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39話 Drivin' Through The Night

 46日目



「あああ…疲れた……」


 トリ達の頑張りによって、陸地だと4日かかった移動時間がわずか1日で住んだ。やっぱり飛行機って偉大だね。頑張ってくれたトリさん達に後で美味しいものをごちそうしてあげよう。


「ここがユグドラシルですか。良いところですね」


「今日からここが、フェンリスの暮らす国です。楽しく皆で国を大きくしていきましょう」


「私達は番いなんですから、敬語はやめてください。どこかよそよそしい感じがして寂しいです」


「え、あ、はい」


 年上には逆らえません。というか、フェンリスもスタイルいいな。今んところ一番スタイルがいいのはカンナだけど、フェンリスはなんというかこう、大人の色気的なものがすごい。


 番い。フェンリスの色気と相まってそこはかとなくエロチックな響きに聞こえますなあ。大人のお姉さんに食われる俺。……うーん、そういうのも悪くないな。


「とりあえず、腰を落ち着けたいのですが、私達はどこにいけばいいのですか?」


「えとね、今俺の家の近くに集合住宅を建築中なんだけど、まだ出来てないからとりあえずはその辺に沢山ある家を自由に使ってもらって構わないよ。希望があれば新しく家を作る事も出来ますからお好きにどうぞ」


「敬語」


「え?」


「また、敬語になってます」


「ああ。変だな。いつもは敬語なんて使おうと思っても使えないのに、どうもフェンリス相手だと使っちゃうみたいだ」


「ふふ。その内、イヤでも使わないようにしてみせますわ、旦那様」


「へ? ひょっとして旦那様って俺の事?」


「ええ。私達は番いですから」


「え、えーと。騎士長!」


 俺はなんとなく気恥ずかしくなって地面に座って水を飲んでいた騎士長に声をかけた。あのままでは色々な意味でやばい。


「あん?」


「こ、この後の事を話し合おう!」


「お、おう」


「あらあら。それじゃ、私は群れの皆にさっきの事を伝えて来ますね」


「……行ったか。やばい。妙な性癖が目覚めそうだ。いや、ある意味健全か?」


 アンジェに対してはご主人様、カンナに対してはヒモ。そして、フェンリスに対しては年上のお姉さんに可愛がられるような感覚。ご主人様やヒモに比べればマシ……か?


 いかんな。どんどんと俺という存在がなくなっていっている。このままではヒモでご主人様で美人なお姉さんに可愛がられるなどという究極のダメ男が出来上がってしまう。


「1つ教えてやろう。やばいのはお前だ、公平」


「へ?」


「後ろを見ろ。お前がフェンリス相手にデレデレしてる内に物は壊れるわトリは焼き鳥になりかけてるわで大変な事になってるぞ」


「でえええええ! やめなさい2人共! 物壊しちゃダメ! トリ焼いたらダメ!」


 ハーレムってメリットだけじゃないのね。このままじゃ血が流れる。というか俺が刺されて中に誰もいませんよエンドになりそう。


 いや、それならまだマシか。アンジェ達は皆人の(ことわり)から外れてるから万が一ケンカでもしようものなら妖怪大戦争のような有り様になってしまう。……やべえ。


「ふ……。なんでもいいから俺も可愛い嫁さんが1人欲しいぜ」


 俺は思う。騎士長は綺麗な嫁さんもらうよりも先に頭が綺麗なザビエルハゲになる方が早い、と。





「はい。それでは第2回偉い人会議を行います」


 今回、新しく鳥人族とフェンリルという新しい部族がユグドラシルの住人になったので、国名を決めた時のように各部族の偉い人達を集め、ユグドラシルの今後を話し合おうという事で会議を開いた。


 場所は以前のような青空の下とは違い、屋根も暖炉もついたしっかりとした場所だ。前回を踏まえて、俺はここを発つ前に作るよう命じていたのだ。


「まずは、作業の進捗状況をお互いに確認しましょう。フェンリスと鳥男は、入ったばっかりでよくわからないと思うけど、とりあえず聞いていて。今回はあなた達にも関係のある事だから」


