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赤いツツジの花言葉  作者: 森崎優嘉
3年生 7月
125/136

2話

もうすぐ夏休みが始まろうとしている。

土曜の午後は生徒会の仕事もそこそこに部室でプレゼント制作をしていた。使った資料を生徒会室へ返そうと立ち上がった時に父さんから着信があった。この時間に電話ということは仕事関係かと思いながら通話ボタンを押す。


『瑞紀ッ』

「…どうしたの」


慌てた様子の声だった。


『吹風がッ…吹風が発作を起こしたんだ、けどいつもと少し違っていて…今緊急搬送された』


緊急搬送…この言葉に手に持っていた資料を落としてしまった。


「……それで?」

『俺も陽香も治療室の外で待っている状態で…まだ何も分からない』

「そう…碧海は?今日、出かけるって言っていたけど」

『まだ連絡してない』

「それなら私の方からするわ…父さんは吹風と母さんをお願い。そっちが落ち着いたらまた連絡して」

『ああ』


通話を切り、落とした資料はそのままで碧海に電話した。


『もしもし瑞姉?』

「今父さんから連絡があって…吹風が緊急搬送されたそうよ」

『…え』

「まだ詳しいことは分からないのだけど…また落ち着いたら連絡が来ることになってるわ」

『じゃあ、早めに帰るようにする。』

「また何かあったら連絡するわね」

『うん…ねえ、瑞姉…吹風、大丈夫だよね?』

「……信じましょう」


通話を切り、生徒会室にいるであろう拓都へ伝えるべく落とした資料を拾おうとしてしゃがんだら何故だが力が抜けた。

海さんは今日本社、颯は生徒会室にいるため部室には一人だけだったのだ。

どうしようかと思っていると扉が開き颯が入ってきた。


「瑞紀?…瑞紀!?」

「…颯」

「瑞紀…何があった?」

「颯…拓都を呼んでほしい」


颯は私を椅子に座らせてから生徒会室に行き拓都を連れてきてくれた。

私は2人に父さんから教えてもらったことをすべて話した。


「…とりあえず待つしかない」

「ええ…父さんのあの様子だと、症状はひどいみたい」

「とりあえず俺たちは何時も通りにしてるしかない、か…とりあえず仕事に戻るから姉さんは休んでて。颯さんの仕事の方は俺の方で進めておきますから姉のこと頼みます」

「分かった、ありがとう拓都くん」


拓都が生徒会室へと戻り、部室には私と颯だけになった。


「瑞紀」

「…最近、吹風の調子が良くなかったの。発作も普段と違っていて」


最近の吹風は毎日本当に調子の悪そうな状態で学校を休む日が多かった。昨日からだいぶ回復して学校へ行ったのだけど…。


「吹風に何かあったら…」

「きっと大丈夫だよ。吹風ちゃんは強い子だ」


颯の言葉に菜穂のことを思い出した。菜穂はいつも元気だった…強い子だった。


「大丈夫だと思っていたのに…強い子ほど菜穂はッ!すぐに治るって言ったのに!…信じてたのに…菜穂みないに…吹風が死んじゃったらどうしよう…」

「瑞紀、まだ吹風の状態が分からない時に決めつけては駄目だ…信じよう、吹風ちゃんを。朗子さんがいるなら大丈夫さ」


颯に抱きしめられながら父さんからの連絡を待つ。どれくらい経っただろうか…携帯の着信音が聞こえ携帯を見ると父さんからだった。


『瑞紀』

「父さん…吹風は」

『今の所大丈夫だ…詳しい事を話さないとだから病院まで来てほしいんだが…大丈夫か?』

「煌星さん、僕の方から警備班に連絡して送ってもらうよう手配します。碧海くんの方はどうしますか?」

『碧海も頼めるか?』

「はい」

『ありがとう颯くん』

「いえ」


颯は早速警備へ連絡をしてくれ、私と拓都もは早速病院へと向かった。


「瑞姉!拓兄!」

「碧海」


病院の前で碧海とも合流し、待合室に行くと父さんがいた。


「父さん、吹風は」

「とりあえず付いてきてくれ」


そう言って父さんが向かう先はICUだった。


「…肺炎だとさ」

「肺炎?」

「吹風の場合、肺炎になっただけでも危険な状態になる。だからICUに入ったわけなんだが…正直、いつ退院できるか分からない」

「「「え」」」


退院できるか分からない…吹風はそれほど重症ということだ。


「…正直、今回のことで陽香も大分参ってる状態だ」

「家事とかは吹風が入院していた時と同じようにするだけだよ。幸い俺と姉さんは2日後には夏休みに入る。碧海だってもう夏休みだからね」

「…だな」


拓都の言う通りだ。


「とりあえず今は吹風の回復を待ちつつ出来ることをしよう」


そう言い切る拓都がとても頼もしかった。




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