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(11)熱を帯びたその手
大人になるってどういうことだろうか。
現実を受け止めることかな。
夢を諦めることかな。
辛いことを傍らに携え歩いてくことかな。
大人になるっていうのは、きっと自分の力で生きていくってことなんだろう。
ミヒロの手は、それでも命に満ちていた。
熱を帯びたその手で、僕を繋ぎとめようとしていた。
僕はこの手を二度と離してはいけないんだろう。
それが大人になるということなんだろう。
僕は真っ暗なトンネルを歩きながら、曖昧な記憶の断片を少しずつ、途切れ途切れの黒いピースを少しずつ、枠の中にはめていく。
何もなかったトンネルの中に少しずつ景色が出来上がっていく。
ミヒロは知っているんだろう。でも、言葉を失い、今や影だけになってしまった。
きっとこの先にミヒロはいない。
二度と離さないと誓ったこの手は、僕の手からすり抜けていく。
それはとても悲しいことだ。
それでも僕は足を前に出さなければならない。
それが大人になるということなんだろう。
もう随分と歩いて来た。
もうすぐ僕はトンネルを抜けるだろう。
そして、僕は全てを思い出すことになる。




