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34話 太陽曰く燃えよカオス

おっさん書きたい。

39日目


 昨日助けだしたドワーフ達をユグドラシルに連れ帰った。再度空腹を訴える彼らに流動食を与え、ばっちかったので全員アンジェが八つ当たりで発見した温泉に入らせた。


 そして、ものはついでという事で俺もドワーフ達と一緒に温泉に入る事にした。サービスシーンだぞ? ほら、喜べ。


 服を脱いで温泉に入ってすぐに見覚えのあるドワーフが俺に近づいてきた。確か、昨日泣いてたやつだな。


「ほんっとうに世話になっている!」


「いやいや、こっちとしては当然の事をしているだけだよ。君達にはこの後せっせと働いてもらうからね。先行投資ってやつだ」


「せん……なんじゃそりゃ。まあいい。わしらは生活が保証されるのであればなんでも作るぞ」


「助かるよ。ところで、君の名前は?」


「わしはエノキじゃ。お前の名は?」


「公平。里中公平だ。よろしく」


 俺達は温泉に浸かりながら固い握手を交わした。これぞまさしく裸の付き合いってやつだ。イカすぜ!


「で、だ。わしらは何を作ればいいんじゃ?」


「んー。君らは誰よりも冶金に長けているんだよね?」


「そうじゃ。わしらはどこの誰よりもいいモノを作れる。命にかけて保証する」


「そいつは都合がいい。最初は普通に武器とか鎧とか作っててくれるだけでいいんだけど、その内今までになかった特別なものを沢山作ってもらおうと思ってるんだ」


「特別なもの? なんじゃそりゃ?」


「ま、それはおいおい伝えるよ。まだ働く必要はないからね、万全の体調になるまでは食って寝て温泉入ってまた寝てを繰り返してていいから」


「お前には本当に世話になる。約束しよう。わしらは絶対にお前を裏切らない!」


「助かるよ。それじゃ、俺はお先に失礼するよ。俺達はまたここを発つ。俺がいない間は村長のじーさんに指示を仰いでくれ。俺から伝えておくから」


「わかった。責任を持って他のやつらにも伝えよう。気をつけてな!」


 俺は風呂からあがり、じーさんにドワーフ達の事を伝え終えた後、いつものメンバーを伴ってユグドラシルを後にした。




 43日目



 ユグドラシルから北へはるばると。道中現れる魔物を蹴散らし、やっとフェンリルがいる地方に辿り着いた。ひたすらに移動移動の毎日からやっと解放されると思うとテンションも上がるというものだ。


 だが、テンションが上がったところでどうしようもない事もある。


「くそ寒いよおお!」


 なんだってこんなに寒いんだ。そりゃあ、ユグドラシルがある地方も秋が近づいてきているのは肌で感じていたけどさ、これもう完全に冬的な寒さだよ。道中で蹴散らした魔物の毛皮を剥いで作った急ごしらえのコートが無かったら今頃凍死してるっつーの。


 しかも、この辺は全然人間の匂いがしない。あるのは亞人と魔物の匂いだけだ。失敗したなあ。もうちょっと調べてから来ればよかった。後悔しても仕方ないけどさ。


「んな事言ったってしょうがないだろ。もうちょってフェンリルの群れに着くんだから我慢しろよ」


「なんで騎士長はそんな平気な顏してるんだよ」


「日頃の鍛錬がものをいう。お前も鍛えろよ。筋肉は裏切らないぞ?」


「頂いたご意見を深く受け止めて、前向きに検討させていただきます」


 なんてどこぞの政治家が言いそうな返事をしつつも、俺は別の事を考えていた。即ち、フェンリルの群れに着いた後の事だ。


 岩場が増えたせいで馬車での行進が困難になったために、馬車を食料と共に置いてきてしまった。周囲の状況的にすぐに奪われる事はないだろうが、悪い可能性の芽は早い内に摘んでおきたい。


 そして、これが最大の問題だ。フェンリルだって群れを形成して人間のように生活しているのだ。急に来た、それも人間に今日からあそこに住んでくださいと言われて、はいわかりましたなんて言う訳がない。言い切ってもいい。


 そこで俺の出番という訳だが、俺はフェンリルを戦闘部族に近いものと見ている。だから、仮に交渉の段階に移ったとしても最後にものをいうのは恐らく武力だ。


 勝った方が負けた方の言う事を聞くという、ある種小学生みたいな話しだが、十中八九そうなると見ていいだろう。


 そうなった時のために、間違ってもアンジェやカンナが負ける事はないと思うが、念には念を入れて、俺は今回もレイジングブルと黒色火薬爆弾をバレない程度に持てるだけ持ってきていた。


「止まれ」


 っとお。そうこうしている内にどうやらフェンリルの群れの入り口に着いていたようだ。人2人が通れるか通れないかぐらいの大きさの穴が空いた、洞窟のようなものが見える。見た感じ、結構奥は深そうだった。


 てかかわええ。門兵の子も狼のもふもふした耳ついとる。


「人間がこんなところに何をしに来た?」


「んー。そうだなあ。あなた達の族長? とお話をしに来ました」


「お話? 怪しいな。何が目的だ」


「だから言ったじゃん。お話しに来たって」


「ダメだ。お前のような怪しい人間をフェンリス様に会わせる訳にはいかない」


「まあまあこれあげるから、一応聞くだけ聞いてきてよ」


 俺はそう言って家から持ってきたきびだんごと、ウォームから供給された干し肉を手渡した。


「……む。聞いてくるだけだぞ?」


 ちょろい。きびだんごで言う事聞くって、どうしても桃太郎を思い出すな。


「聞いてきた」


 意外と早かったな。ここを離れてから5分も経ってないぞ。まさか聞いた振りだけして追い返すつもりなのだろうか。そう思ったが、次の言葉で俺の考えは否定された。


「いいそうだ。付いて来い」


 これは本当にちょろい……のか? なんかきな臭い匂いがしてきたぞ。そう思いつつも、事ここに至って引き返すのはチキンだ。そう自分に言い聞かせ、俺達は洞窟の中へと足を踏み入れた。


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