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にゃあ。

 ぼくのうちは、ともばたらきです。大きいいえをかうのにたくさんお金をつかったので、おとうさんも、おかあさんも、たくさんはたらかないといけないといっていました。

 二人とも、よるおそくまでおしごとをしています。いえにはあんまりかえってきません。なんのために、いえをかったんだろう。ぼくはまえのアパートのほうがよかった。

 いえにはだれもいないので、ぼくは学校からかえったら、じぶんでかぎをあけます。

 その日、ぼくがいえにかえると、へやにしらない男の子がいました。ぼくはびっくりしていいました。

「きみはだれ?」

 その子はなんにもいいません。ソファーにすわって、ふしぎそうに、ぼくをみています。

 がいこくには子どものどろぼうもいると、おとうさんがいっていました。でもここは日本なので、この子はどろぼうではないと、ぼくはおもいました。

「きみのなまえは? どうしてうちにいるの?」

 ぼくはもう一かいききました。それでもこたえてもらえなかったので、名まえをきくのはあきらめました。

 とくべつがっきゅうのユウちゃんは、ぜんぜんしゃべりません。この子もおなじびょうきかもしれない。むりやりしゃべらせようとしたらだめだと、青はら先生がいっていました。

「あそぼう」

 ぼくはそとに出ようとしました。でも、その子はいやそうだったので、やめました。

 二人でゲームをしました。その子はさいしょはへただったのに、すぐうまくなりました。いっぱいまけてくやしかったです。

 それから、おやつをたべました。きょうは二人いるのに、テーブルの上のおやつは一人分しかありません。このまえ、とだなのおかしをかってにたべたら、あとでおかあさんにおこられました。でも、きょうはおきゃくさんがいるから、しかたがないとおもいます。二人でおかしをたべました。ぼくも、いつもよりおおめにたべました。

 その男の子は、ぜんぜんしゃべりません。でも、とてもおもしろいです。にこにこしたり、いやそうにしたり、ひょうじょうを見るだけで、いいたいことが分かりました。その子がたのしそうにしていると、ぼくもたのしくなりました。

 夕がたの時ほうがなりました。このへんの子は、時ほうがなると、みんなじぶんのいえにかえります。その子はかえろうとしなかったので、どこかとおくからきたんだとおもいます。

 いっしょにテレビを見ていたら、おかあさんがでんわをかけてきました。

「かえりがおそくなるから、よるごはんはレンジでチンしてたべてね。いつも一人にさせてごめんね」

 ぼくは、きょうはひとりじゃないよ、といおうとおもいました。でも、いえませんでした。どうしていわなかったのか、わかりません。でんわはすぐにきれました。

 それで、二人でハンバーグをたべました。おとうさんとおかあさんの分をあげていいか分からなかったので、ぼくの分をはんぶんこしました。ごはんをたくさんたべました。

 きがついたら、そとはまっくらになっていました。

「まだかえらなくていいの」

 僕はその子にききました。本とうは、かえってほしくありません。でも、その子のおかあさんがしんぱいするとおもいました。

 その子はくびをかしげて、ぼくのことをじーっと見ました。それからいいました。

「にゃあ」

 ずっとだまっていたのに、にゃあ、だって。ねこのなきまね。ぼくはわらいころげました。その子もわらいました。

 おかあさんより早く、おとうさんがかえってきました。おとうさんはぼくにいいました。

「なにかいいことでもあったのかい」

「うん。ともだちがきてるんだ」

 ぼくはテーブルのほうを見ました。

 そこにはだれもいませんでした。テーブルのうえには、ぼくのおさらとおちゃわんといっしょに、おきゃくさまようのおさらとおちゃわんがおいたままになっていました。

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