カーネーション。
「ねぇ、母さん。 花って好き?」
「う~ん、そうだねぇ……。あ、でも桜は好きだよ♪」
何処まで行っても天然なのだろうか。
近々やってくる記念日でさえ頭の片隅にも留めていないようであった。
祝日であり、彼女の誕生日であるというのに ── ……。
最早「母の日」などは廃れた行事であり、特に触れるまでもないのであろうか。
リサーチ宛ら折角準備していたというのに、まるで気付かない様子の母親に頭を痛めてしまう。
ビッグサプライズをこっそりと企画していたにも関わらず意気消沈してしまう娘はつとに悩むしかなかったのだ。
まさか、これほどまでに天然だったとは……。
それでも幼い私をたった独りでここまで育ててくれた事に対して評したいのは我が儘なのだろう。
でも、たった一輪の花を母親に授ける事が悪い事ではないと信じたい。
こつこつと貯めてきた財産を叩き、一輪ではなるものかと。
百万本の薔薇に匹敵するぐらいに敷き詰められたカーネーション。
思いは様々ではあるが、感謝だけを一心に籠めたつもりではある。
「お母さん……これ……!!」
目を閉じたまま純粋に感謝を母親へと突き付けた。 答えなど鑑みずに。
ありがとう、なんて、ありふれたフレーズには興味はない。
単純に受け取ってくれさえすれば本望だったのだ。
斯くして私の頭に温もりは添えられ、髪はくしゃくしゃと掻き混ぜられてしまう。
「この~……生意気に~……!!」
母は今まで一度も誰にも見せたことのないような、太陽にも勝るぐらいの微笑みを魅せていた。
……。
そうか、これで良かったのだな。
母がシングルマザーになって数年。
多大に苦労を掛けてきた想いが僅かにでも癒されてくれようものなら。
ただ、ゆくゆく生涯を共にするパートナーの紹介には勇気がいるだろう。
その時には丸く収まれば良いと軽々しく期待しておこう。
「でさ…………。 この花ってなあに??」
まさか、その年になってまでカーネーションを知らないなどとは。
彩りは豊かながらも花言葉は戸惑い、今までの人生を省みていたのだ。
それは決して白濁に身を寄せてはならないだろうと。
お母さん、ありがとう。
いつも、ありがとう。
一度も言葉にしなかったのだが秘められた旋律が助長し、辺りは静けさに満ちてゆく。
一粒の涙が床に零れては、親子の絆は絶対に途切れることはないかのように。
やがて、どちらからともなく抱き締め合い、ふたりは力強くいつまでも一瞬を噛み締めていた。
「ありがとう……ありがとう……」
掻き消されるほどにか細く。
何度も何度も呟きながら ── ……。
あまり、真剣に読まないようにっ
≡3 シュッ