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遭遇

 ミリアの剣閃と共に、半人半牛の魔物が倒れる。

 三十五階で、ボスと思しき魔物。そいつを倒したら階段が現れた。


 ミリアがアタシに「ほめてほめて~」というように擦り寄ってくる。


「流石。ボスも含めてここまで全部一撃じゃないか」


「えへへ~」


 ソノアとシュウの二人と別れてから、ミリアは今みたいにやけに擦り寄ってくるようになった。二人だけなのがそんなにうれしいのかな。

 ほころんだミリアの顔を見ていると、アタシもちょっとはがんばろうと思えてくる。


「よし、じゃあ次の階からアタシもがんばろうかな。ミリアはアタシの後ろでゆっくり見ていてくれよ」


「うん! そうする!」


 そんなやり取りの後、アタシタチハ階段を降り次の階へと向かう。


 階段を下りてすぐ、蟹のような魔物が現れた。

 胴体と足は蟹だが、はさみだけ鰐の頭になっているやけに奇天烈なやつ。


 この階層まで来るとだんだん魔物もキメラじみてくるな。

 あの鰐の頭とかぐるぐる回るんだろうか? 気になる。


「あの魔物はシザーバイトっていうみたい」


 ミリアがポケットから手帳サイズの図鑑みたいなものを取り出して照らし合わせている。

 そんなもんいつ手に入れたんだ?


「さっきソノアから借りたの。奥に進むなら持っていたほうがいいって。攻略済みの51階までの魔物の情報が載ってるみたい」


 なるほど。便利だな。


 蟹のような魔物はアタシに鰐の頭を向けてまっすぐに走ってくる。

 蟹の癖に横歩きじゃないのか・・・・・・。


 アタシはとりあえず魔力障壁を張る。

 結界とか魔法で作り出した盾とかではなく、純粋な魔力による障壁。


 防御力とかそういうのは関係なく、一番簡単にはれるやつ。

 物理防御特化とか魔法防御特化のものにはかなわないけど、どちらも均等に防げるから緊急時に張るにもアタシとしては一番のオススメだ。


 鰐の頭が魔力障壁にぶつかる。

 よし、大丈夫。この程度のやつなら抜かれない。


 アタシは牽制に魔法で火球を放つ。

 相手の魔物も蟹の癖に結構すばしっこいから牽制程度の火球はすべて避けられてしまう。


 けど、次が本命だ。


 アタシの一番好きな魔法『スパイラル』

 

 螺旋状の薄い円盤の形をした魔法。

 どんな属性でも付与できるアタシのオリジナル。


 火属性なら傷口を焼き切り。

 水属性なら血液を流れに乗せて吸い出す。

 土属性なら蟻地獄のように敵を引きずり込む。

 風属性なら螺旋状のかまいたちが全身を切り刻む。


 ほかにもさまざまな属性で幅広い用途がある魔法。


 シザーバイトに向けてはなった『スパイラル』は火属性を付与してある。

 それはよけきれずに防ごうとしたシザーバイトのはさみを付け根ごと焼ききった。


 じゅぅっと焼ける音と共に、海産物のいいにおいがする。

 あの魔物、食えるのかな?


「キシャシャシャシャシャシャシャシャシャ!」


 はさみを焼ききられて怒り狂ったシザーバイトが、残ったもう一方の鰐の頭を振りかざす。


 でも、それはアタシに届かない。


 地面から生えた筍のような形をした岩の針。

 それがシザーーバイトの身体を貫通していた。


「うわー、しぶといねー」


 アタシの後ろでミリアが小さく口にした。

 魔物だけあって生命力があるのか、貫かれたまままだもぞもぞと動いている。


「まあ、すぐ終わるだろ」


 アタシとミリアはもぞもぞと動いたままのシザーバイトを放置して、先へ向かった。





 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 あのまま三十六階で何体かシザーバイトを狩ったころ。

 アタシたちの進行方向と逆の方向、つまり正面から集団が歩いてくるのが分かった。


 冒険者達だろうか?


 アタシとミリアはじっと前を見つめる。


「あ、あれ」


 ミリアが声を上げた。


「あのおっぱいはロロさんだよ!」


「・・・・・・は?」


「おーい。ロロさーん」


「その声、ミリアちゃん?」


 確かにロロさんの声だ。

 ということは、勇者パーティーかな?


