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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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43 勇者の家ってふざけんなぁ!!

 

「――という事があったのだ」


 へらっと午後の実戦授業の内容を話して見せるハイドラス。


「はは! フェルサが機嫌悪い訳だね」


 フェルサはブスーーっとした表情を変えずに歩く。


「彼女は父を尊敬してますからね。立派な騎士になること以外はあまり興味がないようで。僕も彼女の父君にお会いしたことがありますが、女の子らしくないと嘆いておられました」


 殿下の話を聞いた感じはそうではなさそうだが、喋り方とか。生活面とか趣味のことだろうか?


「とにかくそんな顔をするな、フェルサ。勝負は時の運とも言うだろう?」


「……」


 よっぽど出し抜かれたのが、気に食わないらしい。まだ拗ねている。


「フェルサ、ジードさんが言ってたのはこういうことだよ。色んな人に出会って、刺激を受けてこいってことだよ」


 フェルサは黙ったままではあるが、俺の言葉に納得してくれたようで、少しは機嫌が直ったように見える。


「ほら、そろそろ着くぞ」


 そんな話を聞いている内についたようだ。さてはてどんなお家なんだろうか。


 平民とはいえ、英雄譚があるほどの活躍をしたんだ、立派な家くらいは建ててるんではないかと思う。


 だが、割とそこは重要ではない。俺個人としては、元の世界へ帰る方法を見つけているかも知れない。


 その情報に期待が高まる。何せ勇者として活躍し、大精霊の力も使いこなしていたと言う話だ。


 そんな期待に心踊らせながら、その勇者の家に到着した。


「さあ、ここがアルビオの……勇者の家だ」


 勇者の家を知らない一同はその外観に圧倒される。まるで未知の建物でも見るかのように期待が高まる表情を浮かべる。


 だが、俺は別の意味で圧倒される。その見覚えのある外観にふつふつと怒りを覚えてくる。


 確かに俺はそこは重要視しないとは言ったよ。言ったけど……。


 俺の目の前にある勇者の家は日本でよく見かける近代住宅がそこにはあった。


(――異世界ファンタジーの世界観、ぶち壊してんじゃねえぇええっ!!!!)


 ふざけてんのか!! あのクソ勇者!! この世界の建物見たらわかるだろ。こんなの場違いにもほどがある。


 住み慣れた家がいいとか、日本で生活していたことを忘れない為とか、自分が生きてた証を残したいとか、何だったら自分は特別な存在ですアピールか!! コラッ!!


 いや、確かに日本の大工さんも設計士さんもいい仕事をしてらっしゃるからこその造形よこれは。そこに罪はない。むしろ俺だってお世話になりましたよ。


 父も――夢のマイホーム、ひゃあっほーー!! ――と喜んでたのを昨日のように思い出したわ!!


 世界観という外観をぶち壊す、ケースケ・タナカとかいうクソ野郎が全て悪い。


 せっかくの建築物が台無しだろうが!! せめて日本情緒あふれる外観の建物にしろ!! せめて!!


 俺が心の中で全力でツッコミと怒りに狂っていると、その隠しきれない表情を見て皆、唖然とする。


「……ど、どうしたの? リリィ?」


「今までで一番顔が怖いぞ……」


「へ?」


 俺はみんなの表情を窺う。驚き、ぽかんとした表情でじっと見られている。


「あ、ああー……み、見た事ない、き、奇妙な建物だなーって……」


「その割には怒っているように見えましたが……」


「き、気のせい!! 気のせいですよ。あは、あはは……」


 みんなにとっては伝説的英雄、勇者が住んでいた家だ。この場はしっかりと空気を読むべき。


「そうですよね。奇妙ですよね……」


 ぼそりと落ち込むように言葉を零すアルビオ。申し訳ない気持ちになり、慌てふためきながらフォローを入れる。


「いや、奇妙というかなんというか……その、住みやすそうな家……ですよね?」


 アルビオにとっても勇者は尊敬するべき存在だろうに、その建物を否定するのはまずいだろう。


「まあだが、この街並みには合わん建物であるのは認めるよ」


「そうですね、殿下」


 殿下がそれを言うんかい!! アルビオも納得しちゃったよ!!


「でも確かに、まるで別の世界の建物って感じですよね」


 ユニファーニが核心をついたことを言う。


「――っ!」


「そうだね、そう見えるよねこれ……」


「何でも勇者は遠い国から来られたってことらしいから、そこの文化のものなのかも……」


「なるほど、それをこうして見られるのはとても素敵な事かも知れませんね」


「我が国の外観はある程度、想定してほしかったというのが、王族としての本音だが……」


 各々、この建物について思うところを話す。


 だが、俺からすればこれは証明の証。ケースケ・タナカはこれで百パーセント、日本人だ。


「では、皆さん立ち話も何ですし、中へどうぞ」


 俺達はアルビオの招きにご相伴につくのだった。

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