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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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02 依頼完了

 

 まず到着したのは、まるで市役所のような建物が(そび)え立つ。だが、中に入っていくのは鎧や冒険服、ローブをまとった人などが出入りしている。


「ここが王都のギルド……」


 その大きさと人の出入りの頻繁さに圧倒される。すると、リュッカが荷馬車から降りてポンコツパーティとギルドへと向かうようだ。


「ちょっと待っててね。依頼完了手続きしてくるから……」


「あっ……そっか」


 ポンコツパーティとはここまで。依頼内容は王都までの護衛が仕事。なのでギルドへ完了手続きをしてくるのだ。


「待ってリュッカ」


「なに?」


 リュッカを呼び止め、アソル達に念を入れて言い聞かせる。


「いい? 今回の貴方達の報酬の事、わかってるよね?」


 にこっと圧を込めた笑顔を向ける。夜這いの件をうやむやにはさせないとばかりに威圧する。


 それどころかアソル以外の二人に限っては殆ど戦ってもいない。報酬なんてなくて当然だ。むしろ貰う立場ではないかと思うほどだ。


「わ、わかってますよ」


「なっ! マジでぇ〜」


「ラッセ……」


「ちっ……わかったよ」


 コイツ、まだ反省してないのか。死んでも治らなさそうに感じたので、腹が立つので嫌がらせに、さらに念押しする。


「匂い袋の件もわかってるよね?」


 ふんと鼻を鳴らし、ジトっと視線を送る。


「……わかってます」


「あああああっ! お前マジ可愛くねえーっ!!」


 ラッセはヤケクソ気味に大きな声で罵倒するが、俺はモノともしない。


「可愛くなくて結構。迷惑をかけたあんたの自業自得。巻き込まれたアソルが可哀想だよ」


「ぐうぅ……」


 悔しそうに唸って見せるが、俺は気にしない。ふんとそっぽを向く。


「何かあったの?」


 サニラがアイシアへ耳打ちして尋ねる。それを受けてアイシアも耳打ちで返す。


「あの人達が私達の寝てた――」


 アイシアは事の次第を説明してしまったようで、


「と、言うわけだよ」


 ふるふると怒りが沸き立つように震えながら、ゆっくりと立ち上がると、まるで鬼でも宿したかのような表情で指差し怒鳴る。


「お前達ぃ!! そこに直りなさーいっ!!」


 その空気すら揺らすような怒りの声に一同だけには飽き足らず、周りまで振り返ってみせる。その声の矛先の三人は瞬時に身を寄せ合い、震える。


「直りなさいって言ってるの……」


 冷たい口調で軽蔑の視線を送る。彼女の綺麗なエメラルドグリーンの瞳が真っ黒に見えてしまうほどに。


 その目力と迫力に圧倒され、サニラの前へ正座して直る三人。


「はいい!!」


「貴方達ねぇ――」


 サニラの罵詈雑言混じりの説教がギルドの出入り口前で始まった。何故だか説教慣れしているように怒鳴りつける。


「アイシア、余計なこと言わなきゃ良かったのに……」


「あっ! もしかして言っちゃダメだった? ごめんね」


 ――その後、その説教を聞いていたギルドの受付が事情を容易に理解し、ポンコツパーティに報酬は与えられず、匂い袋分の仕事をタダ働きさせられ、信用まで失ったことは言うまでもあるまい。


 何だかとんでもない別れになってしまって、流石に良心が痛んだ。

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