「わかりましたわ」


 そう言って俺に微笑みかけるフェンリス。花が咲くような笑みとはこの事をいうのだろう。鼻の下を伸ばしかけたが、アンジェとカンナに不穏な空気を感じ取ったので強引にかっこいい顏を取り繕った。


 それを見た騎士長がニヤニヤしていた。なんかムカついたので、とりあえずメアリーに髪を抜かせた。太陽を反射して光り輝くハゲになっちまえ。


「じゃあまずはわしからじゃな。畑の方はほぼ耕し終えた。種も蒔き終えたが、これから冬だからな。成長の早い作物しか採れないな」


「家畜の繁殖はどうなってる?」


「急造で牛小屋とかを作ってみたが、お前が期待してるような結果にはならんだろうな」


 ふむ。やっぱりがっつりと管理体制を整えた家畜小屋を作る必要があるな。このまま冬が来てしまったら繁殖なんて夢のまた夢だ。多分、今年は無理だな。家畜の繁殖は来年に期待しよう。


「わかりました。じゃあ次はジュースさん」


「モントーネの連中と対して変わらん。黒色火薬だったか? あれを作る傍ら畑を耕してる。生産量はお前も知っての通り。問題はないはずだ」


「ですね。ではジュースさん達は今後も黒色火薬の量産をお願いします。次はエノキ」


「おう。お前さんのおかげですっかり回復したでな、今はスフィーダの連中と一緒に鎧やなんかを作っとるぞ。だがあれだな。やはり人間の作る物はわしらの物と比べて精度が粗い。おまけにいまいち一緒に作業がしづらい。わしらと早さが違い過ぎる」


 そりゃ鍛冶の王様ドワーフと比べたら人間なんて子供だろうな。人間は鍛冶作業から外すか。聞いた感じだと彼らの足手まといにしかなってみたいだ。


「わかった。人間は外すから、エノキ達の好きなようにやってくれ。足りないものがあれば用意するからいつでも言ってくれ。それと、君達にはやってもらいたい事がある」


「やってもらいたい事?」


「そ。俺と一緒に新武器の開発をしてほしいんだ。色々とアイデアがあるから楽しめると思うよ?」


「なんじゃ難しそうなもんを作らせそうだな。腕がなるな。どんと来い!」


「頼もしい限りだ。残ったのは温泉か……。これはいいや。しばらくは一般開放って事で」


「温泉があるのですか?」


 フェンリスが食い気味に聞いてきた。


「あるよ。ここからちょっと行ったところにでっかい温泉があるんだ」


「私達、温泉というものは知っていたのですが、実際に入った事がなかったのです。いつもは水浴びで済ませていたので、楽しみですわ」


 水浴びて。あんなクソ寒いところで? 彼女達にしてみれば普通なのかもしれないけど、人間がそんな事したら凍死してまうがな。


「後で好きなだけ入るといい。で、フェンリルと鳥人族の仕事だけど……。トリの仕事はもう決まってるんだけど、フェンリルが決まってないんだ。何がいい?」


「えええ……。私達またなんかやらされるんですか?」


「当たり前だろう。働かざるもの食うべからず。大丈夫だ。トリさんの仕事は空を飛ぶ事だろう? 出来るさ」


「あああ…。嫌な予感しかしない」


「話しの腰が折れた。フェンリス、どうするか決めた?」


「そうですねえ……。私達はやはり、狩りでしょうか」


「狩りか……。うん、いいね! ドワーフが良い武器作ってくれるはずだから、それを使って俺達の分も獲物を狩ってきてくれ」


 よし、大まかな事は決まった。こうして少しずつ国としての基板を作っていく。いい感じだ。


 後は……ちょっとのスリルを味わいたな。最近こっちが強くなり過ぎて一方的な戦ばかりだからな。折角国っぽくなってきたんだ。合戦と洒落込みたい。


えびせん美味しい

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