不動ってかっこいいけど実際はそんないいものじゃない -城視点ー
動けないというのは辛い。
さっきちらっと見えた鹿の親子が近づいてきても撫でることもできないし。
近づいてきた親子がフンスフンスと苔蒸した石壁を嗅ぎまわってくすぐったくても我慢。
雨が降ってきたりしても雨を凌ぐ場所に移動もできない。
まあ、吾輩自身が雨を凌ぐ場所なわけで寧ろ雨に打たれるのは気持ち良かったりもした。
最初に近づいてきた鹿の親子とかも吾輩の軒下で雨宿りしていた。かわいかった。
おっと、話題がそれてしまったが動けないままではどうしようもない。
とりあえず何か出来ることは無いか。
こういう場合のお約束としてはステータス画面とか出てきてスキルポイントを割り振ったりすると色んな事が出来るようになるはずだ。
ステータス画面、ステータス画面・・・・・・
しばらく念じてみたけど何も出てこない。
これは本格的に詰んだ気がする。
動けない城に意識だけあるってほとんど拷問みたいなものではないだろうか。
吾輩が暗い気持ちで、これから先何日も何か月も下手すると何年も続く人生、いや城生について考えていると近くの茂みがガサガサと揺れ始めた。
うん?鹿の親子が群れでも連れてきたのか。
そう思って見ていると出てきたのはゴブリンだった。
ゴブリンという種族で合っているかは分からないが、見た目はよくファンタジーで出てくるゴブリンにそっくりだ。
そのゴブリンがゆっくりと吾輩の城門に近づいてくる。
そうして警戒しながら城門を開いて中に入り込んでくる。
正直気味の悪いモンスターが自分の中に入ってくるのは御免こうむりたかったのだが、動けない吾輩にはどうする事もできない。
そうしてゴブリンは城の中で一番豪勢な部屋に入って来た。
その部屋の奥には立派な壁掛けがしてあり、壁掛けの前には立派な椅子があった。
壁掛けには城らしきものが描かれているが擦れていてはっきりと見えない。
ゴブリンはゆっくりと椅子に近づいて来る。
その時吾輩の何かが警鐘を鳴らした。
その椅子にゴブリンを座らせてはならない!
その椅子は吾輩が主と認めた者だけが座ることを許されのだ!
近づいて来たゴブリンが椅子に触れた瞬間、吾輩の中で「許さない」という思いが爆発した。
次の瞬間ゴブリンは電撃に打たれたかのように焼け焦げボロボロと崩れていった。




