ログハウス3
「リン」
「え?」
私の答えに対して、目を丸くしたハヌル。
しばらくじっと私を見つめていたが、吹き出した。
「了解!リン!
人につけられるより、自分でつけた方がいいよね。
実は、私の名前も自分で決めたんだ」
ハヌルはテーブル越しに手を差し出してきた。
ハヌルの手と顔を交互に見ていると、ハヌルはテーブルを回って私の横に来て、私の手を取った。
「握手じゃん。
あらためてよろしく、リン!」
「よ・・・よろしく、ハヌル」
そうやって、私の名前はリンに決まった。
その後、私は小屋の裏にある井戸でぬれた服を洗い、外に干した。
ハヌルはその間に、出かけて食べ物を買ってきたようだった。
日が暮れた。
ハヌルは突き上げ戸を閉めた。
テーブルの上にランプ。
暖炉にも小さく火が入っている。
熱くもなく、寒くもなく。
「実は、ベッドってないんだよねぇ」
ハヌルが食事を終えて言った。
「いつもこのテーブルの上に丸まって寝てたから・・・」
「あ・・・ええよ、私なら。
床の上に寝るから」
「そういうわけにはいかないでしょ、お客人なんだし」
と、言うわけで、二人でテーブルをベッドがわりに寝ることになった。
それくらいテーブルは大きかった。
マットも毛布も何もない。
寒くはなかった。
でも、寝るときもナイフを近くに置いているハヌルが気になった。
信じられないようなことがあり、不思議な出会いがあり、眠れないかと思った。
意外にも私の寝つきはよかった。
疲れていたのかもしれない。
横になって目を閉じたとたん眠りについたと思う。
どのくらい眠っただろう。
天井を叩く音がした。
こんこん。
石をぶつけるような、ノックするような音。
そして、声が聞こえる。
「ハヌル、ハヌル、起きてくれ」
昼間に来たナムの声だ。
「ナム?まだ夜中でしょ?どうした?」
ハヌルが答えた。
人嫌いというナム。
私は息を殺していた。
「コマの、娘の容態がひどくなってきたんだ。
指先も足先も感覚がなくなってきたって言うんだ。
ハヌル、薬を頼む。
疲れてるのは分かってるが、明日にでも行ってくれないか」
声が震えている。
コマというのが病気の娘の名前なのだろう。
哀願している姿が目に浮かぶようだ。
「分かった、ナム。
夜が明けたらすぐに行く。
今夜一晩だけ眠らせて」
「分かった。
ハヌル、すまない。
コマが、コマが死んでしまいそうなんだ」
ザワザワッと音がした後、静かになった。
ハヌルがため息を一つついた。
「起こしちゃったね。
もう行ったみたいだから、ゆっくり寝て。
で、明日一緒に出かけよう」
「え?一緒に?」
聞き返したときには、すでにハヌルは寝息を立てていた。