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田中 直人という少年

俺の名前は田中(たなか) 直人(なおひと)

真面目で真っ直ぐな人間になるようにと母親が付けたらしい。

付けたらしいと言うのは、この話は親からではなくばあちゃんから聞かされたからだ。

小さい頃から両親と過ごした記憶はほとんど無い。

ばあちゃんと2人だだっ広い家でずっと暮らしてきた。

無駄に広くて孤独ばかり感じさせるこの家は俺にとって地獄のような場所だ。



世間一般的にうちは”金持ち”に分類されるらしく、金で買えるものは欲しがれば何でも手に入った。

そんな環境で育ったせいか俺はいつも勝気でわがままで目立ちたがり屋だった。

体も大きく力も強かったから小学生になってからはすぐに学年の中心になった。

いわゆるガキ大将ってやつだ。

時にはケンカもしたが、力で従わせたわけでもなく俺にはたくさんの友達がいた。

というより、いろんな奴に話しかけて友達になろうとした。

家ではいつも1人か、ばあちゃんと2人だけだったからたくさんの人に囲まれていたかった。

毎日友達と日が暮れるまで遊んで過ごした。


そんな風に友達と楽しく過ごしていた小学生時代とは打って変わり、中学生になってからは他人を力で従わせることが増えた。

もともとわがままな性格もあり思い通りにならない奴が気に入らなかった。

何より自分の力だけで他人を屈服させることに快感を覚えるようになっていた。

中学3年になった頃、俺の周りには友達ではなく恐怖から俺に従う奴らしかいなかった。


そんな俺に絶望したのか、両親はたまに家に帰ってきても俺と目を合わせることすらしなくなった。

まるで何もいないように、自分たちの中から俺という存在を消し去るかのように。


多分あれが最後のきっかけだったんだろう。


高校生になってすぐ、力と恐怖でクラスを支配した。

そして支配した奴らを使って学年も自分の支配下に置いた。

もう他人を支配して自分の思い通りに動かすことに違和感も疑問も何一つ感情的のものを持たなくなった。

陽が昇り沈むように、生き物が呼吸するように。

俺にとってそのくらい当然のことになっていた。


誰も俺に逆らうことはない。

もう自分でも止めることができなくなっていた。

俺は”独裁者”そのものだった。


俺の周りには常に俺に従う奴らがいる。

小さい頃、いつも望んでいたようにたくさんの人に囲まれている。

けど、俺の中の何かが満たされることはなかった。


本当は分かっていた。


俺が欲しいのは”友達”だったんだ。


昔から望めば何でも手に入った。

でも、もう”友達”は手に入らないんだろうな。

俺の周りには俺に従う奴らしかいない。

誰も俺に逆らわない。

きっとあいつらは俺のことを見てはいない。


俺は”孤独”という地獄を自分自身の手で作り上げていた。





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