2 図書館で情報収集
翌日、俺は城の中にある図書館へと向かった。
何はともあれ異世界へ来たのに情報がないのは不安ばかりだしな、だが図書館へ来たのは良かったものの字が読めない可能性を考えてなかった。
とりあえず目についた本を一冊開いて見るが
「まぁ案の定読めねぇわな~」
とか一人愚痴っていると一瞬視界がボヤけた。
疲れているのかと思ったがそうではなかったようだ、次の瞬間には本が読めるようになっていた。
いや、正確には本に書いてあった文字が自分の見知ったの日本語に変わっていたのだ。
確認のため他の本も確認しようとしたが背表紙の文字が読めるようになっていたので中身は確認しなかった。
どうやら1から外国語を覚える必要性はなさそうだ。
字が読めるならば話が早い。
まずは自分たちのいる国の名前や近隣諸国、貨幣価値や外交状況、できれば地図とスキル関連の本があることを願いながら本を探す。
まず現状自分たちがいる国は『スエイズ帝国』というらしい、一応昨日王様からそれっぽいことも聞いてたからな。
スエイズ帝国は地図に書いてある通りだと北に位置している、地図というのは基本的に自国を真ん中に置くものなのだがこの世界ではそうでもないらしい。
スエイズ帝国から見て地図の東側、こちらには『カストラ皇国』がある、おそらく名前の通り皇帝が取り仕切る国なのだろう。
カストラ皇国は大陸の海に面している国で漁業が盛んな国のようだ。
地図の南側には『スビニチエ共和国』、こちらは乾燥地帯で砂漠が広がっているようだ。
適当な予想だがどうせピラミッドなどが立っているのだろうという安直な考えが浮んだがとりあえず置いておく。
地図西側には『サンテルクス新共和国』、新共和国なんて言うから新しい国なのか?
調べてみると最近まで内戦続きの国だったようで最近終戦して国名が改められたようだ。
内戦と聞くと物騒だなぁ、行くなら気をつけたほうがよさそうだ。
基本的には国は4ヶ国、貿易路もしっかりしているようで地図にも書いてある。
あとは小さな村落があるのだろう、地図には書いてはいないが。
一応国関連はこのくらいでいいだろう、あとは酒場とかで情報収集すれば勝手にあの国がどうだとかこの国はどうだという話が聞けるだろう。
そういえば金銭はどうなんだろうか?
図書館の中には関係する本はなさそうなので司書の人にでも聞いてみることにしよう。
「すいません、聞きたいことがあるんっすけど」
「おやおや、見かけない御人ですな」
「あぁ、最近勇者召喚とかいう胡散臭い儀式で呼び出されてなぁ」
「とすると貴方が噂の2人勇者の片割れですかな?」
「そういうことになるな(あいつと一緒にされたくはないが)」
どうやら城のなかでは話題になっているのか俺のことは怪しまれなかった。
司書の見た目はなかなかに歳を重ねた仙人みたいな白ひげをたくわえた老人であった、唯一気になったのは長い耳くらいなものだろうか。
「すまん挨拶が遅れた、俺は義仲 昴だ」
「これはどうも、私はここの司書長を務めてはや900年になるヘイストスと申します」
「え?」
一瞬聞き間違えかと思った。
「どうなされた?、何か変なことを言いましたかな?」
「ええっと、900年?」
「成る程、私は人間ではなくエルフ族のものですので寿命が長いのですよ、ホッホッホ」
そうだよな、異世界だもんな。
人間以外がいてもおかしくないよなぁ?
