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悪魔のスイング

この小説はフィクションです。実在の人物、及び団体とは一切関係ありません。

 俺は強豪私立の野球部に特待生で入った。粉骨砕身、努力してエースナンバーを勝ち取った。


「ハァ、ハァ……」


 そして今、このマウンド上であとワンアウトだけ取れば、栄光を……。甲子園への切符を手に入れるところまで来た!


最上もがみ、あと一人だ!」

「満塁だが、最後は安牌アンパイだ! 今大会まったく当たってないぞ!」

「気合いで乗り切れ! こっちには三点差がある!」


 そうだ、こっちには三点のリードがある。大丈夫……9回表、2死満塁。この打者での逆転パターンは、満塁ホームランしかない。


 こいつの打率は二割に満たない。この局面でホームランが出るなんて、小数点以下の確率だろう。勝てる!


『7番、レフト、……君』


 ウグイス嬢のアナウンスで、奴が打席に入る。くっくっく、華麗な※ドアスイングを見せてくれよ?

 俺はランナーを気にせずノーワインドアップの体勢に入った。


『さぁエース最上、甲子園へあと一人、今ゆっくりとしたモーションから……』


 見てるか学校の連中、これが俺達の栄光の……。


『投げた!』


 架けは……。


『打ったー!』


――インサイドに決まった俺の渾身のストレートは、今までとは別人の様に鋭くなったやつのスイングに捉えられた。


 って、は……はぁぁぁ!?

 ちょっとまて、今俺のモノローグがいい感じに決まったのに! いや、それよりもこの角度……不味い!


「まて、行くな! 何でお前、今まで全然打ててなかったじゃねーか!」

 

 だめだだめだ! 頼む、頼むからフェンスだけは! フェンスを越えるのだけは許して!


『入ったぁー! 何と!この局面で!まさかの! 逆転満塁ホームラァァン! これは悪い夢以外の――』


 馬鹿な……馬鹿な!

 悪魔か奴は……。噂には聞いていた。得点圏でのみ力を解放する悪魔の様なクラッチヒッター……。

 ニコリともせずにベースを一周している、あいつがその男だったのか―――――!


「何者なんだお前はーーーー!!」


 残念ながら、これは俺の、最上雄大の物語では無かったらしい。




 

※ドアスイング……バットが遠回りな軌道を描く、ドアを開ける様なスイングの事。ボールが飛びにくい。

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