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雷神との邂逅

 青年の朝は早い。

 今日もニワトリが鳴くよりも先に宿屋を出る。

 鎖帷子の上からコートを羽織り、使い勝手のいいショートソードを腰に差す。魔物退治へと赴くためだ。


 魔王が現れた影響で、郊外には数多くの魔物がうろついている。

 腕の立つ護衛がいなくては町と町を行き来するのも難しい。

 青年は少しでもこの状況が緩和してくれればと魔物を狩り続けている。


 それに魔物を狩ることは青年が生活していくためにも必要な事だ。

 魔物の肉や毛皮を専門の業者に売って生計を立てているのだ。狩る魔物がいなくなったら、この町には住めないなと思いつつも、毎日湧くようにして魔物は現れる。


 青年は魔法剣士だった。

 剣術と魔法の両方を駆使して戦うと言えば聞こえはいいが、実際は剣術も魔法も単体ではいまいちパッとしない力しか出せなかったから合わせて使うことにしただけである。


 使えるのも単純な『属性付与』の魔法のみ。

 しかも魔力を吸収しやすい素材が使われているものでようやく効果を発揮する有様だ。このショートソードも贔屓にしている鍛冶屋に頼んで特注で作ってもらったものである。


 遠くの浜辺の方で魔物たちが群れをなしているのが見えた。

 ショートソードを抜いて『属性付与』の魔法をかける。相手は雷属性の弱いシーマン。当然付与するのは雷属性。



「さーて、今日もお仕事頑張りますかね」



 肩を鳴らしながら堂々とシーマンの群れに歩み寄っていく途中。

 突如、天から巨大な落雷がシーマンの群れを襲った。

 青年は落雷の音に「ひぃっ!?」と情けない声を上げて腰を抜かす。


 おかしい。曇り空ではあるが、雷が落ちるような天候ではない。

 となると、今のは魔法による雷撃ということになる。

 これほどの規模の雷魔法を扱えるだなんて……絶対ヤバイやつに決まってる。


 危機を察した俺は立ち上がって町へと戻ろうとする。

 ……が、なにか柔らかいものに阻まれる。

 かくしてそれは豊満な女性のおっぱいであった。


 すぐにそれを悟った青年は名残惜しく思いつつもサッと後ろに飛びのいた。


 目の前には金の装飾があしらわれた白いドレス姿の女性が立っていた。

 胸元が大きく開いており、スカートのスリットが深い露出度の高い服装だ。

 目のやり場に困った青年がドギマギしていると、女性が長いブロンドの髪をかきあげながら言った。


「わしは雷神トール。先ほどの雷魔法……見事であったぞ若造」

「えっ!? あ、いえ今のは俺がやったわけではなく――」

「隠さずともよい。お主の剣には雷の残滓を感じる」

「いやこれはただの『属性付与』の魔法で――」

「がっははは! 奥ゆかしいやつじゃの! 気に入った! お主、わしの弟子になれ!」



 こちらの話も聞かずに、どんどん話が進められていく。

 それに親しげに肩に手を回されてるせいで胸が顔に……。

 青年はおっぱいの柔らかな感触に飲み込まれ、トールと名乗る女性の言葉への受け答えも雑になっていく。そうしているうちに、気づけば弟子になることを了承してしまっていたと知るのは翌日のことである。



 こうして、なし崩しの早とちりで青年は雷神トールの弟子となった。

 そしてこれが勇者誕生のはじまりであることはまだ誰も知らない。



※続きません

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