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就職完了

最も吃驚していたのは言わずもがなデルタだった。

彼からしてみれば何故聖女が働こうとするのか理解が出来ない。

凄く簡単な理由だ。

何不自由無い生活を保証され、国に守られるべき存在の聖女がよもや働きたいなど言う筈が無い。

何故なら今まで殆どの聖女がその立場にふんぞり返り、欲しい物を欲しいままにしてきたから。

勿論そうでない聖女も居たがそれは極少数であった。

居るだけで良いと言われてわざわざ働こうなど思いはしない。

デルタは飛んで行きかけた思考を引き戻して必死に頭を回転させる。

皐月が働くのは有り難い話だった。

常に人不足(女性嫌いの隊員の事を考えると下手に雇うことが出来ないからである)の食堂に人が入るのだ。

しかしデルタの一存で聖女を働かせて良いのかとも思う。


「私は働いて頂けるのなら非常に喜ばしいですが…その………聖女様をこんな所で働かせて良いのかと思うのです」

「何故ですか?」

「え?」


皐月にとって働く事は生きて行く上では当然の事。

だから何故デルタが働かせて良いのが悩む理由が分からなかった。


「今までの聖女様がどうやって過ごしていたか知りませんが、私は私です。甘やかされて生きて行くつもりはありません。それに『こんな所』なんて言わないでください。とても素敵な所じゃないですか。騎士さんはここのご飯を食べて元気に戦うんですから」


