第5章『神々の遊び』
ここは天界「ファンタジア」
ありとあらゆる神々が住む場所
神はなんにだっています
海の神、山の神、お米の神、野菜の神、茶碗の神、帽子の神、ティッシュペーパーの神…
世の中に存在するもの全てに神は宿り、世の中全てのものはその神々の意思によって成り立っています
しかし、なんでも出来る反面、担当以外の事は出来ませんし、死ぬ事もありません。死にはしませんが、弱体化したり、新興神として強大化する神もいてます。
少し前まで勢いのあったカセットテープの神。最近はめっきり弱体化し、酒を飲んでは「あのCDの神の野郎め」なんて愚痴ったりしていますが、その隣の居酒屋ではCDの神が「あのデータの神の野郎め」なんて愚痴ったりしています。
ここ最近メキメキと力をつけているのはスマホの神でしょうか。偉そうにファンタジアの中央を肩で風を切って歩いています。
まぁファンタジアとはそんなところです
今日はそのファンタジアに住む「晴の神」と「雨の神」のお話です
前述した通り、神は死にません。毎日毎日、この世が出来て以来、ずっと同じ業務、同じ作業の繰り返し。特に晴の神と雨の神は毎日毎日、やれ晴れだの雨だのとやりあっており、もぉ既に飽きてきています。下界が晴れようが雨だろうが知ったこっちゃありません。
「あぁ今日もヒマじゃな」
晴の神が言いました
「あぁヒマじゃ」
雨の神が言いました
「今日は何で決めようかの」
「そうじゃな…」
二人はヒマでヒマでしかたないので、毎日何かの賭け事をしてその日の天気を決めていました
ここ数日…晴の神が連戦連勝
なんと破竹の40連勝
長い歴史からみてもなかなかない連勝記録更新中です
勝っても負けてもどっちでもいいんですが、やはり負けが続くと多少悔しい雨の神は「今日こそ勝ちたい」そんなことを思っていました
「ここのところ40連敗しておる。さすがにそろそろ勝ちたいのぉ」
「では今日の賭け事はおまえが決めるとよい」
昨日は「味噌汁か白米か」で決めました
下界の一人の人間に目をつけ、その人間が味噌汁から口をつけるか、白米から食べるかの賭け事で、味噌汁から口をつけたことにより、晴の神が勝ちました
一昨日は「スネ毛抜き」で決めました。晴の神のスネ毛にガムテープを張り、一気にはがし、その抜けたスネ毛の本数が奇数か偶数か。結果は73本となり、奇数に賭けた晴の神が勝ちました
…今日はなにで決めようかの
雨の神はまわりをキョロキョロみわたします。
下界の空の中央付近に筋斗雲に乗ったサルがいました
「おぉ、今日は『サル占い』で決めようかのぉ」
「サル占いとはいかなるものか?」
「ほれ、あそこに筋斗雲に乗ってブラブラしとる斉天大聖が見えるじゃろ」
「おぉおぉ、見える見える。相変わらずサルがヒマそうにブラブラしとるの」
「あやつが筋斗雲に乗ってどこに向かうかを賭けようではないか」
「よかろう」
どうやら今日の賭け事が決まったようです
「せっかくじゃからな…ほいっ!」
雨の神は杖を振りました
杖の先からいろんな物が飛び出しました
北の森にバナナを置きました
南の雲に美女を置きました
東の谷におもちゃを置きました
西の砂漠に酒を置きました
「どうじゃ。さて、サルは何処へ向かうか」
「ではわしは西の砂漠にしようかの」晴の神は言いました
「ではわしは…北の森に…いやっ、南の雲にしよう」
雨の神は言いました
『いざ勝負!』
さて、こちらはヒマを持て余した斉天大聖。筋斗雲に乗ったまま、やることもなくあっちへフワフワ、こっちへフワフワ
「ヒマだな〜ウキッ」
