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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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67 獣人

 

「……すまないね、あまり酔わないはずなんだが、迷惑をかけたようだ」


「大丈夫ですよ。何かと貴重な話も聞かせて頂けましたし……」


 余計な事まで聞いた気がするが、心の中へしまっておこう。人生の教訓を学んだと思おう。


「本当は君達にちょっとお願いがあって、食事に誘ったんだ。まあ完全に忘れてしまった者達がいるが、申し訳ない……」


 その呆れた視線の先には、テーブルに倒れて寝るアネリスとアソル達と一緒に酔い潰れたグラビイスがいた。アネリスの側にはサニラ、リュッカ、アイシアが、バークとフェルサはグラビイスの元にいた。


「お願いって?」


「――フェルサ!」


 グラビイス達を介抱するフェルサに呼びかけると、フードの中の何かがピクンと動くのが、一瞬だが見えた。


「なに? ジード?」


 呼びかけに応じて寄ってくると、冷静な口調で素っ気なく用件を訊く。


 だがフェルサに答えるではなく、俺に紹介するようにお願いをする。


「実はお願いというのはフェルサのことなんだ」


 ちらっと横目にフェルサを見る。リリアとはどこか違う、吸い込まれそうな水色の瞳が影を落とすフードの中で光る。


「この子、ですか?」


 俺は困った反応をする。


 今日出会って、言葉すらろくに交わしていない人をお願いと言われてもと戸惑いを隠せない。


 その様子をジードは予想してたのか困ったような笑顔を見せる。


「初対面の人をというのはわかってるよ。無理を承知で言っているんだ」


「ジード、私は――」


「うん、わかってるよ。でも、今一度よく考えてほしいんだ」


 フェルサはジードの言わんとしていることがわかっているのか、どこか寂しげにも聞こえる声で返答する。


 だが、そろそろこちらにもわかるように事情を話してほしいので、こちらから追及することにする。


「あの、このフェルサさんが何を?」


「ああ、ごめんね。実は王都の魔法学校にこの子を通わせたいんだ」


「……! 私がこれから通う学校にですか?」


「出来れば……」


 ガンとする真剣な物言いだ。


 おそらくフェルサが邪魔だからという感じではなく、この子のことを思ってのことだろう。


 だが、そんな親心があるような物言いも知らずかフェルサは淡々と、しかしどこか芯の通った声で言う。


「ジード。私には貴方達に拾われた恩義がある。返さない訳にはいかない」


「……」


 あえてそこは尋ねなかった。踏み入ってはいけないと思った。ジードは困った笑顔を見せる。


 だが先程俺に見せた顔とは違う、寂しそうな笑顔だ。


「フェルサ、君の気持ちはわかるよ。僕もきっと君の立場ならそう言うだろうね。……だけど、だからこそだよ。君にはもっと色んなことを知るべきだ」


「冒険者の方が知ることは多いよ。生きていく上では必要」


「そういうことじゃないんだよ。僕達は――」


 ジードとフェルサの言い争いが激化していく。その様子に介抱していた一同もこちらに気付く。


「何かあったの?」


「どうかされたんですか?」


「……多分フェルサのことです」


 心配そうに駆け寄る一同。サニラがフェルサを止める。


「フェルサ! ジードさんは貴女のことを思って言ってるんだよ!」


「……んっ。わかってる、けど……」


 少し落ち着いたようだ、ジードが謝罪する。


「ごめんね、みんな」


「いえ、それより――」


 流石に事情が読めないといけない気がしてきたので、尋ねることにした。


「何で揉めてた……というか事情をお聞かせください」


「そうだね、すまない……実はね――」


 そうジードが語り始めようとすると、フェルサがフードをふぁさと取る。するとぴんっと勢いよく三角の耳が立った。


 思わずフェルサの方を向く。


「えっと……獣人?」


「ああ、彼女は獣人だ。本国から無慈悲に吐き捨てられた、ね」


 別に獣人であることは珍しいことではない。この酒場にもちらほらと見かけるし、ラバの街にはゴロゴロいた。


 だけど、俺は初めての獣人を紹介されたことより、無慈悲に捨てられたという部分がどうしても頭から離れなかった。

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