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赤いツツジの花言葉  作者: 森崎優嘉
3年生 5月
118/136

3話

疲れたからなのか何も考えずただ景色を眺めていたら瞼が重くなってきた。


「瑞紀ちゃん?」


私を呼ぶ声が聞こえ目を開けると朗子先生がいた。


「…朗子先生」

「先程から少し様子がおかしいと思っていたけど…煌星さんのお仕事、瑞紀ちゃんと碧海くんが分担して行ったと聞いたわ」


そう言いながら手に持っていた体温計を渡されて熱を計るよう言われて計ると37度…微熱だ。


「頭痛とか関節痛とかは?」

「無いです」


今は眠気のほうが勝っているのだ。


「とりあえずここじゃ冷えるわ」


そう言って私と朗子先生は近くの空いてる病室に入りベットに座らされた。


「とりあえず横になっていて?煌星さんを呼んでくるから」


そう言って病室を出た朗子先生を見てから病室を見た。真っ白な病室に入院したのなんて幼いころだけだったからこうやって横になっているのは不思議な感覚だ。どうにも疲れた頭は思考が低下しているらしく病室については何も思うことなく再び目を閉じてしまった。

次に目を覚ました時にはベットの横に父さんがいて扉の近くには一重先生がいた。


「起きたか」

「父さん…一重先生も」

「こんばんは瑞紀さん。体調はどうですか?」

「特に何も」


寝たからスッキリとしている。


「問題なさそうですね」


寝ていたのも30分くらいのようで吹風の病室に戻り、父さんの車で家に帰った。


「碧海、姉さんの荷物持って」

「りょーかい」


自分の部屋に行き、制服からルームウェアに着替えて直ぐにベットに入った。そのまま目を閉じるとあっという間に寝落ち、次に目を開けたときは朝だった。リビングに行くと拓都が朝食をテーブルに並べていた。


「おはよう姉さん、具合はどう?」

「おはよう、もうすっかり…朝食の準備ありがとう」

「父さんも帰ってから遅い時間まで仕事してたみたいだし碧海も手伝わされてたからね」

「今日は土曜か…碧海、部活はあるのかしら」

「無いらしいよ?あったら手伝いなんてしないって」

「それもそうね」


土曜の今日は授業も午前だけ、午後は部活があったはず。


「俺と姉さんの弁当も作ったから」

「ありがとう」


拓都は案外料理好きなのよね…高校生になってからキッチンに立つことが多くなっている気がする。これは将来いい旦那さんになれそう。


「いただきます」


おいしい。


「一応父さんと碧海の分も作ってあるけど…昼ごはんになりそうだな」

「でしょうね」


朝食も食べ終わり、支度を終えた私と拓都は学校へ向かった。1年と2年は同じ棟に教室があるのだけど3年だけは違う棟に教室があるため廊下で別れた。階段を上がって教室に行く、いつもの時間のため誰もいないけど私にとってはお気に入り。


自分の席に座って何となく机に伏せて目を閉じると外から聞こえる風の音や草木の音がとても良い。どれくらいそうしていたのか分からないけど隣から音が聞こえ、顔だけ動かして横を見ると颯が自分の席に座ってこちらを見ていた。


「おはよう瑞紀」

「おはよう颯…今日は早いのね?」

「まあね」


そう言って穏やかに笑う颯に陽の光が当たってとても輝いて見えた。


「綺麗…」

「ん?」

「今ね、颯に陽の光が当たってすごく綺麗なの」

「僕としては本当に綺麗そうな表情を見れて嬉しいよ」

「っ!」


光のせいなのか輝く笑顔のせいなのか…眩しすぎる。

いろんな意味で眩しすぎて顔を伏せてしまった。


「くくっ」

「もうっ」


クラスの人達が少しずつ登校してきて皆と挨拶をしながら授業の準備を始めた。


「おはよう瑞紀」

「おはよう華」

「おっはよー」

「おはよー!」

「朝からうるさいなぁ…おはよう瑞紀」

「おはよう真央、隼人、江畑くん」


いつものメンバーに挨拶をして一限目が始まった。

午前中の授業が終わりカバンからお弁当を出した。このお弁当も朝食と同じで拓都が作ってくれたもの、今日はこのあと生徒会と部活があるからと拓都が作ってくれていたやつだ。


「あら?瑞紀のお弁当今日は少し違うのね」

「今日は拓都が作ってくれたの」

「…拓都くんが?」

「私も拓都も一通り母さんから料理を教わっていて吹風が入院して母さんがいないときはよく料理をしているから…でもまあ拓都は料理好きだからなんでも作るのだけど」

「それはすごいわね」


弁当を食べ終え生徒会室に行くと既に拓都たちがいた。


「拓都、お弁当美味しかったわ」

「それは良かった」


生徒会の仕事を開始してから数分、私に割り振られた仕事が終わった。


「さすが瑞紀、もう終わった?」

「終ったわ、ついでに見やすいように整理もしておいた」

「それは助かるよ、人間計算機は本当にいいね」

「…それって私の事?」

「もちろん」


そんな呼ばれ方をされたのは初めてだ。


「人間計算機…」

「瑞紀の計算能力を見ていると確かに人間計算機ね」


そんな会話をしながら生徒会の仕事は終わった。



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