新・浦島太郎
釣りでもしようと海へと向かう道すがら。
浦島太郎はいじめの現場を目撃してしまった。
甲羅を背負った強面のおっさん三人が寄ってたかって、年端もいかない少年を取り囲んでいる。
「ひぃぃ、許してくださいなんでもしますから!」
「あぁん!? てめぇごときが出来ることで俺らが喜ぶとでも思ってんのかよ!」
「こいつぁ、教育が必要そうだなぁ……ひっひっひ」
「俺たちの恐ろしさをたっぷり教え込んでやるぜい」
これはいけないと悟った浦島は、釣竿を片手に駆け出した。
「やい待て、そこの亀ども! 三対一なんて卑怯じゃないか!」
浦島がいうと、甲羅のおっさん三人はのっそりと振り返ってにらみつける。
「なんだぁ、てめぇは……?」
「俺たちの邪魔しようってのか!?」
「それと俺たちは亀じゃねぇ! スッポンモドキだ!」
スッポンモドキってスッポンとどう違うんだろう、という疑問が脳裏をよぎったが、そんなことを気にしている場合じゃない。スッポンモドキ三人衆は完全にターゲットをこちらに切り替え、ポキポキと拳を鳴らして近づいてくる。
そっちがその気になら、やられる前にやってやらぁ!
浦島は目にも止まらぬ速さで釣り竿を振り回す。
次の瞬間。おっさんたちの背負っていた甲羅が木っ端微塵に砕け散った。
浦島家に伝わる奥義が炸裂したのだ。
甲羅を失ってただのおっさんたちと化した三人衆は野太い悲鳴を上げる。
「きゃぁああああああああ!?」
「えっちスケベ変態!」
「もう! 覚えてなさいよ! あたしたちを怒らせたら、乙姫様が黙っちゃいけないんだから!」
なぜかオネエ口調になった三人衆は胸元を隠しながら海へと帰っていった。
浦島はいじめられた少年へと手を差し出す。着物はボロボロで、身体にも痣があるのが見てとれた。相当ひどい目に遭わされたらしい。少年は「ありがとう」と涙交じりにお礼をいった。
しかし奴らの裏には乙姫とかいうやつが控えているらしい。
いくらスッポンモドキを蹴散らそうとも、その乙姫をどうにかしなければ、また今回のようなことが起きるだろう。これじゃ安心して釣りもできやしない。
こうして浦島太郎は、乙姫のいる竜宮城へと殴り込みをかけることを決めたのである。
※つづきません