ニッコリと笑う。

デルタは勘違いをしていた。

今までの聖女は非力でか弱かった。

だから皐月もそうなのだろうと思っていた。

しかしそれは違う。

クロードに戦闘系聖女と言われる程には変わり者なのだ。

デルタは笑う。


「不思議な聖女様ですね。この食堂を素敵な所と言って頂けるとは思いませんでした。ありがとうございます」

「いえ、思った事を言っただけですから」

「ねえデルタ、貴方が良いなら皐月をここで働かせてくれないかしら?」


クロードの言葉にデルタは驚き、皐月は目を輝かせる。


「皐月にとって働く事はやって当然の事なんじゃないかしら?」

「それは何とも平民思考ですね…」

「私平民ですよ?私のいた所は殆どが平民でしたし、男女関係無く仕事をするんです」

「やっぱり平民だったのね、何となくそんな気はしてたわ」

「だったのでは無く、今も平民でしょう?」


イヴァンとベカとデルタは目を剥き、クロードは額を押さえる。


「聖女が平民な訳無いでしょう。王族と並ぶ位高い階級になってるわよ」

「何ですかそれ、聞いてないし必要無いし。でもまあ王様だって政治して働いてるんだから私が働いても問題は無い筈では?」

「それはそうなのだけれど、今までと違うから戸惑うものなのよ」

「そんなものですかね?」


聖女は働かないと言う固定概念がここまで邪魔をすると思っていなかった。

さっきはクロードが援護射撃をしてくれたけどまだデルタは考えている。

もういっその事ジョシュア達に頼み込もうかと考えていると


「分かりました。雇いましょう!聖女様、宜しくお願いします!」

「こちらこそ宜しくお願いします!一生懸命働かせて頂きます!」


皐月は職を手に入れた。

もっと苦戦して街で探さなければだめかと思っていたが割と簡単に見つけられてラッキーである。


「朝何時にここに来ればいいですか?」

「何時でも良いですが…」

「朝私達と一緒にここに来てご飯食べてからでいいんじゃない?」

「そんなにのんびりでいいんですか?早起きも出来ますよ?」


皐月は寝起きが良い。

冬になると多少ゴネるがそれは布団が暖かくて出たくないと思うから。

起きねばならないのならちゃんと起きる。


「皐月は聖女なのよ。幾ら隊舎が近いからって護衛も無しに行くのは危ないわ」

「そうなんですね…分かりました。じゃあ朝ご飯の片付けからお仕事します!」

「はい、お待ちしております。無理の無いようにお願いしますね」


勤務時間はしっかり決めておいた方がいいと皐月は思うがそれはまたデルタと話し合おうと心に決めた。

デルタはニコニコ笑顔で皐月を見送った。


4人で隊舎に向かう。

途中に訓練場があり、複数の隊員が居る。

皐月はいつかそこに混ざって訓練出来る様に剣の素振りをやろうかと思った。

ぼんやり考えている内に隊舎に着き、大きな扉を潜る。

中に入るととても綺麗だった。

掃除は隅まで行き届いているし、窓も多くあるので明るい。

皐月がこれから住む部屋へ案内される。

そこは向かいにイヴァン、左にベガ、右にクロードの部屋がある場所だった。

扉の前に着くと3枚のカードを渡された。


「このカードをここに当てるとこの部屋に張ってある結界が一度切れる。部屋に入って扉を閉めるとまた結界が張られる仕組みになっているわ」


ここ、と言ってクロードが指を指した部分には黒い石が付いている。


「これは魔石と言って、魔力を含んでいる石よ。これに結界の術式を組み込んでいるの。便利な物ね」

「便利ですね…でも何で3枚もあるんですか?」


皐月が使うのなら1枚で十分のはずだ。

なのに手元には3枚。

カードを見ながら首を傾げる。


「予備ね。もしもの為に誰かに渡しておくのも有りだと思うわ。まあ私は全部屋のもの持っているけれどね」

「それならイヴァンとベガに渡しておくね、はい」


イヴァンとベガに向き直り、カードを差し出す。

2人は戸惑った様な表情をする。


「そんなに簡単に渡していいの?僕等が信用出来るかまだ分からないんじゃない?」


ベガが不安そうに言った。

イヴァンも頷く。

2人の事は信頼している。

なんてったって皐月の中でお兄ちゃん的存在になっているから。

嫌な奴は本能的な所で嫌悪するので案外人を見る目はある。


「大丈夫だよ。信頼してるからね、お兄ちゃん達」

「お兄ちゃんって…2つしか変わらないんだけどなぁ」

「皐月がいいなら預かっておく」


2人は困った様に笑い、カードを受け取った。


「皐月、少し待ってて」


そう言ってベガとイヴァンは自室にへ入って行く。

すぐに出て来た2人はそれぞれ手にカードを持っていた。


「僕らの部屋のカードだよ。皐月に預けておくね。何かあったらおいで」

「ありがとう!責任を持ってお預かりします」


2人からカードを受け取り、大切に持つ。

それを見ていたクロードは悔しそうな顔をする。


「私のも預けておくわぁ、待ってて!すぐ戻るから!」


そう言って慌ただしく自室に入り、本当にすぐ出て来た。

クロードからカードを受け取り、無くしたら大変だと思う。


(そう言えばスキルにアイテムボックスがあった気がする。そこに入れておけば完璧なのでは?)


そう思い立った皐月は早速行動に移す。

周りに他の隊員が居ない事を確認し、アイテムボックスを開く。

空中に白い靄が出て来た。

それが正しいのか分からず、取り敢えず手を突っ込む。

靄の後ろを見れば手は無い。

正解なのだと分かり、手に持っている3人のカードを入れた。

取り出せるのかと不安になり、手を入れるが感触が無い。

アイテムボックスを閉じて掌を上に向けカードを思い浮かべると、ふわりと風が舞いカードが現れた。

何と便利なのだろう。

大丈夫そうなのでまたアイテムボックスに仕舞った。

ふと3人を見ると固まっている。


「どうしたの?」


問い掛ければ、3人はハッとして皐月をまじまじ見る。

手には1枚のカード。


「…………取り敢えず部屋に入ってからにしましょう」


皐月を扉に向け直し、結界を解除させる。

そして4人で部屋に入った。

どこで区切るか分からず、とんでもない事になってますね。

申し訳無い…

誤字脱字のオンパレードもぬるい目で見てください…( ´-` )

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