02 依頼完了
まず到着したのは、まるで市役所のような建物が聳え立つ。だが、中に入っていくのは鎧や冒険服、ローブをまとった人などが出入りしている。
「ここが王都のギルド……」
その大きさと人の出入りの頻繁さに圧倒される。すると、リュッカが荷馬車から降りてポンコツパーティとギルドへと向かうようだ。
「ちょっと待っててね。依頼完了手続きしてくるから……」
「あっ……そっか」
ポンコツパーティとはここまで。依頼内容は王都までの護衛が仕事。なのでギルドへ完了手続きをしてくるのだ。
「待ってリュッカ」
「なに?」
リュッカを呼び止め、アソル達に念を入れて言い聞かせる。
「いい? 今回の貴方達の報酬の事、わかってるよね?」
にこっと圧を込めた笑顔を向ける。夜這いの件をうやむやにはさせないとばかりに威圧する。
それどころかアソル以外の二人に限っては殆ど戦ってもいない。報酬なんてなくて当然だ。むしろ貰う立場ではないかと思うほどだ。
「わ、わかってますよ」
「なっ! マジでぇ〜」
「ラッセ……」
「ちっ……わかったよ」
コイツ、まだ反省してないのか。死んでも治らなさそうに感じたので、腹が立つので嫌がらせに、さらに念押しする。
「匂い袋の件もわかってるよね?」
ふんと鼻を鳴らし、ジトっと視線を送る。
「……わかってます」
「あああああっ! お前マジ可愛くねえーっ!!」
ラッセはヤケクソ気味に大きな声で罵倒するが、俺はモノともしない。
「可愛くなくて結構。迷惑をかけたあんたの自業自得。巻き込まれたアソルが可哀想だよ」
「ぐうぅ……」
悔しそうに唸って見せるが、俺は気にしない。ふんとそっぽを向く。
「何かあったの?」
サニラがアイシアへ耳打ちして尋ねる。それを受けてアイシアも耳打ちで返す。
「あの人達が私達の寝てた――」
アイシアは事の次第を説明してしまったようで、
「と、言うわけだよ」
ふるふると怒りが沸き立つように震えながら、ゆっくりと立ち上がると、まるで鬼でも宿したかのような表情で指差し怒鳴る。
「お前達ぃ!! そこに直りなさーいっ!!」
その空気すら揺らすような怒りの声に一同だけには飽き足らず、周りまで振り返ってみせる。その声の矛先の三人は瞬時に身を寄せ合い、震える。
「直りなさいって言ってるの……」
冷たい口調で軽蔑の視線を送る。彼女の綺麗なエメラルドグリーンの瞳が真っ黒に見えてしまうほどに。
その目力と迫力に圧倒され、サニラの前へ正座して直る三人。
「はいい!!」
「貴方達ねぇ――」
サニラの罵詈雑言混じりの説教がギルドの出入り口前で始まった。何故だか説教慣れしているように怒鳴りつける。
「アイシア、余計なこと言わなきゃ良かったのに……」
「あっ! もしかして言っちゃダメだった? ごめんね」
――その後、その説教を聞いていたギルドの受付が事情を容易に理解し、ポンコツパーティに報酬は与えられず、匂い袋分の仕事をタダ働きさせられ、信用まで失ったことは言うまでもあるまい。
何だかとんでもない別れになってしまって、流石に良心が痛んだ。




