1 勇者召喚だったけど勇者じゃない?
俺は見知らぬ場所に立っていた。
見た目からするとRPGゲームに出てくるお城のように見える、周りには騎士らしき甲冑を着込んだ兵士が何人もいる上に正面には王様らしき人物と何やら杖を持った魔術師風の変なものもいる。
そして俺の右隣には俺と同じく学生らしい人物(服装からして)が一人いた。
「おぉ、成功したようだな!」
「そのようでございます」
何やら正面ふたり、王様らしいものと魔術師風の変な奴が喋っている。
「これは失敬、召喚した勇者の前でこのように喜んでしまって申し訳ない、自己紹介が遅れたが私はスエイズ帝国の王であるサン・ヨルトミノ・スエイズである」
やはり王だったようだ、だが勇者とはなんだ?
「えっと・・・僕たちなんでここにいるんでしょうか?」
俺と一緒に召喚されたらしい学生も混乱しているようだ、やはり同じ世界の人間なのだろう。
「完結に説明しよう、君たちはこの世界の人間ではない、ここは君たちから見た異世界なのだ、そして召喚された君たちには勇者となって魔王を討伐してもらうことになる」
「「はぁ?」」
俺たち二人は意味がわからなかった。
待て待て、ここが異世界?、勇者?、魔王討伐?・・・・なるほど、いわゆる勇者召喚の儀式的なやつなのか。
で、王の前にいる俺らが勇者ということになるんだが・・・
「おい待てよ、なんで俺がそんなことしなきゃならないんだ!、はやく元の世界に返しやがれ!」
「王の御前なるぞ!、控えるがいい!!」
「まぁよい、召喚したのは我々ではないか」
「ですが・・・」
なんかいやな雰囲気だ、これはまさか・・・
「召喚した手前申し訳ないのだが、我々と君たちにはある契約がされているのだ。召喚することの出来る異世界の勇者には条件があってのう、その条件とは主に前の世界で生きる気力が薄くなっていうものだ」
成る程、たしかに誰彼構わず召喚なんてしていたら俺らがいた現実世界では行方不明者続出である。
「そして召喚された勇者側には魔王を倒さないと元の世界へ帰ることはできないことになっているのだ」
勝手に召喚して返せないだぁ?、こいつらふざけてやがるな。
だがたしかに、前の世界でやりたかったことも未練もないといえばない、召喚される条件に合っているわけだ。
「納得してもらえたかな?、それでは君たちの勇者としての能力を確認させていただきたいのだが自分のステータス確認とでも念じてもらえるかな?」
厨二設定か?、とか思ったが、ピョコっと自分のスキルとジョブが表示された。
ゲームのステータス画面みたいなものが出てきた。
義仲 昴
拳闘士 男
Lv.1
スキル
武装破壊 自動回復(小) 鑑定 オーバーセンス カウンターアタック 能力超向上 騎乗 交渉術 アイテムボックス 剛力 硬質 瞬発 魔法軽減
これが俺のスキルなのだろう、この世界の基準がどれほどなのか分からないがそんなに大したスキルではないだろう。
そう思っていたのは俺だけのようで・・・
「おぉ、なんというずば抜けたスキルなのだ!、上位スキルだらけじゃないか!」
「は?、そうなんっすか?」
そう言いながら隣の学生のスキルを確認すると・・・
佐藤 義昭
勇者 男
Lv.1
スキル
隠蔽 鑑定 剣技 火魔法 水魔法 風魔法 土魔法 光魔法 アイテムボックス
ん?、なんかおかしくね?
あっちの職業『勇者』なのに俺の職業『拳闘士』なんだけど、しかも魔法とか覚えてるし。
でもスキル的には俺のが上なのか・・・え、王が言ったのって俺?
いやいや職業も向こうは勇者なんだし多分向こうの奴のことだろう、そう思っておこう。
「おいおい勇者より拳闘士の方が強そうだぞ、どうなってんだよ」
「知らねぇよ、召喚したのは勇者なんだろ?、あっちはなんか違うんじゃないのか?」
「おいてめぇら聞こえてんぞ」
周りの兵士が静まり返った、この雰囲気嫌いなんだよなぁ。
「で、王様よぉ具体的には俺らは何すりゃいいんだ?、魔王討伐はわかったが漠然としすぎてるぜ。」
「君たちには1週間から2週間程この城で生活してもらうこととする、その期間でこの世界の常識、金銭感覚、政治関連の最低限の情報を集めて欲しい、この世界にはやくなれるためにもな、あと君たちには城内への自由な立ち入りを許可しよう」
たしかにこの世界のことをなんにも知らないのだから色々と情報を集めるべきだな。
「んじゃま、しばらく厄介になるぜ、部屋は勝手に借りていいのか?」
「構わないぞ、なにか困ったことがあれば周りの兵士に伝えれば役に立つはずだ」
「それじゃあ同じ仲間なんだし、よろしくね?」
そう言いながら佐藤が俺の肩に手を置いた。
バシッ
「触んな、お前みたいなやつと一緒にすんな俺は俺で勝手にやらせてもらうからな」
周りの兵士や王は驚いたようだったが俺は違った。
(こいつの目は嫌な目してやがる、相手を利用して捨てるような奴の目だ)
俺はこいつからはそういう雰囲気を感じ取った。
王のいる部屋から出てすぐに兵士が2人待機している。
「おい、空いてる部屋を一つ見繕ってくれ」
兵士はそのまま空いてる部屋へと連れてきてくれた。
「何かありましたら私どもへ声をかけてください」
そう言うとまた持ち場に戻ったようだ、連れてこられた部屋は割と豪華なようだった。
とりあえず寝て、明日から情報収集だな。
こうして異世界へ飛ばされて最初の1日は終わった。