4話
朝、昨日と同じ時間に家を出て同じ時間に学校につく…昨日と違うのは朝練で来ている人以外で学校に来ている人はまだおらず、カバンも弁当で重さが少しだけ増えた。
綺麗に咲く桜を横目に教室に入った。誰もいない教室で、自分の席に座り未履修分野の課題を出す…この時間だったら一冊は終わらせることが出来ると思う。
時間が立つと生徒が登校してきて教室も賑やかになってきた。
「おはよう古澤さん」
「おはよう志倉さん」
「おはよう!」
えっと、確か後ろの席の…
「美泉さん?」
「うん、美泉真央だよ!真央って呼んでね、瑞紀って呼んで良い?」
「どうぞ」
「あら、私も呼んでいいかしら?私の事も華と呼んで?」
「真央ちゃんと華…さんね」
「あら、ちゃんでもいいのよ?」
なんでだろう、華さんは華さんなのだ。
「呼び捨てでいいよ!さあ、言ってみて!」
「えっと…真央?」
「うん!」
元気な真央…は、嬉しそうな表情で席についた。
「私のこともぜひ呼び捨てで」
「…えーっと」
「瑞紀?」
「何でしょう…華」
「僕の事も呼び捨てで」
いつの間にか隣には楓くんが座っていた。
「あら、おはよう颯」
「おはよー!颯」
「おはよう…颯」
今日もにこやかな笑みですね…さて、数分もすれば全員が教室にいて昨日と同じ通りに先生が来て着席をする。
「今日は委員長を決めるぞ、やりたい奴はいないか?」
中学までだったらこういう時に手を挙げる人なんて居なかったのだけど。
「はい」
「なんだ志倉、生徒会から打診が来てるが委員長やるのか?」
「ふふ、私が委員長でこのクラスの事を把握しておけば生徒会でこのクラスを有利に出来ますから」
「さすが女帝…えげつないな」
女帝…確かに今の華は女帝という言葉がとても似合っている。にしても華も生徒会に打診を受けているのか…なるほど。
「あともう一人、男子からやってもらいたいがどうする?」
「颯は?」
「僕も生徒会から打診が来ているし部の方もあるから無理だよ」
「このクラスで生徒会から打診が来ているのは志倉に四宮、古澤だな」
「あら、瑞紀も打診が来ているの?凄いじゃない」
外部生の中で生徒会に打診が来るのは多いわけでは無いらしい。昨日衝撃的な事実を教えられているから複雑な気分だ…右隣からは笑い声が聞こえるけど気の所為にしておこう。
「そうなるとなぁ」
「俺やります」
「お、江畑か…そうだな、外部生の江畑だったら委員長になったほうがクラスの名前を直ぐに覚えられそうだな。んじゃあ頼むぞ」
「はい」
彼がもうもう一人の外部生か。
「んじゃあ2人は前に出て挨拶と、今月末にある球技大会の出場種目のメンバーを決めてもらう。頼むな」
先生の言葉で早速黒板の前に2人は並んだ。
「委員長になりました志倉華です。生徒会にも入る予定なので行事関係で困ったことは直ぐに言いいなさい?私が生徒会の方に掛け合うから」
「会長泣かせてやるなよー」
「努力はするわ」
「華かっこいいー!」
さすがと言うか、このクラスは仲が良いのね。
「同じく委員長になった江畑和彦です。これを機にクラスの名前を覚える予定なので間違ったらすぐに教えてください」
「まかせとけー!」
「華の暴走止めてね!」
「さて、さっそく球技大会の出場するメンバーを決めるわよ。今回の種目はバレーとバスケ、全員がどちらかに必ず出なければならないの」
バレーとバスケか…得意でもなく不得意でもなく、普通にできるくらいなのだけど。特にやりたいと思うのも無いし、余った枠に入れてもらえばいいわよね…現にクラスの殆どの人が自分の出たい競技を華に言っているし。
「瑞紀は何にするの?」
「特には…空いてる枠に入ればいいと思ってるの」
「じゃあ一緒にバスケしようよ!」
真央は女子バスケ部に入部する予定で、今日からある部活も当然女子バスケ部に行くとのこと。
「うん」
