聖女召喚
深夜2時過ぎ
自室のベッドで寝ている皐月を青白い光が包んだ。
本人は気付く事なくスヤスヤ寝息を立てている。
徐々に光は消えて行き、完全に消えた頃には皐月の姿はどこにも無くなっていた。
――――――――――
王宮の一室には円を描くように黒いローブを着た20人の男達が立っており、扉の前には鎧を着た騎士2人が待機している。
黒いローブの彼等は【聖女召喚】の魔法陣を展開させた。
床が青白く光り、靄が人の形を模っていく。
光が消え、魔法陣があった所には1人の女性が横たわっている。
魔法陣を展開していた男達は魔力の欠乏により次々倒れていく。
何とか膝を付き持ちこたえている2人に1人の騎士が慌てて声をかける。
「お、おい!成功したのか?聖女様は生きておられるのか!?」
もう1人の騎士が急いで召喚された女性の元へ駆け寄り、呼吸を確認する。
「息はあります!気を失っているか、眠っているのでしょう」
その言葉を聞き、3人は安堵する。
「そうか、良かった……直ぐに隣室へお連れしろ。私は王へ報告をしてくる」
そう言い残し部屋を出ていった。
女性の側に居た騎士は壊れ物を扱うように優しく抱き上げ、部屋を出る。
残された2人は周囲に倒れる男達へ目を向けた。
誰も起きる気配は無い。
自分達もその場に倒れ込んだ。
途轍もない眠気が2人を襲う。
気力だけで耐えていたが限界のようで直ぐに気を失った。
しばらくすると侍女が部屋に入って来て全員に布団を掛け、部屋の電気を消し、外へ出て行った。
月明かりに照らされる部屋は静寂に包まれていた。
――――――――――
目を覚ますと、とても広い部屋で寝ていた。
(家で寝ていたはずなのだけど、ここ何処かな?)
両親や祖父母のおかげで肝の据わった娘として成長した皐月は焦ったりしなかった。
高級そうなベッドから降り、室内を見渡す。
大きな鏡が目に付き、自分の姿を見る。
真っ白のネグリジェを着ていた。
(誰かが着せてくれたのかな…恥ずかしい…)
ふと、顔を見て驚く。
腰くらいまで伸びた黒髪、そして。
「何…この目…」
黒色だった目が左が緑色、右が黄色になっている。
何度か瞬きをしたり目を擦ったりしてみたが変わらない。
「えー……」
訳が分からず困っていると、ノックが聞こえメイド服を着た女性が2人入って来た。
1人は50代くらいで、もう1人は30代くらい。
どちらもヘーゼルブラウンの髪と瞳をしている。
「聖女様!お目覚めになられたのですね!良かったですわ…」
皐月を見るなり泣きながら駆け寄ってくる。
「あの…聖女様って何ですか?」