表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

(1)駆け抜ける空と見上げる空

10代男子の憧れと落胆、そして現実。読んでくれた人にうまく伝わるといいなと思います。



「予め用意された飛行機に乗って行くよりさ、『あ、気球だ!飛び乗ったろ!』で行く方がドキドキするだろ!」兄ちゃんはいつもこんなことを言っていた。


弟の僕はというと、そんな兄のようにならないでほしいという両親からの過大な期待を一身に背負って生きてきた。


正直、兄ちゃんが羨ましかった。


兄ちゃんはいつだって空に【自由】の絵を描く。


そして描いた絵のこともすっかり忘れて、飛び乗った気球から地上を見下ろす。


遠く離れてく地面に無我夢中になり、小さくなってく家々や田畑を眺めてはしゃいでいる。


おい空の絵はどうした、というこちらの苦情もまるで受け付けない。


受け付けないというより、届かないと言ったほうが正しいかも知れないけれど。


とにかく、自由なのだ。


鳥に生まれながらにして翼があるように、兄ちゃんは翼に代わる何かを持って生まれてきたのだろうと思う。


さぁ羽ばたくぞなんて力を込めなくたって、そのうちピューっとトンビみたいに飛んで行く。


僕はいつだって両親のせいにしてきたけれど、冴えない人生の原因は僕が【自由】の描き方がわからないからだって本当は気づいてる。


そしてそれを悲観する勇気もなく、乗り越える気概もなく、ただただ何だかわからない流れに押されてここまできてしまったことも。


誰にだって一つや二つ、駆け抜けたい空があるはずなのに、その空を見上げるだけしかできない僕は、地上を見下ろす兄ちゃんをその他大勢と一緒に羨望の思いで見上げることしかできなかった。


僕は兄ちゃんを望みすぎて、望みすぎて、あまりにも望みすぎたから、大人になり切れず、失う怖さに蓋をした。


やれやれだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