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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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44 まさかの中まででした

 

 中に招かれ、玄関へ。


「おおーっ!!」


 アイシアが興奮を隠せない声で驚いてみせる。この玄関も近代住宅のような構造。まさか中までそうなのかと思うと、もう怒るどころか呆れ果ててきた。


「お邪魔します!」


 アイシアは早速、玄関の段差を踏み、家に入ろうとする。


「――ちょっと待って!!」

「――あっ……ちょっと」


 俺とアルビオが土足で入ろうとするアイシアを静止する。言葉は違えど声がダブった。


「え? 何?」


「ごめん、言ってなかった。ここは土足厳禁だから……」


 アルビオは靴を脱いで、段差を上り、靴を整える。


「こうして家に上がって下さい……」


「へえ〜……土足厳禁の家なんて珍しい」


「そうですね。さすが勇者様のお家!」


 彼女達がきゃっきゃと話し、アルビオの言う通りにする中……、


「……」


「どうしました? 殿下?」


「いや、何でも……」


 ハイドラスはリリアを気になるようにじっと見たが、気のせいだと話すと家の中へと入っていった。


「ここがリビングになります。今、何かお持ちしますね」


「あ、手伝いますよ」


「ありがとう……えっと、リュッカさん……」


 リビングの家具とかもどうやら特注で用意させたものらしく、日本に戻ってきたのではと錯覚を起こすほどである。


 もうどうとでもしてくれ。


「お待たせしました。どうぞ……」


 各自に飲み物を渡す。これだけの人数だ、数人は立って頂くことに。


「我が()に来て頂いて難ですが、何もないですよ?」


「ううん、そんな事ないよ! 見た事ない素敵な家具とかいっぱいあるよ! 後で他の部屋も見ていいかな?」


「構いませんよ……」


「やったぁーー!!」


 今日は友達の家に遊びに行こう感覚で来たんだ。彼女達はその物珍しさに刺激を受けにきただけだろうが、俺には目的がある。


「アルビオ。ご両親は?」


「仕事で外しています。申し訳ありません、殿下」


「構わないよ、気にしなくていい。むしろこちらの方が申し訳ない」


「いえ! そのような事は……」


 ちょっと話が見えない会話にきょとんとする。


「あの、殿下が謝る必要はないのでは?」


「いや、実はそうでもないんだよ。玄関に靴が何足かあったろう?」


 そういえば殿下の言う通り、何足か揃ってあった気がする。


「実は王宮の研究員がお邪魔していてね」


「王宮の研究員が? 何でまた?」


「実は――」


「これはこれは殿下、ご挨拶に遅れて申し訳ありません」


「ヤルカンか、構わないよ。これはお前達の仕事だ」


 お年めいたおじいちゃんが白衣のような白いローブ姿で出てきた。口と顎に白いお髭を携えて。


「この方は?」


「紹介しよう。我が国の王宮魔術研究員の代表、ヤルカン・ダーナだ」


「これは殿下のご学友の方々ですかな? ヤルカンと申します。お見知りおきを……」


「王宮魔術研究員の代表って……」


「ふえぇ……」


 ユニファーニとミルアは尊敬の眼差しを向けるが、アイシアは首を傾げる。


「このおじいちゃん、そんなに凄い人なの?」


「当たり前でしょ! 何言ってるのアイシアちゃん!」


「そ、そうだよ! この国の魔術開発の最先端を行く人だよ!」


 向こうで言うところの科学研究者の代表と言った辺りの人だろうか。そんな重鎮がなんでこんなところに。


「で? そんな人が何でアルビオの……勇者のお家にいる訳?」


「想像つきませんか?」


 質問に対して質問で返されてしまった。だが、ハーディスの言う通り、想像ついてしまった。


「大精霊か……」


「ああ、その通りだ。君達も知っていることだろうが、人間族と精霊は仲が良くない。精霊とはコンタクトが取れない状況にある。ある一族を除いて……」


 人間と精霊にはいざこざがあったらしく、それ以来ほとんど不干渉とのこと。だが、世界の管理上、一応人間は必要との為、要らぬ反乱を招かぬようと魔力は使えるようになっているらしい。


 だが、勇者はどんな因果か大精霊に気に入られ、共に活躍したと伝承を残す。


 それらを考えると……、


「勇者の残した精霊の何かを調べる為にここにいると?」


「その通りだ」


 一部を除いて興味深々の一同。何が残っていたのかを尋ねる。


「何が残ってたんです? 精霊から預かった魔石とか武器。魔道具とかですかね?」


「それは――」


「殿下、そんなに簡単に話してはいけません」


「固いことを言うなヤルカン。行き詰まっているのだろ? もしかしたらこの中の若い衆が閃くかも知れんぞ」


 若い衆って。今時聞かないけど。


 ハイドラスの言葉に自分の不甲斐なさを思い知るのか、黙ってしまった。


「せっかく来たのだ、見せてやればいい。それに彼女らは私の友人だ、信用ならないかね?」


「いえ! そのようなことは……」


 王族感バリバリ出すなぁ。あ、ここは学園外だし、この人部下だからか。


「という訳だ。探検ついでに見てもらいたい物がある。よいかな?」


「そりゃあ勿論ですよ殿下! 勇者様の貴重な物が見られるなんて凄いことですよ!」


「シア、絶対壊したりしたらダメだからね」


「子供じゃないんだし、大丈夫だよ」


 とドヤ顔。何かもうフラグにしか思えない。アイシア、あっとか言って貴重な物とか壊しそう。目を光らせておかねば。


「はは。ではヤルカン、案内を頼めるか?」


「は!」


 そう言うとヤルカンは俺達を地下へと案内するのだった。

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