 少し待っていると、暗い道から四人の影が現れた。


「こんにちは。お久しぶりですね」


 見覚えのある顔がアタシに挨拶をしてきた。

 こいつは勇者の・・・・・・えっと。


「ヒロトです」


「ああ、そうそう。勇者ヒロトだった。悪いね、忘れてたよ」

 

「あはは。気にしないでください」


 ヒロトが苦笑いをすると、間に金髪の少女が割り込んできた。


「もう、勇者の顔を忘れるとか信じらんない! それでも商売人なの?」


「いいってリューリ、誰だって忘れることはあるだろう?」


「でも・・・・・・」


「僕は気にしてないからさ」


 ・・・・・・えーっと、アタシのせい?


「今度はちゃんと覚えておきなさいよね!」


 はい。すみません。


「もう、そんなに強く言わなくたってカナメちゃんもミリアちゃんもちゃんと分かってるわよ」


 声のするほうを見ると、やけに存在感のあるおっぱいがそこにあった。


「あ、ロロさん」


「お久しぶりね、カナメちゃん。ミリアちゃんも」


「ちょっとぉ! なんでロロのことは覚えてるのよ!」


 リューリが叫ぶ。

 だけどアタシの代わりにミリアが答えた。


「・・・・・・おっぱいかな」


「くそう! やっぱりおっぱいの大きいほうが有利なのね!」


 リューリは悔しそうに地団太を踏んでいる。


「まあいいじゃないの。細かいことを気にしていると大きくなれないわよ」


「それはおっぱいのことか!」


「リューリ、年頃の女の子がおっぱいおっぱい言うんじゃないわよ。はしたないわ」


「ん~~~~!」


 その様子をほほえましく見ていたアタシの視界に、もう一人。髭の生えたシブい雰囲気のおじさんが壁に寄りかかって立っている姿が見えた。


「そちらの方は?」


「俺か? デダルだ。よろしくな」


 うわぁ・・・・・・シブい。

 なんというか、大人の男っぽくてかっこいい。


「カナメです。王都の端っこのほうで道具屋やってます。こっちの子はアタシの幼馴染のミリアです」


「ああ、ヒロトから話は聞いた。なかなかいい品を扱っているそうじゃないか?」


 何このおじさん、いいこと言うね。


「そのうち見に来てください。大体のものはありますから」


「ああ、そうさせてもらうよ」


 シブいなー。と思って見てたら、ミリアに太ももをつねられたので会話を早めに切り上げる。

 もう、痛いなぁ。


「ところで、カナメさんはどうしてこんなところにまでいるんですか?」


 ヒロトがアタシに問いかけてくる。


「ああ、ミリアの新しい剣を作ったからその試し切りに来たんだ」


 そう答えると、ヒロトはかなり驚いたような顔をした。


「それでこんな階層まで? すごいですね」


「そんなことないよ。アタシじゃなくて、うちのミリアが優秀だから」


「カナメだってすごいよー」


 ミリアが口を挟んでくるけど、とりあえずおいておく。

 アタシはミリアみたいに全部の魔物を一撃で倒せるわけじゃないんだ。


「ねえ」


「どうしました? ロロさん」


「どうせなら私達と一緒に行かない? いいでしょヒロト。この子達もこの階層まで来られる実力があるのだもの」


「彼女達がかまわないなら僕はいいですよ」


「じゃあそうしましょう」


 ・・・・・・マジ?


 ミリアの顔を見ると、ちょっとだけふくれっ面になってる。


「どうする? ミリア?」


「・・・・・・私は別に」


 いいのか悪いのかよく分からない回答が返ってきた。


 まあ今日くらい別にいいか。


「あー、いいですよ。一緒に行きましょうか」


「女の子が増えるの、うれしいわぁ」


 ロロさん、それが目的か。


「ヒロトに色目したら許さないかんね!」


 こっちはこっちでめんどくさそうだなぁ・・・・・・。


 ミリアはなぜかアタシの腕にくっついているし。

 同行するの、やめたほうがよかったかなぁ・・・・・・。











迷宮探索、勇者パーティーを交えてまだ続きます。


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