69 いざ、王都へと思ってました
――翌日、王都へ向かうはずだった。
すぐ近くなので、昨日の冒険者が起き次第向かうつもりだったのだが、昨日飲み過ぎた二人とこちらのパーティの三人も少し休んでの移動ということで、ラバの街を散策することに。
別にほっといてもいい気がするが、フェルサの話があったり、一応依頼を受けてくれたパーティとやむなく行かなきゃいけない為、仕方なくである。
とはいえ、俺自身は初めての街散策だ。軽い足取りでリュッカとアイシア、宿屋内にいたフェルサ、バーク、サニラと共にラバの街を歩く。
ちなみにバトソンとジードは留守番。バトソンは馬達の調子を、ジードは潰れている者達が起きてきた時のことを考えてのこと。それに――、
「若い子達だけの方がいいだろ。今ならまだ人も少ないし、楽しんでおいで……」
――大人の貫禄というお小遣いをくれた上、気を遣ってくれた。できた大人である。
これも冒険者から培った人生経験の賜物だろうか。それならフェルサも学校に行く必要もないのではとも考えたが、同い年の子と学ぶ学ばないは違ってくるだろう。
いわゆる競争率を高めて、個々を延ばすというもの理にかなってるとしみじみ感じる中、じゃあこの二人はと考えた。
まだ、人が少ないとはいえ、賑わいを見せる屋台の店が所狭しと並び、呼び込みの声が響く中、サニラに訊いてみる。
バークに聞くと嫉妬されそうなのでと、内心の俺としては男に聞いた方が気が楽だと感じつつも。
「サニラはどうして冒険者に?」
少し警戒するような目線を頂いた。
「あ、いや、言いたくないならいいの……」
つんとそっぽを向き、目線を正面に戻したサニラ。
「別に。うちは貧乏だったし、稼ぎがいい冒険者が都合が良かっただけ。だけど、バークとだけだとあんまりにも危険だから、あのパーティに厄介になってるの」
少し不機嫌そうに答えた。財政事情はどの世界でも共通のようだ。
「そうなんだ。じゃあバーク君は?」
何の気兼ねもなくアイシアはくりっとした目でバークに訊いた。その咄嗟のアイシアの行動にサニラは機敏に猫のような反応して警戒する。
「あ、えっと、俺は――」
案の定の反応。頰を少し赤らめ照れながら答える。今彼は両手に花束以上の状態、いわゆるモテ期だろうか。
人生において必ず何回かモテ期というものが来るらしい。俺はあったかどうか……あったはずだが覚えていない。
だが、そのモテ期状態の彼には申し訳ない。中身は男ですが、許して下さい。一人明らかな好意がある女子がおられるのだから。
その好意があると思しき彼女は怒りの表情でバークを見る。
「――勇者に憧れたんです!!」
「は?」
「そうなんだ〜!」
「ね? 子供みたいでしょ!!」
後半強く言い放つとサニラはぎゅっと捻るように彼の足を踏む。
「――いでぇっ!!」
実に痛そうな声を出す。踏まれる原因を作ったアイシアはきょとんとした顔をしている。
だがそんな恋愛事情に首を突っ込むより、勇者という発言の方が気になった。
「勇者に憧れたってなに?」
俺は呆れ気味に言葉を吐き捨てた。ゲームじゃあるまいし、勇者なんて早々居てたまるかなんて高を括っていたのだが、
「えっ!? 勇者を知らないなんて、流石に冗談だよね!?」
アイシアが驚愕と言わんばかりに声を張り上げ、リュッカ達もぱちくりとこちらを見る。
俺に視線が集まる――何故知らないのかという疑惑の眼差しだ。
あれぇ〜? いるの? 勇者?