「やった!華、瑞紀もバスケ!」
「分かったわ」
そんな感じで決まって行き、あっという間にお昼休み。今日は母さんが作ってくれたお弁当を取り出し開けようとしていた時に声を掛けられた。
「瑞紀もお弁当なの?」
「え?うん」
「私達も一緒に食べていい?」
「もちろん」
華と真央も手にお弁当を持っていた。
「私達、この時期にある場所で食べるのだけど、瑞紀に案内したいの」
「すっごくきれいな場所なんだよ!」
そういう2人に連れてこられたのは桜苑と呼ばれる中庭。名の通り桜の木が多くあり、その下にはベンチがあって生徒も多くいた。
「綺麗」
「この時期はここでよく食べるのもう少し奥へ行くと躑躅苑があって桜が終わったらツツジを見ながらお弁当を食べるのも中々いいわよ?」
「この時期はお日様も暖かいから眠くなるんだけどね」
私達はちょうど空いていたベンチに座りそれぞれお弁当を開けた。
「そういえば、瑞紀って生徒会に打診来てたなんて凄いね!さすが外部生というか…うん、ずごい!」
「それほど入試の点数が良かったのね、さすがだわ」
「えっと、ありがとう」
この2人に褒められるのはとても恥ずかしくて照れる。
「可愛い…」
「大人っぽい姿をしているからこんな表情見たら周りの男子達が騒ぐでしょうね」
「瑞紀も頭いいんだね~華も20位以内に入っているし、颯なんか毎回1位だもんね」
「あの男に関しては人外よ」
「言うねぇ」
2人の言葉を聞きながらお弁当に入っている卵焼きを口に入れた。
「そういえば瑞紀って部活どうするの?」
「今日から仮入部期間だし、気になる部活はあった?」
「うーん…実は昨日、生徒会長と楓からパソコン部に勧誘されたの」
「え」
「あらまぁ…」
2人父さん達と似たような反応…真央はあの部についてはよく知らないようだけど、華は中等部でも生徒会だったから多少は知っているようだ。
「ってことはもう試験は受けたの?」
「お試しって言われてやったのだけど…」
「あの2人のお試しはお試しではないわね、点数はどうだったの?」
「えっと…満点、でした」
「……それはご愁傷様」
それはどう意味だろうか。
「あの2人、きっといい笑顔だったのでしょうね」
「仰る通りでした」
「あの2人はいい人材を見つけたら必ず側に置くから…瑞紀に拒否権は無いでしょうね」
死刑宣告のようなものまで言われた…でも華の言うとおりかも知れない。
「ふあ~…眠くなってきたぁ」
「残念だけど真央、もうすぐ午後の授業が始まるわよ」
「うぅ…」
とても眠そうな真央を押しながら歩きだす華に着いて行き教室へと戻った。
「おうおう、眠そうだな真央。花びら付いてるぞ」
「え、本当?取ってよ隼人」
「りょーかい」
真央の頭上に付いている花びらを取る彼は…確か颯の後ろの席で…鈴木隼人くんだ。
「瑞紀も付いてるよ」
「え、本当?」
「取れた」
そう言って颯が見せたのは桜の花びらだった。少し恥ずかしいと思いながらも席についたら先生が入ってきた、午後の授業は委員会決めと校内案内とのこと。
委員会については生徒会から打診が来ている人は関係ないと言われたのでボケっとしながら聞いていたらいつの間にか校内案内になっていた…時々自分のボケっとしすぎて恐ろしいと感じることがある。
校内案内はなんというか…さすが四宮学園という感じだ。広いし…施設も充実しているし、プールなんて室内だし…驚きだった。学校の中で音楽ホールがあるなんて本格的すぎてここは何処状態になったもの…パンフレットなどにも書かれてはいたけど、実際に見るとじゃ大分変わるものよね。
中庭は2つあって昼に来た桜苑の他に躑躅苑、途中には弓道場やら茶室やら、とにかく広いの一言だ。
こうして校内案内で午後の授業が終わった。
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