「お、おう。それで司書長さんよ、この世界の貨幣価値とかを教えてもらってもいいか?それに関する本が見つからなくてなぁ」
「構いませんぞ、ささ、こちらへ」
司書長の話によるとどうやら先ほど見た地図に書いてある4ヶ国で共通の通貨を使っているそうだ。
種類は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨となっていて各貨幣価値は
鉄貨・・・・1円
銅貨・・・・百円
銀貨・・・・千円
金貨・・・・1万円
白金貨・・・百万円
となるそうだ、基本的に使われているのは銀貨や金貨で白金貨などは国家予算レベルでしか使わないらしい。
商品の売り買いも城下町なら銅貨か銀貨で済ませられるそうだ。
でも紙幣がないから持ち歩きには不便だなぁ。
「とりわけ勇者様ならアイテムボックスをお持ちでしょうからそちらに入れるのがよろしいかと思います」
「そうか、別に持ち歩くって言っても財布に入れる必要はねぇか」
すっかり忘れていた、アイテムボックスの存在。
「司書長、ついでで悪いんだが俺ら勇者のスキルの内容が知りたい、見ればわかるものもあるんだがわからないものが多くてなぁ」
「それならば鑑定というスキルがあればわかるのですが、お持ちでなければ教会などで銀貨5枚でお調べできますぞ?」
なんだ、鑑定で調べられるのか。
「鑑定なら持っているがそういう使い方だったのか、もっと物とかアイテムを鑑定するもんだと思ってたぜ」
「アイテムなどももちろんですが人物を鑑定することもできますぞ、相手の名前やジョブはもちろんのこと、所持スキルまでバッチリ把握出来るものでございます」
「そうなのか、こりゃありがたいスキルだな」
「ただ、鑑定のスキルを持っているのは商人ギルドの物たちと冒険者ギルドの一部の者たちになりますので、持っていると知られた場合は悪用される可能性がございます、くれぐれも注意されますよう」
では早速ためにし司書長を鑑定・・・
ヘイストス・ヴァーロス
司書長 男
Lv.119
スキル
森の監視者 中位火魔法 中位水魔法 中位土魔法 中位風魔法 中位雷魔法 中位治癒魔法 腕力 堅牢 集中 魔蔵 魔法軽減 魔力自動回復(微) 物理軽減
なんだか凄い強そうではある、魔法が使える司書長やべえな。
スキルを注目してみると
森の監視者
エルフ固有パッシブスキル、森林内での戦闘時の魔力と魔力総量2倍
なんかスキルの説明みたいなのが出てきた。
これが鑑定スキルの効果ってことか・・・
どれどれ、自分のスキルの説明見てみるとしますか。
とりあえずわかりやすそうなスキルは置いておくとして・・・
オーバーセンス
異世界人特有パッシブスキル、敵の動きを先読みすることが出来る
なんか前の世界の技能混ざってないか?
たしかに前の世界(高校生の時の)では喧嘩や殴り合いに抗争、それどころか武器持ってた奴らともやりあったことがあったから先読みとかはできなくはないが。
まさかスキルとしてついているとは・・・おそらく武装破壊のスキルもこれが原因な気がするんですがそれは・・・
能力超向上
異世界人特有パッシブスキル、鍛錬により能力が上昇する
鍛錬によって?、つまり鍛えろってことでいいんだろうか?、昔も今も変わらずに筋トレや走り込みをしろってことか。
まぁ鍛えるのは好きだし体もなまっちまうからいいけど。
ちなみにスキルには種類が存在するようである。
パッシブスキルとは特に何もせずに常時発動している常駐型スキルであり、ONとOFFが切り替えられるようだ。
固有スキルとは種族や職業に依存した専用スキル、場所によって能力が上昇したりするという希少スキルであり未だ未発見のスキルもあるとのこと。
そして異世界人特有のスキル。
これは通常スキルやパッシブスキルとは完全に別格のスキルのようで、召喚された勇者が元の世界でどのように生きてきたかが色濃く反映された特殊スキルだそうだ。
武闘家ならば近接系スキルが発現しやすかったり戦闘には一切役には立たないが政治や商人としてのスキルであったりと、固有スキルの最上位に位置していて同じスキル名でも効果が違うことがある謎多きスキルとの事だった。
一応情報としてはこんなものだろうか?
国のこと、金銭勘定、自分の能力、調べられることは調べられたと思う。
「ああ、忘れとった勇者殿、この世界には立ち入ってはならないとされる森や洞窟があるのです」
「立ち入ってはならない場所?」
「ええ、代表的なものでスエイズ帝国とサンテルクス新共和国の間にある貿易路の途中、別名雷帝の森というものがありましてな・・・」
「そこはどういう森なんだ?、何か危険な魔物でもいるのか?」
「とんでもない!、あの森には代々言い伝えられている幻獣がいると噂されているのです」
やはり伝説の魔物とかいるわけね。
「その森には幻獣・麒麟が住んでいるとされているのじゃが、麒麟を見たものはかなり少なく実際にいるのかどうか疑わしいとされているのです」
「それはどういった魔、んん!、幻獣なんだ?」
「はい、見た目は白く輝き稲妻を纏うとされています、昔あった話ですと私の生まれる前、2000年ほど前に国一つ滅ぼしたという記述が残っています」
「国一つねぇ・・・」
白く輝き稲妻を纏うとかそれなんてモ○ハン?
「それ以外ですと空を焦がす程の炎を纏う鳳凰、大海を凍てつかせ疾風の如く走る白虎、大陸を背に載せた玄武などもいたとされておる」
「なんだかいろいろな話があるんだなぁ」
「どれも目撃されたことがある話ですぞ、だが全て1000年から2000年前の伝説ですが・・・」
なんだか凄い世界に来てしまったようだ。
とりあえず調べられることは調べ尽くしたようなので図書館を後にする。
「司書長、今日は助かった、また何かあったら色々教えてくれ」
「かしこまりました、その際は私に申し付けくだされば力になりましょう」
外をみると夕日が差し込んでいた、結構長いこと図書館に篭っていたようだ。
夕食は城内で料理を出されたものを食べた。
無駄に高級感があったが美味いこと以外はわからなかった。
明日は町に出たりちょっとした特訓でもしてみようかと思う。