心はあっても人形なんです
私は人形。そんな私でも心はある。でも人形だから、誰かにこの思いを伝えることはできない。
だから私は、どうしてもこの気持ちを伝えたい。私は今『とても幸せです』と。
最近まで私はとある場所にいた。
また始まった。私たちの舞台が。
音楽が鳴るとと同時に私の体は動き出した。
ここは人形たちが舞台を作る劇場。観客は裕福層の者達ばかり。
そんなところで私は毎日踊る。私は踊り子なのだ。ユラユラ…ヒラヒラ…と。
ある日、この劇場に7歳くらいの可愛らしい女の子が来た。
少女はどう見てもボロボロの服を着ていて、何度も破けたのか縫った痕が何ヵ所もある。
この劇場は、入場料が高くとても少女がこれる場所ではない。迷いこんだのかなぁ?
それから毎日少女は私の劇を見てくれた。どうやらこの子はお金をちゃんと払っているようで、キラキラとした目で今日も私の劇を見ている。私は一人でまた、ユラユラ…。木で出来たこの体に綺麗な布を巻いただけの私。
そんな私を見てくれる少女にいつしか私は、恋をした。
理由なんて単純なものだ。私の劇を見てくれるために貧相な生活をしているのに、毎日作り物の私を見に来てくれる。
たったそれだけの理由だ。でもたったそれだけの理由だけで、私のような作り物にはじゅうぶんすぎるものだ。
ある日から少女が来なくなった。こんな孤独感は何時ぶりだろうか。…どちらにしろ私がやることは、いつもと変わらない。
私には心があるが、体はない。
私の体は何時ものように勝手に動く。この腕や足に着いている糸がある限り、私は自由に離れない。
すると、あの少女がこの劇場にやって来た。何だか何時もより一層汚れている。前から思っていたが、風呂日いっていないのだろうか?
少女は髪はボサボサ、服から出ている肌はどこも汚れている。しまいには靴が少女の足から見当たらない。
だが、少女は何時ものようにキラキラした顔でなく、なにかを乗り越え、また何かを成し得ようという顔をしている。そしてまた、何時も違って今日は大きな袋を持っていた。
少女はその袋を持って所長のとこにいった。
数分後、帰ってきたときには少女は袋をもっていなかった。
だが、その顔はキラキラとしており、早足で私のところまで来た。
私は舞台が終わったあと台の上に座らせられ、観客を見送ることになっている。
少女は私を持ち上げると、ギュッと抱きしめにっこりと笑ってくれた。
少女は私を持ち帰り名前をくれ、とても大事にしてくれた。
少女は独り暮らしで、家はよく言って小屋…とまで言わないものだ。
それでも私はそんな少女に感謝した。糸で繋がれ自由がない私を連れ出してくれた。
今私は毎日が楽しい。あの篭のような舞台から連れ出し、外の色々な景色を見せてくれる。
私には自由に動かせる体はないが、自由な心がある。でも、この恋は絶対に叶うことはない。
だからせめてあなたに…
私は心から『ありがとう』とあなたに伝えたい。
作ってしまった…。




