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38話 イマージュな関係

まだフェンリスに会えるのは、どうやら俺だけらしい。初めてここを訪れた時のようにフェンリスのいる部屋に行けるのは俺だけだった。


「それにしても――」


 未だにこの光る壁に感じる違和感を拭い切れない。ハウトゥーファンタジーで調べたところ、壁に含まれる輝光石が原因でこの状況が生まれているらしい。


 輝光石。その名の通り光り輝く石。あまり採れる鉱石ではないようだが、鳥人族の群れでも見た辺り、この辺は産出地域なのかもしれない。


「あら。ここに来たという事は……」


「はい。俺は約束を守る事に定評があるんで」


「すごいですわ。まさか2日で全てを終わらせるなんて」


「やる時はやるが源氏名なんで」


「ふふふ。さて、それでは本題に移りましょうか」


 そう言ってフェンリスは表情を少し固めのものにした。話題の流れが移民のものになるであろう事を察知した俺は、頭のスイッチを切り替えた。


「私達があなたの国に住む上で、理解してもらわなければならない事が多々あります。第一に覚えておいていただきたいのは、私達はフェンリルであるという事です。どれだけ私達があなた方人間に姿形が似通っていても、やはり、違う部分というのは出てきてしまいます。それを頭ごなしに人間の理屈で押し通さないでほしいのです」


「ああ、そうか。最初に説明しておけばよかったな……」


「どうされたんですか?」


「いや、俺の国――ユグドラシルは他部族連合国なんですよ。今の時点で既にエルフとドワーフが一緒に生活してます。もちろん人間も」


「まあ。それはすごいですね。部族同士の争いはないんですか?」


「今のところはないです。各部族の一番偉い人と積極的に関わるようにしているので、何かあればすぐにわかります。おまけに、部族ごとに得意とする作業を任せているのでどんどん急成長してます」


 ユグドラシルのインフラはすごい速さで成長している。生活に欠かせない食料に関しては、モントーネ村とシャラの協力によって作物の栽培、家畜の繁殖共に順調に進められている。この調子でいけば、ウォームに頼らずとも自給自足が出来るようになる日も近い。


 外貨稼ぎにはドワーフ達がウォームに作ってもらった最新の鍛冶工房で戦に必要な武器や鎧を作ってくれる。これを他国に売りさばけばいい金になる。


 娯楽施設だって偶然とはいえ明るい展望が見えてきている。温泉を目玉に観光地を作れば他国から人を誘致出来る。そうすれば経済は更に回る。


 懸念材料があるとすれば、水の不足と貨幣経済の確立が未完成な事か。前者に関しては近くの川に水車なりを作ってユグドラシルまで水を引けばいいが、問題は後者だ。


 現在ユグドラシルでは貨幣経済という概念がほぼ無いに等しい。いや、あるにはあるが……やっぱりないと言った方がいいかもしれない。


 住民がユグドラシルに無いものを欲しがれば、スフィーダ、ウォーム両国に顏がきく俺がどちらかにいって貨幣以外のものと交換してもらうという、物々交換に近い事を行っている。主な取り引き材料は俺の知恵だったりするんだが、それは別の話だ。


 いい加減、貨幣経済に切り替えていかなければ国としての限界を迎えてしまうな。いい機会だ。何か案を考えておくとするか。


「では、私達がユグドラシルに移住した場合の役割は何になるんでしょうか?」


「そうですねえ……やっぱり狩りとかの戦闘関連ですかね」


「わかりました。では、次は待遇問題だけですね」


 まだあるか……。狼は用心深いというけれど、それはフェンリルにも当てはまるようだ。俺としては早いとこフェンリスちゃんをハーレムに加えたいんだが……。


「すみません。私も群れの長ですので」


 フェンリスは俺の心の声を聞いたかのような反応をした。彼女の苦笑いにつられて、俺も苦笑いで答えた。


「いや、わかりますよ。トップとして当然の対応です。それで、待遇でしたね。何がお望みですか?」


「衣食住はもちろんの事として、自由恋愛を認めてください。フェンリルは男が生まれないのです。なので、毎年時期がくると人間の男の人をさらっていたのですが――」


 そういえば、フェンリルは女系だったな。男が生まれないとまでは知らなかったけど。というか話しの流れが……


「折角の機会なので、群れの皆に恋愛というものを体験させてあげたいのです」


「ああ、全然構いませんよ。と、いうか元々ユグドラシルでやったらダメな事のが少ないですしね。大抵の事は大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。では、最後に。私にあなたの子を産ませてください」


「へ? 俺?」


「はい」


 いきなり過ぎて一瞬頭が真っ白になったぞ。いや確かに元々フェンリスちゃんは俺のハーレムに加える予定だったけどさ。あっちからこうも直接言われるとは思わなかった。とりあえず。


「なんも言えねえ!」


「優秀なオスにメスが惹かれるのは当然の事。妾でも構いませんわ。世継ぎが……私は世継ぎが欲しいのです」


「う、はい。わかりました……」


 1つわかった事がある。俺は自分からガンガン攻めるのはいいけど、攻められるのには滅法弱いようだ。


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