白刃
白刃は何人もの身体を斬った血により染め上げられていた。
「――我らの血に染まったその刃によって、その身を滅ぼす事を、我らはこ、う」
最後の力で呪詛を吐きながら白髪混じりの老婆は絶命した。
斬る度に血を払うが、追いつかず刃先から血が滴り、その周りには固まり始めた血の溜まりもでき始めていた。
六人の白銀の鎧兜を着た兵士の返り血も乾き始めいた。
六人の兵士たちは白刃を身体から引き抜くと、背後に用意されていた黒の棺桶の中に遺体を丁寧な扱いで収めていく。
黒衣を着た者たちが素早く一輪の花を手向けて、蓋を閉め数人で担ぎ即席の階段を駆け上がる。
目の前の扉が上にせり上がり、人影が現れた。
それらは、老人や女性、子供など老若男女だ。
首に着けられた首輪が独りでに、扉よりも前へと引っ張り兵士の前へと出た。
「や、めて。お願いっ!」
膨らんだ腹を守るようにして、抱え込み涙を流して兵士に訴える声は明らかに女性。
兜の隙間から見える兵士の眼に感情が見られなかった。
六人の兵士は、同時に身体を斬る。
「わたし、あか……」
兵士の肩口を掴んで兜に向かって、吐血し女性は絶命した。
「……」
六人の兵士は、一人斬る度に互いを見つ合いその覚悟を目線でしかめ合う。
迷いが生じて、相手を殺し損ねたその時、兵士を殺すため。
(この国の平和のために)
兵士たちは棺桶に彼らを収めていく。
相手に敬意を払い丁重に扱うこと――それが今の兵士に出来る唯一のことだった。