薬草狩り2
浜辺は明るく、風も心地よかった。
空は青く高く、海は少し緑みがかっていたが、とても澄んでいた。
白い浜辺には海草が確かに打ち上げられている。
この中に薬草が混じっているということなのか…。
「この辺りのはもう何度も見たから。
もっと向こうを探さなきゃ」
ハヌルは海岸線に沿ってどんどん歩いて行く。
白い砂浜はどこまでも続いてるようにみえた。
私はハヌルの後をついて行くだけだった。
しばらく歩くと、ハヌルは立ち止まり、足下にある海草を次々と指でかき分けた。
私はただ、立っていた。
「あった!」
ハヌルは小さな黒い玉を私に見せた。
直径5ミリ程度の、少し光沢のあるまん丸い玉だった。
「それが薬?」
私が尋ねると、ハヌルは海草の束を探りながら首を横に振った。
「これは薬草の種。
発芽までは10年以上かかるって言われてる。
この種を蒔いたら、明日芽が出るかもしれないし、10年後かもしれない。
でも、種があるってことは本体もあるってこと」
絡み合った髪の毛のような海草の中から見つかった5ミリほどの玉。
私もしゃがんで、海草を掻き分けてみた。
「リン、気をつけてね」
ハヌルは私にそういうと、海草を掻き分け続けていた。
海草の中には薬草らしきものは見当たらない。
「薬草ってどんなの?」
聞こうとしたとき、海草が手に絡んできた。
まるで意思を持っているかのように、腕に巻きついてきた。
払いのけようと、私はしりもちをついてしまった。
それでも海草は取れない。
そのまま腕を這い上がってくる。
「ハヌル!」
私は助けを求めた。
ハヌルはすぐに私のところに来て、海草をはがそうとしてくれた。
それでも海草は私の腕から離れない。
離れないどころか締め付けてきた。
「い・・・いたい!」
思わず声が出た。
ほんの少ししかないように見えていた海草が私の手を、腕を覆い隠している。
肩の辺りまで迫ってきた。
「助けて、ハヌル」
自分ではどうしようもなかった。
ハヌルがナイフを取り出して海草の上から私の腕を切りつけた。
ナイフの刃は、私の肌には届かず、海草だけを切り裂いた。
切り裂かれた瞬間、海草が私の腕を締め付ける力が少し弱まった気がした。
が、次の瞬間また締め付けてきた。
「ハヌル・・・助けて・・・」
海草のようなモノが私の首にまで届いた。
ハヌルはナイフを私の体にまとわりつくモノを何度も切りつけた。
何度目かに、モノは私の体から離れた。
開放された私は激しく咳き込んだ。
「う・・・」
ハヌルのうめくような声が聞こえた。
見ると、私にまとわりついていたモノが今度はハヌルを締め付けている。
「ハヌル!」
私は両手でハヌルからモノを引き離そうとしたが、まるで皮膚の一部のように吸い付き、ハヌルの肌とモノの間に爪の先すら入れることができない。
ハヌルは手からナイフを落とした。
私はあわててそれを拾ったが、ハヌルのようにモノを切りつけることができない。
ハヌルまで傷つけてしまいそうで。
「あかん!
ハヌルから離れて!」
私はモノに向かって心の底から叫んだ。