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ドジっ娘?

「おーい、いるかー?」

「こ、こんにちわー・・・・・・」


 店の扉をあけて入ってくるのは粗雑な冒険者風の体をした少年と、黒いとんがり帽子に黒のローブを羽織ったどこかあかぬけない少女。二人は同い年くらいだろうか。


「お、シュウじゃん。久しぶり」


 アタシは二人のうち見知った少年のほうに声をかけた。シュウはいつものように店の中の品物には目もくれず直接アタシのいる店のカウンターまでずかずかと歩いてくる。

 逆に少女のほうは店の中をきょろきょろと見回って、ポーションとかいろいろなものを手にとって難しい顔をしていた。


「カナメ、前にもらった錠剤型のポーションってまだあるか? 試作品っていってたけど、商品化したなら買いたいんだ」


 早々にシュウは会話を切り出した。


「ちょっと待て。店に来て早々それかよ。それよりもあっちの女の子は誰なんだ? この前はミリアにへたれてたくせにちょっと見ない間に随分なプレイボーイになったんじゃないか?」


 アタシが言うと、シュウは何事も無いように平然と言ってのける。


「ああ、ソノアのことね。この前パーティー組んだんだ。あいつは見た目どおり魔法使いやってるよ。それにカナメの考えてるようなことは何も無いぜ。お互いに利のある関係だからパーティーくんだだけだしな」

「へー」

「なんだよ」

「ほー」

「くどいな」

「ふーん」

「何が言いたいんだよ」


 アタシがからかっていると、自分の名前が出たのが気になったのかソノアと呼ばれた少女がとことことこちらに歩いてきた。

 アタシの店を見に来たご近所さんでもシュウみたいなクソガキでもない相手。

 この店創立以来始めての営業スマイルを浮かべてアタシは挨拶した。それに答えるようにネリンもアタシに挨拶を返す。


「えっと、ソノアです。よろしくお願いします」


 そう言って思い切り頭を下げたとき、ソノアはガツンとカウンターに頭をぶつけた。

 あれ、この子どっかで会ったっけ。


「カナメも会ったことあるはずだぜ」


 シュウが言う。そうだよなぁ。

 この印象に残るくらいのドジっ娘っぷり。


「もしかして、冒険者ギルドの受付さんですか?」

「えあ? え、あ! あのときの人!」


 ソノアも思い出したらしい。まあこの子が受付をしていたところに並んだ人なんて限られているだろうから覚えていても不思議じゃない。


「その節はご迷惑をおかけいたしました」


 こういうところは律儀な子だ。もうちょっと回りに注意を向ければなぁ・・・・・・。

 でも、どうしてシュウなんかとパーティーを組んでるんだろう。


「恥ずかしながらあのあとお爺様からお叱りを受けてしまいまして・・・・・・」


 淡々と、彼女は身の上を語りだした。

 聞いたことを要約すると、なんでも冒険者としてはじめからやり直して来いと言われたらしい。けれど自分のドジっぷりはギルド内でも有名になっていて、だれもパーティーに入れてくれなかったとか。

 そんな中、シュウがパーティーに誘ってくれたと。


 でも意外だな。シュウがパーティーにドジな人間を入れるなんて。アタシの記憶ではそういうの嫌う奴だったはずなのに。


「シュウさんは私にパーティーに入れる代わりに魔法を教えてくれって。これでも私中級魔法までは大体全部使えるんですよ。けどシュウさん私を依頼にはめったに連れて行ってくれなくて」


 ああ、そういうことね。

 お互いに利があるとかいっていたけど、シュウは魔法を覚えたい。ソノアは冒険者としてどこかのパーティーに入りたい。

 でもソノアはドジだから依頼には連れて行かずに自分は魔法だけを教えてもらっていると。


「シュウや、おぬしも悪よのう」

「は? なに言ってんだ? 言っとくけど俺は魔法剣の練習もかねて魔法を教わってるんだぜ。それにソノアを依頼につれてかないのはドジだってのもあるけど今はまだ俺の実力がソノアに追いついてないからだからな」


 うーんと。つまりどういうこと?


「これでもソノアは魔法使いとしては優秀なんだぜ。いざっていうとき守ってもらってたら借りが出来るだろ」

「シュウさん、借りだなんてそんな・・・・・・」


 まあ何でもいいか。

 というか、さっきから強烈な違和感があるのは何でだろう。

 ま、違和感の正体分かんないし気にしてもしょうがないか。


「ところでさ、まえに貰った錠剤型のポーションってある?」

「あれか? あれどうしても効き目が悪いから作るのやめちゃった」

「あれで効き目悪いって言ったら普通のポーションなんてただの水だよ。また作ってくれないか? 金はあんまり無いけどそこそこなら出せるからさ」

「やだよめんどくさい。どうせなら普通のポーション買ってかないか? 前の錠剤よりよっぽど効き目あるぜ」

「かさばらないからいいんじゃないか」


 そんなやり取りの末、結局五十ほどの錠剤型ポーションを作ることになった。一つ百五十クロン。

 なんだか口喧嘩に負けた気分だ。

 まあ普通のポーションを少し加工するだけだし、一つのポーションから二十の錠剤型のものが出来るわけだから利率はだいぶいいし、売れるならいいか。

 クソガキだけど久しぶりの客だ。

 一度は没にした錠剤型ポーションも、こうして売れるんだったら商品化計画を復活させようかな? 




 一話としては長かったので二分割にしてしまいました。おかげで少し短いですが続きは明日また更新します。


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