似てはいるが、あくまで先生は特定の場所で待機しているとのこと。


 それでも危険性は低いと考えてもいい。慣れないパーティーでの戦闘だが、これなら安心できる。


 それに俺の場合はいざとなれば、インフェルを呼び出せばいい。


「次だが、各場所には迷宮(ダンジョン)があるが、立ち入り禁止だ。騎士科には入念にいってあると思うが、改めて注意だ」


 迷宮(ダンジョン)についてはまだ、詳しくは聞いてないが、強い魔物がいるとか、国が一部管理してるなどは聞き及んでいる。


「あと個人にだが注意事項がある」


 カルバスが言いづらいそうな表情で頭をかく。


「アルビオ・タナカ、リリア・オルヴェール……」


「へ?」


「あ、はい……」


 何で呼ばれたのか、不意に呼ばれたので、はっとなり驚く。


「先ずアルビオ。精霊を使うこと自体は構わないが、加減はするように頼むぞ」


「はい、わかりました……」


 精霊の制限ということはもしかして、


「リリア・オルヴェール……」


「あっ! はい!」


「お前に関してはまず、魔法の使用制限だ。最上級は勿論だが、上級魔法も禁止だ」


「えっ!? 何でですか?」


「あのな。この授業は連携を取ることを前提としてのものだ。お前みたいな魔法使いがドカドカ魔法を使われては困る。一応、他の魔法科の者にも言っておくが、あまり派手な魔法を森の中で使用するのはオススメしない」


 森の中で大きな物音がすれば、まあ確かに魔物は寄ってくるだろうし、強い魔法を使えば魔力の反応も感知されるだろう。


 火の魔法なんか使った日にゃあ、大規模な森林火災の出来上がりだ。


 洒落にならん。


「あとインフェルノ・デーモンの召喚も禁止だ」


「えっ!? それもですか?」


「当たり前だ!! 精霊はともかく上級悪魔なんて以ての外だ! 周りの魔物達がどんな行動をしでかすかわからん」


 あれだけの存在感のある魔物だ。少なからず影響はでるだろう。


 とはいえ初めての環境で知らない人と組む以上は用心したかったのが本音だ。


 それにインフェルの強さを測ってもおきたかったのだが、ダメなようだ……先程からマーディ先生がスゴイ目力の入った睨みを利かして、訴えかける――、


(これ以上、問題を起こすな!!)


 と書かれているよう。担任としての生徒の管理も大変そうだ。


 マーディの遠くでもわかる修羅のような顔に当てられ、おずおずと了解を告げる。


「わ、わかりました」


 注意事項を終えると質問を尋ねる。生徒達は安全性の確認や討伐した魔物が評価に入るかなど、色んな質問が飛び交う。


「では先生の指示に従い、移動を開始する」


 という訳で、俺はザラメキアの森へと向かう。


 ***


 心地よい肌を撫でるようなそよ風が吹く中、現在、鬱蒼とした森の入り口ら辺での待機。


 タイオニア大森林とは、また趣が違う雰囲気を醸し出す。


 日が差し込めないほどに木々が身を寄せ合い、日が今から高くなるとは思えないほどに薄暗い。


 王都から少し離れているせいもあるのだろうが、何処か静寂が耳を鳴らすようだ。


「タイオニア大森林ではもう少し生き物や魔物の声もあったと思うけど……」


「この森では生き物がほとんどいないわ。しかも魔物はあまり鳴かないものも多いはずと聞いているわ」


「へー……」


 場所によって特徴は違うのは当然のこと。人間でも環境が違えば生活感が変わるように、魔物も例外ではないだろう。


 環境が違えば生息する魔物は勿論、成長の仕方も変わるはず。


 気をつけろって、この森の静かさが語っているようだ。


「それでは皆さん、これより実戦訓練を行います。日頃、学んだことを生かし、魔物の討伐を行なって下さい」


「はい!」


 マーディの開始の言葉から始まり、各々のパーティーは行動を開始する。


「よし! じゃあ行くか!」


「ちょっと待って」


 俺は先走るビッツを止める。美少女の止める声だけあって簡単に止まった。


 俺が男のままだったら、こんなにあっさりは止まらないだろう。


「な、何だよ……」


「森に入る前に戦力の確認と探索の陣形を確認しないと……」


「そうね。ビッツさん、今回は魔法科の生徒も一緒です。いつものようにしてはいけませんよ」


「わ、わかったよ。ごめんねオルヴェールさん」


 軽く首を横に振ると、先ずは戦力の確認。


「二人はこの森での実戦は慣れてるの?」


「ええ。一通りの魔物は討伐できますよ。ビッツさんは?」


「俺だって一通りは余裕で……」


 見栄を張るように踏ん反りかえるが、皆がジッと見るとビッツは静かに座り込む。


「そこそこの魔物を倒せるくらいです、はい」


「Dくらいの?」


「……ギリCかな?」


「本当はどうですの?」


「……D」


 前衛の戦闘能力は大差あるようだ。


 カルディナは冒険者の実績のあるフェルサともやり合えるのだ、疑う余地はない。ビッツに関しても嘘はついていない様子を見せたところ、言った通りの実力だろう。


 さて魔法科(こちら)はというと。


「えっと、ロバックさんだっけ?」


「は、はい!」


「貴方の属性とどこまでの魔法を使えるの?」


 魔法での実演授業の際に多分、見かけていたはずだろうが、アイシア達と話していたことから、気にも留めなかった。


 だから彼には申し訳ないが、彼の能力を知らない。


「えっと、水属性で使える魔法は中級魔法くらいです」


「お前、水属性ってことは治癒魔法が使えるのか?」


「ううん、攻撃魔法しか……」


「ダメじゃねえか」


 ビッツは水属性と聞いて、勝手に期待して勝手に失望した。


 治癒魔法の習得は厳しいと聞いている。最近、先輩タールニアナから聞いたものだ。


 落ち込んでしまったロバックを励ます。


「大丈夫だよ。気にしなくていいから」


「ありがとう」


 今日一日は同じパーティーなんだ、士気が落ちることは避けたい。


「それで私は――」


「貴女の戦力確認はいいわ。皆、わかっていることよ」


「はは……さいですか」


 さっき先生から堂々とインフェルのことを言われたからな。

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