3話
4月の後半は生徒総会の準備だ、私と拓都は常に会計係として席を立たず頭のみ使って数字を追っていた。本当は颯もその担当なのだけど会長としての職務もあるためそっちに回っているのだ。周りは賑やかに作業をしているけど私達2人は無言…常に右手にペンで紙に時折数字を書きながら計算をしている。
「「終わり」」
拓都と同時に終わったようで顔を見合わせた。
「さすがじゃない拓都」
「姉さんもね」
「…え、2人とも、もう終わったの?」
「終わったわ」
「終わりました」
「流石だね、今年は会計が終わるの速かったね…他も頑張って」
今日はもうやることも無く、だからといって手伝うことも無いから部室に行き、パソコンを開いて最近新しく作り始めたシュミレーションゲームの続きを始めた。
「瑞紀ちゃん、会計は終わったの?」
「終わりましたよ、拓都は他の人を手伝っていますけど手伝いも大丈夫そうなので部活をしに来ました」
「なるほどね」
海さんの方も仕事をしており、部室にはキーボードを叩く音しか聞こえなくなった。
今作っているシュミレーションゲームは非現実的なもので、日本が舞台だけど秘密結社とか暗殺とかが多い世界観になっている。これがまた作るのが楽しくてつい色々設定を増やしてしまうのだ…あ、そうだ!プレイヤーが助けた女の子も実は組織の人間だったという設定にしよう。
とりあえず完成した所までプレイしようと思い、鞄からコントローラーを出してパソコンに繋げた。スタートを押してさっそくプレイ…うんうん、中々いい動きしてるわね。作った所までプレイし終えると改良するところを簡単に直して続きを作る。
「ふふっ」
「楽しそうだね。シュミレーションゲームを作っているんだっけ?」
「はい、中々楽しくてつい設定を増やしてしまいます…そのせいで完成しないんですけどね」
「分かるよ、俺もシュミレーションを作っているとつい難しくしちゃうんだよね。まあ、それくらいクリアしてもらわないと困るけど」
「それは四宮警備の試験でしょう?それは難しくしないと困りますからね」
「その難しい試験を簡単に満点合格をしたのが瑞紀ちゃんなんだけどね」
ははは…それはきっと気のせいだ、うん。
さてと、会話はそこそこにしてやりますか。やっぱりラスボス的な存在は必要よね、まずはその側近が相手で…銃が主な武器だから上手く隠れながら倒していく感じでラスボスも同じく、体力は多めにしてっと。最後はすこし感動風に…完成!
「瑞紀、生徒会室に戻って」
「分かった」
保存してパソコンを閉じ生徒会室へ戻る。
「とりあえず生徒総会の役割は前に話した通りで行くよ」
ちなみに私は今年度の予算を言う担当である。
「まあ、例年通りになると思うから特に問題は起きないかな」
「でしょうね、何かあったら颯か辰巳、私で対応するわ」
「華は言葉を叩き落としそう」
「ふふ」
恐ろしい…。
「今日は解散、お疲れ様」
再び生徒会室に行き今度は最後までプレーする、コントローラーを手にして…スタート!さっき直した所は全て大丈夫ね、この後は初めてプレイするから訂正箇所をチェックしながらやらないと。
「瑞紀、華が呼んでる」
「待って!今試験プレイしているところだから!」
「だってさ」
「瑞紀、ソフトが誤作動しているのだけど。エラーコード2205って出てるわ」
「拓都!ソフトの説明書を開いて…5ページ目に全てのエラーコードの直し方が書いてあるから」
「分かった」
そんな会話をしながらプレイして行き、訂正するところもなくクリアした。
「修正箇所なし、最終チェックということでオールクリア。完成!」
「お疲れ様」
ゲームも完成したことだし、華達の元へ行きますか。
「これをこうすれば…直りましたね」
「さすがね」
「いえ、これを作った姉さんと碧海が凄いと思いますよ」
「私の出番なし?」
「そうみたいね、拓都くんが直してくれたわ」
私の出番が無いようなので部室に戻り、パソコンを消して帰る準備をする。
「もうこんな時間か」
海さんが時計を見る、時間はもうすぐ下校時間になる。完全下校時間はあと30分ほどあるけど、特にやることもないし帰ろうかと思っている。
「姉さん、帰れそう?」
「いつでも大丈夫よ」
「じゃあ帰ろうか」
「そうね」
「気をつけて帰るんだよ」
「はい、お先に失礼します」
生徒会室では他の皆も帰り支度をしていた。
「お先に」
「また明日」
皆に挨拶をして生徒会室を出た。学校から出ると桜が散っていて、その光景がとても綺麗だった。
「吹風が喜ぶ景色だね」
「そうね」
携帯のカメラで撮りながら帰り、吹風に見せたらとても大喜びで素敵な笑顔をもらったのでとりあえず抱きしめだ…いつものことだ。