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到着の浜辺

 振り返ると同い年くらいの女の子が立っていた。

 太陽と重なり、顔はよく見えない。


 「ここは、どこ?」

 馬鹿な質問かと思ったが、問いかけてみた。

 「到着の浜辺。…ということは、あなたも海の向こうから飛ばされてきたんだ」

 「海の向こうから?」

 おうむ返しに聞き返した。

 海の向こうからってどういうことだろう。

 ここはどこなんだろう。

 飛行機から落ちたのは、・・・夢?


 「わからないことだらけでしょ」

 少女は私の考えを見透かしたかのように、そう言った。

 「私の家は、すぐそこだからついてきて。とりあえず着替えましょ」


 少女に促されて立ち上がり、後に従った。

 何が起きてるのか理解できていない私には、そうするより他はなかった。


 並んで立つと、彼女は私よりほんの少し背が高かった。

 改めて彼女を観察した。

 カーキ色のパーカーにカーキ色のパンツ。

 ポニーテールに結んだ髪は少し赤みをおびているが、黒髪。


 言葉も通じたし、ここが日本であることは間違いない。

 到着の浜辺?どこだろう・・・?

 

 「ここは どこ?」

 もう一度尋ねてみた。

 「到着の浜辺だってば。んと・・・ムルナラの南端みなみはじってことを聞きたいのかな」


 ムルナラ?どこだ、それ?

 聞いたことのない地名。

 「ムルナラ・・・って言いました?どんな字、書くんです?」

 「字?」彼女は一瞬立ち止まって振り向いた。「どんなもこんなも ムルナラはムルナラ」

 そういうと彼女は、また歩き出した。


 ムルナラ・・・ムルナラ・・・聞き覚えのない地名。

 黙って彼女について行くしかないようだ。


 砂浜から続く道はそのまま林の中に続いていた。

 海から離れると波の音も消え、静寂だけだった。

 私と彼女の足音だけだった。

 いくらも歩かないうちにログハウスが見えた。


 「ここよ。どうぞ」

 彼女が扉を開けてくれた。

 中は真っ暗だった。

 入ることがためらわれた。

 明るい昼間。

 林の中とはいえ、日は十分に差し込んでいるのに、真っ暗な室内。

 扉を開けたまま、彼女が先に中に入った。


 「2-3日留守にしてたからね、窓、閉め切ってて・・・」

 ガタガタと物音がした。

 中が明るくなった。

 雨戸でも閉めてあったのだろう。


 中央に大きな木のテーブルと椅子が4つ。

 正面に暖炉が見えた。2方の壁に窓・・・珍しい。突き上げ戸だ。

 ガラスは入っていない。

 ベッドとチェストがひとつずつ。

 殺風景といえば殺風景かもしれない。

 

 さっきは気づかなかったが、彼女は腰にナイフを下げていたようだ。

 小ぶりなナイフで、それをテーブルの上に置くとチェストの引き出しを開け、中から服を出した。

 「こんなものしかないけど、濡れたままよりましでしょ。

 ここ、一部屋しかないから。女同士だし、ここで着替えて」

 彼女から受け取ったのはスウェットパーカーとひざが隠れるくらいのロールアップカーゴパンツだった。

 

 彼女に背を向けてすばやく着替えた。

 サイズはちょうどよかった。


 私が着替えを終わったのを見て、彼女が言った。

 「さて、何から説明する?何、聞きたい?」

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