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赤いツツジの花言葉  作者: 森崎優嘉
3年生 4月
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2話

今年も躑躅会の招待状と素敵な着物が送られてきて現在、リムジンに乗って会長の屋敷へ向かっている。今年は拓都にも着物が送られており、緊張した表情で隣に座っていた。


「拓都、去年の瑞紀ね」

「…確かに」

「まあ、気楽に行けばいいさ」

「父さんはそれでいいだろうけどね」


到着し、父さんが先に降りて母さんのエスコート…姿だけは立派なのだけどね。

拓都が降りて私も降りようとすると手が差し伸べられた。


「おはよう瑞紀」

「颯、おはよう」


今年も浴衣がとても似合う颯を見て目線をそらした。


「着物、似合ってるよ」

「…颯も、とても似合ってる」

「さあ、行こうか。緊張は?」

「今年は不思議と緊張してないの」

「なら良いね」


母さんと父さん、拓都が会長に挨拶をして終わった後に会長の元へ向かった。


「おはよう瑞紀お嬢さん、よく来たのぅ…うむうむ、今年もよく似合っておる」

「おはようございます会長、今年も素敵な着物をありがとうございます」

「今年も綺麗なツツジが咲いたからの、ぜひ見ていって欲しい」

「はい」


会長への挨拶が終わり、綺麗に咲くツツジの元まで行った。さすが躑躅会、会長の誕生パーティーよりもクセのある人間しかいないからかパーティー以上の視線を感じる。


「…瑞紀、慣れた?」

「え?」

「誕生パーティーの時もそうだったけど、前回は本当に緊張していたみたいだったから。でも今は緊張していないし」

「そうねぇ…最初では無いというのと…」


まあ、大きい理由はあれでしょうね。


「颯がいてくれるから、かしらね」

「…そっか」


颯の顔が赤い…それを見ているだけでもこっちの顔が赤くなってしまう。慌てて周りを見渡して、誰も見ていないことを確認すると安心した。


「…ここでキスをしたいけど、メイクを崩すのは良くないからなぁ」

「っ!」


心の声がダダ漏れ!わ、わざとじゃないよね?無意識だよね!?


「は、はやてっ」

「あ、いいこと思いついた」


そう呟いて颯は私の頭の上にキスをした。私は一瞬何事かと思ったけど自覚した瞬間には驚きと恥ずかしさでいっぱいいっぱいになっていた。


「は、わわっ…な、なにを!」

「可愛いなぁ、本当に。いつもクールだからこのギャプは本当に可愛いよね、反則だよ?」

「颯の方が反則っ!」

「ははは!」


先程のレアな表情は何処に行ったのか、いつもの颯に戻っている。私はもう恥ずかしすぎて溶けてしまいたいくらいなのに…。


「こんな所に…何かあったようだな?」

「まあ…瑞紀さん、顔が真っ赤ですよ?」

「あ、朝陽先輩、真里亞さんっ」

「颯さん、あまり瑞紀さんをいじめすぎては駄目ですよ?瑞紀さん、大丈夫ですか?」


真里亞さんに触れられ、少し冷たい手が心地よかった。


「何となく予想は出来るけどな。颯、あまり無理をさせるなよ?」

「分かっているよ…大丈夫?瑞紀」

「う、うん。大丈夫」


深呼吸をして、朝陽先輩と真里亞さんを見た。真里亞さんは紺色の綺麗な着物を着ていてとても良く似合っていた。


「真里亞さん、その着物とてもお似合いです」

「ありがとう、瑞紀さんもツツジの着物がよく似合うわ」

「ありがとうございます」

「瑞紀さんは大変ですね、颯さんは一見無害そうで本当は一番恐ろしい方ですから」

「私も忘れていましたよ…」


思えば、去年の躑躅会の時もそうだったし誕生パーティーもだったけど真里亞さんは朝陽先輩と常に一緒だったわね…もしや、婚約?


「そうだ、瑞紀さんに是非お知らせしたい事がありまして」

「あのことか、確かに今2人に知らせたほうがいいかもな」

「はい」


何のことだろうと颯と顔を見合わせた。


「実は白鳥真里亞嬢と婚約した」

「…それは、おめでとうございます?」

「随分速かったんだね」

「じいさんが煩かったからな…まあ、そうじゃなくても真里亞とは早く婚約しようとは思っていたんだ」

「試験は合格出来たというわけだね」

「ああ」

「おめでとう朝陽、真里亞さん」


前にも颯から聞いた試験…どういう試験なのかは全く聞いたことが無いし聞いてはいけないだろうから忘れていたのだけど、どうやら真里亞さんも試験のことについては何か知っているようだ。


「おめでとうございます朝陽先輩、真里亞さん」

「ありがとうございます颯さん、瑞紀さん」

「ありがとう」


婚約かぁ…いい響きね。


「大学卒業後に結婚ですか?」

「ああ、そのつもりだ」

「それは素敵ですね!朝陽先輩、真里亞さんを大事にしてくださいよ?」

「当たり前だろう、俺を誰だと思っている」

「尊敬する先輩です」

「お、おう」


とても良いことを聞いてとても嬉しい。話し合う朝陽先輩と真里亞さんはとても和やかな雰囲気で、真里亞さんに朝陽先輩との婚約に至るまでの事を聞こうと決意した。

話していると喉が乾き、飲み物を貰って歩いていると見知らぬ男性に足をかけられそうになり飲み物をこぼさないように一回転、隣にいる颯も上手く私の腕を掴んでクルリと回転してお互いが向き合うように立った。


「大丈夫かい?女王様」

「ありがとう陛下」

「いえいえ、なんのその」


その光景を見た見知らぬ男性は舌打ちをして何処かへ行った。


「あのまま蹴れば良かったかしら」

「いいや、アレは特に何もしなくて大丈夫だよ」

「颯が言うのなら大丈夫ね」

「女王は自分で行動する派だから大変だよ」

「あら…私は行動を起こして陛下が裏で暗躍する、いいパートナーじゃない」

「そうだね」


そんな会話をしながら歩いていると周りの人達が若干青褪めている気がする。


「私を止められるのは颯だけよ」

「僕を止められるのは瑞紀だけだね」

「恐ろしいことを言うね2人とも」

「海さん、おはようございます」

「おはよう瑞紀ちゃん、その着物よく似合ってるよ」

「ありがとうございます」


苦笑いしながら話しかけてきた海さんも相変わらず着物がよく似合ってる。


「朝陽から聞いたかい?」

「聞いたよ。兄さん達もじいさんからうるさく言われているんじゃない?」

「はぁ…和人達はいいよな、何も言われないで」


和人先生達は医者を目指すのが最優先として婚約とかそういうことは余り言われていないみたいだけど海さんは違うのだから仕方ない。


「頑張って兄さん」

「はぁ…」


こうして、驚きの情報を知った躑躅会は無事に終えることが出来た。

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