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夜中の騒動

「うわぁぁぁぁん!!」


 夜もふけてきた頃、子供の叫び声と共に店の扉が開いた。

 おかしいな? ちゃんと店の看板は『Close』にしたはずなんだけど。


 アタシはミリアと一緒に、突然の来訪者を確かめに行く。

 電気をつけていない薄暗いカウンターの下、そこには小さい人影。


「夜に出歩くわるい子は誰だー?」


 冗談めかして言ってみる。


「カナメおねえちゃぁぁぁぁん!」


 アタシの姿を見つけたらしい子供は泣きながらアタシに飛びついてくる。半分出ている太ももの辺りに軽い衝撃があった。

 ていうか……


「あれ? セラちゃん?」


 ミリアの戸惑った声。

 どうしたんだ? セラがこんな時間に来るなんて珍しい。泣いているせいか顔が赤い。


「パパがぁ! パパがぁ!」


「まあとりあえず落ち着け。ほら、アメでもなめろ」


 泣いているセラの口にイチゴ味のアメを投げ入れると、まだ少しぐずっているけど泣き止んだ。

 不機嫌なのは変わらないのか、その唇は少しとがってる。


 セラのお父さんって確か騎士をしているんだったよな。怪我したとかで薬が必要だったらロメールさんも一緒に来るはずだしなぁ。


「ねえセラちゃん。パパがどうしたの?」


 ミリアはしゃがむと、セラに視線を合わせてたしなめるようにその小さな頭を撫でつつ聞いた。

 うーん、ミリアは近所のお姉さんって感じだ。アタシはどちらかというと近所の子供にはガキ大将っぽく思われている節があるからなぁ。自分ではそんなに子供っぽくはないと思うんだけど。


「パパ、お仕事だって、帰ってこないって」


 その後もしばらくセラの話を聞いてみると、どうやらセラのお父さんは騎士としての急な仕事が入ったらしくしばらく家に帰って来れないらしい。なんでも明日は一緒に夕飯を食べる約束をしていたそうな。

 お父さんが帰って来れないということをセラはロメールさんから聞いて、家を飛び出してきたらしい。


 しかし騎士としての急な仕事かぁ……なんでもご近所さんの間では魔族の襲撃が噂されているらしいから(ミリア談)それも関係あるんだろうか? 王城に届けられた魔族からの手紙には『私の過去を取り戻しに行く』とかなんとか書いてあったらしい。

 もう訳分からん。


 セラも落ち着いたようで、おとなしく椅子に座って飴をなめている。泣き疲れたのか、まぶたもとろんとしている。まあ夜だし、基本的にいい子で聞き分けの言いセラなら普段はもう寝てるだろう時間だもんな。


 ルルーもシロも連れてきていないから、いきなり家を飛び出してきたんだろう。たぶんロメールさんも心配してる。


「なあミリア、悪いんだけどロメールさんのところに一緒に行ってくれないか? セラを連れて行こうと思うんだ」


「うん。わかったよー」


 気付けばセラはすやすやと寝息を立てていた。

 アタシはセラを背負うと、起こさないようにそっと立ち上がった。


 ふわり。


 ミリアが自然とブランケットを掛けてくれた。夜は冷えるから、セラが風邪を引かないようにっていう配慮だ。アタシにはもったいないくらいよく出来た幼馴染だよ。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 夜道をミリアと二人歩く。

 星明りが綺麗な、雲ひとつない満月の空。


 セラが寝てるから、アタシもミリアも無言だ。

 アタシがミリアを見ると、ミリアもアタシを見て微笑んだ。


 一緒に迷宮に潜っていたときはお互い緊張感からの無言だったから、こういうのはなんか新鮮だ。二人一緒のときは大体何か喋ってたからなぁ……

 今思えばくだらないことばっかり。でも、それもいい思い出だ。


 そんなことを考えてたらセラの家へ着いた。玄関先には、ロメールさんが泣きそうな顔で立っている。ロメールさんのあんな表情は始めて見た。やっぱりセラのことが心配だったんだな。

 アタシたちの姿を見つけると、あわてたように駆け寄ってきた。


「セラ!」


 すやすやと寝息を立てるセラの顔を見ると、ロメールさんは安心したように息を吐いた。


「泣きながら店に入ってきたんで何事かと思いましたよ。今は泣き疲れて寝ちゃったみたいです」


「よかった……」


「夜だからあんまり良くないかなーとは思ったんですけど、泣き止ませるのに飴なめさせちゃって……大丈夫でした?」


「ええ、気にしないで。でも夜中にごめんなさいね」


「ロメールさんこそ気にしないでください。アタシも泣き止ませるのになりゆきとはいえ家庭のこといろいろ聞いちゃいましたし……」


「そう……」


 そういうとロメールさんは考えるような仕草をし、実はね。と前置きをする。


「あの噂、事実らしいのよ」


「あの噂って?」


「魔族の件。私も旦那から聞いた事だから詳しいことは知らないけど……」


 魔族ってことは、王城に手紙が来たこととかか。それが事実なら近々襲撃とかあるかもしれないって事なんだよな。なんだか嫌な予感がする。


 何もなければ良いけど……


 カンカンカン!


 夜の王都に、不快な金属の鐘の音が木霊する。


「敵襲ーッ! 敵襲ーッ! 」


 ヤな予感は何時だってクソだ。それを意識した途端に起こる。


 遠くの城壁が明るく照らされていた。



展開急すぎましたかね?

でも過去の伏線回収はやっておきたいからなぁ……

いちおう予定通り。


ご意見ご感想待ってます。

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