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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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66 人生って色々あるんですねぇ

 

 ジードは懐かしいのか、先程より酒の進みがいい。身体がいい感じに火照り、昔話をしてみせる。


 何よりの酒の肴になっているようだ。話が乗ってきたのか、訊いてもない話をされた。


「君のお母さんはね、本当にいい人だよ。彼と結婚したのだってそうだしね……」


「えっと、父のことですか?」


「ああ、そうだよ……」


 俺とジードが二人で話しているのを見たアネリスが先程までのテンションとは激変した状態で絡んでくる。


「キャハハハッ! なぁにぃ? リンナに振られたからってぇ〜……娘に手ぇ〜だそうってぇ〜?」


「そんなことはしないよ! ていうか君はお酒弱いんだからほどほどにしなさいって、いつも言ってるだろ……」


 聞いてはいけない話を聞いた気がする。


 完全に出来上がっているアネリスに水を渡して介抱するジードを見て思った。


 まあ確かに、美人だからなリリアの母親。そうじゃなきゃ、リリア自身もこんなに可愛いくて美人さんになったりしない。


 先程の話からそれだけではなさそうだが、まだ治らないアネリスはガシッと俺を捕まえて話を始める。


「つーか、リンナの男の趣味が可笑しいのよ!!」


「は、はぁ……」


 顔が近いせいか口を開いた時に酒の匂いがする。だが、そこまできつくない。本当に弱いんだなと苦笑いを浮かべながら、相槌を打つ。


「リンナはねぇ、リンナはねぇ……ダメ男が好みなのよ〜!! だから、コイツみたいなインテリメガネなんてぇ〜……これっぽっちも興味なかったのよぉ!! キャハハハーーッ!!」


 やめてあげてほしい。ジードさん、さっきから黙ってちびちびと酒だけ飲んでるから。


 見ていられないが、下手なフォローもできない。何故ならリンナの娘だから。


 最早、苦笑いの表情を崩せない自分がいる。それを見かねたリュッカ。アネリスを引っ張る。


「あの! 魔法使いさんですよね? 是非、シアに魔法使いの教授をしてあげて下さい!」


「えっ!? 私!?」


「おっ! お嬢ちゃん、魔法使いなの〜? よ〜し……お姉さんが色々教えちゃうぞ〜!!」


 俺は巻き込まれたアイシアと助け舟を出したリュッカに軽く感謝の合図を送る。それに対し、リュッカは軽いウインクで返した。


「元気出して下さい」


 とりあえず落ち込むジードにこの言葉くらいなら送っても大丈夫だろうと声をかける。


「ああ……ありがとう。ごめんね、変な話聞かせてしまって……」


「い、いえ。母の好みが可笑しいのが、その……間違いなんですよ、きっと!」


「いや――」


 ダンッと金色の酒――おそらくはビールだろう入ったジョッキを思い切りテーブルへ置くと、身を震わせて反省を述べる。


「僕が男らしく告白していたら……もしかしたら何か変わっていたのかもしれない!!」


 どうやらこの人も酔ってきたようだ。口調が強くなってきている。


「最終的には彼が告白したと散々のろけられたからな〜。はあ〜……」


 強くなったと思いきや今度はテーブルにゆっくりと滑るようにもたれつく。


「そ、そうですか……」


「そうなんだよ。採掘師である彼が彼女にあんな告白を……」


 リリアの父親を採掘師だと知ることになった。この世界での採掘師とは多分、魔石のことではなかろうかと推測を立てる。何せ、魔石はかなり日常的に使われているのだ、予想は容易だ。


「えっと、もしかしてですけど、綺麗な魔石を指輪にして、告白とか?」


 話の流れ的に興味本位でジードの顔を覗き見るように尋ねる。それを聞くとばっと起き上がる。


「そうなんだよっ! あんなのズルいよぉ〜! それを惚気混じりに聞かされる身にもなってほしい」


「えっと……」


 中々ベタな話で、聞いておいて何だがご愁傷様です。


 しかし、ダメ男が好きとは、母性本能でもくすぐられたのだろうか。ドラマとかでもダメな男に貢いでみたいな話はよく挙げられるが、そういうものなのだろうか?


 見た目は女だが、中身が男の俺にはわからん。女心がわかれば年齢=彼女なしにはならんと心の中で踏ん反り返ってみるが、すぐに落ち込む。


 何だかこの人の気持ちがわかるかも。


 同情とともに落ち着かせる意味を込めて、水を差し出す。


「私が言うのもアレですが、いい事ありますよ」


「ああ……! ありがとう!」


 ガシッと水の入ったコップを掴むと一気に水を流し込んだ。

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