プロローグ
「あー・・・・・・暇だぁー」
アタシは椅子にもたれたまま、視線を天井に移して愚痴をこぼす。
思ったことがそのまま口から出てしまったのだ。暇すぎて。
アタシの名前はカナメ。道具屋の店主をやっている。そしてアタシの道具屋は、さっきの愚痴からも分かるように――流行っていない。店頭にきれいに並んでいるポーションや武器、防具の類は一週間前から配置も数も変わっていなかった。一応手入れはしているからその保存状態は良好。
アタシの手作りなんだから、そこそこの質も保証する。
けど、それだけじゃ客は来てくれない。
店を開くことはアタシの夢だった・・・・・・というよりも、実家が田舎(極)みたいなところだったから王都という言葉に引かれてアタシは家を飛び出した。田舎民に王都という場所はとても魅力的なのだ。
それが今から一年半前。アタシが十六になってすぐのとき。まぁ、本音を言えばあくせく働くのが嫌であのまま村にいたら確実に家を継がされることになる事が分かりきっていたので、逃げてきた。
行商人の人たちについてまわっていて護衛の人たちもいたから、かなり安全なたびをしてきたほうだと思う。
村を出てだいたい一年くらいして王都についた。それだけの距離があるのだ。
王都をぐるっと囲む城壁を見たとき田舎娘のアタシは、その大きさに感動して軽く泣きそうにもなった。
王都についてから、アタシの夢が叶うまでは早かった。村を出るときに貰ったいくつかのお守りの内の一つが超高価なものだったらしくとても良い値で売れたのだ。
お守りとは言っても幼馴染が狩った魔物の素材らしいので、もしかしたら滅多に姿を見せないレアな魔物だったのかもしれない。
貰ったものを売ってしまったからちょっとだけ罪悪感はあるけれど、おかげで店を構えることができたのだ。後悔はあんまりない。
おまけに素材を売った額の内の三分の一程度だが、少なくない額も残っている。
自分の店も持って、夢も叶いさあこれからだというアタシの王都生活だったけれどたった一つ誤算があった。
客が来ない。
別にアタシの店の評判が悪いとかそういうわけでもない。
立地が悪いのだと思う。
まず、人通りがそこまで多くない。おまけに王都とはいえ囲んでいる外壁を一周するのに馬でも三日かかるような広大な土地の端っこだ。
さらに良くなかったのは、一番近い迷宮からも半日はかかるという冒険者にあまり優しくない仕様。アタシの店はポーションとか武器とか防具とか、街中に住む人にはまず必要ないものばかり。
失敗したなぁ・・・・・・。
追い討ちをかけるように判明したのが、冒険者の動き。
それは、極力街には入らないというものだった。冒険者はその職業柄街の人に良く見られることもあまりない上に、宿は格安の街から離れたものを利用している。
自分たちの体についた血なまぐさい臭いを街にまで持ち込まないようにしようという彼ら自身のちょっとした配慮もあるらしいが、おかげでアタシはメインの消費者である冒険者を完全に取り逃してしまった訳だ。
つまりアタシの店は、王都の端っこで人通りも決して多くはなく、かといって街の中なため冒険者たちも近寄らない。そして街中であるということはアタシの売っている物を必要とする人はまずいない。
それを一言で表すと、こうなる。
「ひーまーだぁー」
店を構えて半年、今のアタシは十七歳と六ヶ月。店の場所を変えることも考えたけれどいかんせん資金が足りなかった。
けれど、食べるにはしばらく困らない。ご近所さんとも仲良くなったしなぁ・・・・・・。
結局、店頭にある道具はろくに売れない。
将来のことを考えて、ゆーうつになる今日この頃。
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なにぶん拙い文章なので、読者様方からの『ここ直したほうがいい』『こうしてほしい』とかすごく励みになります。
お読みいただきありがとうございます。