すると北の森の方から美味しそうなバナナの香りがしてきます
南の雲からは絶世の美女の香水の香りがします
東の谷からは楽しげなおもちゃの音がします
西の砂漠から酒のうまそうな匂いがしてきます
「うっひょ〜どれどれ、どれから手をつけようかウキッ」
もともと欲が深かった為、釈迦如来に五行山に五百年間拘束された経歴の持ち主。迷いに迷います。
北にフワフワ。南にフワフワ。東にフワフワ。西にフワフワ。
「どうせなら全部欲しいのぉウキッ」
こちらはその様子を見ている晴の神と雨の神。
応援にも熱が入ります
「おぉサルが東に向かうぞ」
「おもちゃは秩序の象徴。おもちゃを選べば下界で戦争が起きるぞ」
「ややっ、サルが北に向かったぞ」
「バナナは飽食の象徴じゃ。選べば実り豊かな年になるぞ」
「いやいや、サルは西へ向かったぞ」
「酒は混沌の象徴。下界で天変地異が起きるぞ」
紆余曲折の結果
「あはは、やったぞ、やった」
雨の神は喜びます
斉天大聖は南の雲にいる美女の方へ向かいました。南の雲に乗った美女と合流し、斉天大聖はそのまま美女に飛びつきました。
「うーむ、41連勝とはならなかったか」
晴の神は少し残念がりました
「では、久しぶりに雨を降らせていただこうかの、えいっ」
雨の神は杖を振りました
すると、下界で雨が降りました
同時に下界から声が聞こえました
「あっ!雨だ」
「あらっ、雨!洗濯物取り込まなきゃ!」
「やった!雨だ!雨が降ってきた!」
「ああっ…雨だ…なんでだよ…」
久しぶりの雨は下界の人間にいろんな影響を与えたようです。
「しかたないのぉ、また明日から連勝記録目指すかの」
晴の神は言いました
「いやいや、明日からはわしが連勝記録更新する番じゃぞ」
雨の神は言いました
「そういえば、斉天大聖はどうなっとるんじゃ」
南の雲に目をやると斉天大聖は美女とまぐわいの最中
「おおっ、早速まぐわっておるわ。所詮はサルじゃのぉ」
「ところで美女は何の象徴じゃったかな。美女を選べば、下界では何が起きるんじゃ?」
「美女は子孫繁栄の象徴じゃ。下界のどこぞで子宝に恵まれるのじゃ」
こちらは斉天大聖
絶世の美女を前に我慢できずに飛びつき、まぐわいます
キコキコキコキコキコキコ…
「うきーっウキッ」
斉天大聖と美女が絶頂に達した瞬間
「ポンッ!ポンッ!」
斉天大聖の左目から赤い玉が、美女の口からは青い玉が勢いよく飛び出しました
それを見ていた晴の神と雨の神
「おぉ、2つの子宝玉が出たの」
「赤い玉と青い玉。女玉と男玉じゃのぉ」
「女の子と男の子の姉弟じゃな」
勢いよく飛び出した女玉と男玉は小さな雲の上にポトリと落ちました
雲から下界をのぞく2つの子宝玉
女玉「ねぇ、あんたどこいくか決めた?」
男玉「ううん、お姉ちゃんは?」
女玉「私もまだ決めてないんだけど…あっ、あそこなんかどう?」
男玉「えっ?どこ?」
女玉「ほら、あそこ。あそこの湖のほとりにあるカフェのテラスにいる2人よ」
男玉「うん、なんかとても優しそうだね」
女玉「ついさっき結ばれたばかりみたい。ねぇあそこにしようか」
男玉「うん。幸せになれそうだね。僕、あそこの子供になりたい」
女玉「じゃあ決まり。先にいってるわよ」
男玉「うん、僕もあとから行くよ」
今日はもうやることがなくなった晴の神と雨の神
「ヒマじゃな」
晴の神が言いました
「あぁヒマじゃ」
雨の神が言いました
「明日は何で決めようかの」
「そうじゃな…『うんこ投げ』なんかはどうじゃ」
「はて、うんこ投げとかいかなるものか…」
神々は毎日暇を持て余しています