ログハウス2
私はテーブルの下に潜り込んだものの、カップを床に落としてしまった。
青いお茶はすぐに床に染込んでいった。
コンコン。
天井から音がした。
石でもぶつけたような、ノックをするような、音。
「帰ってるよ」
ハヌルがノックに答えるように言った。
「どうだった?」
外から男の声がした。
「見つからなかった」
またハヌルが答える。
「そうか。今度はいつ行く?」
男の声が答える。
「2-3日したら行くけど、少し休ませて」
ハヌルが答える。
「時間がないんだ。頼む」
と、男の声。
「わかったから」
ハヌルが答えると、外の闇が消えた。
また光が部屋の中にさしてきた。
私はテーブルの下からハヌルを見上げた。
ハヌルは大きくため息をついてから、私に微笑みかけてきた。
「もういいよ、出てきて」
テーブルから這い出た私にハヌルが手を貸して、立たせてくれた。
「今のはナムって言うんだけどね・・・」
ハヌルの説明によると、ナムの娘が病気らしい。
治すための薬草を探さなければならない。
ナムはここの林から出て行けないため、代わりにハヌルが探しに出ているらしい。
「ナムは私以外の人を信用してなくて・・・。
あ、お茶、こぼしちゃったね」
ハヌルは私のカップに青いお茶をもう一度入れてくれた。
「ところで、なんて呼ぼうか。
名無しだと、呼びにくい」
やはり思い出せない。
なんて名前だろう、私は。
「自分で決める?私が名付け親になろうか?」
ハヌルがちょっとおどけたように言った。
自分の名前すら思い出せない私は微笑むことすらできなかった。
「んー。
いざ名前をってなると、思いつかないものね」
ハヌルは腕組みをして見せた。
1年前に同じように到着の浜辺にたどり着いたハヌル。
私の今の不安な気持ちをすべて見透かしている気がする。
「ピョル?・・・パダ?・・・タル?
この中から選んでみて」
ピョル?パダ?なんだ、それ・・・?
それに樽?
ハヌルが候補に挙げた3つのうち、2つは意味がよくわからない。
私の答えは