戦闘3
「私が?
まさか」
「もう一回やってみて。
次のヌッテも雷でやって」
ハヌルに言われたけど、私にはどうすればいいのかわからない。
さっきと同じように空から何かが犬を貫くところを想像してみたが、何も起こらない。
「あかんみたい。
何もならんわ」
私が言うと、ハヌルは私の腰を指差した。
「こん棒だからじゃない?
ロッドに持ち替えてみて」
ハヌルの提案どおり、ロッドとこん棒を持ち替えて、もう一度想像してみた。
さっきと同じように。
やっぱり何も起きない。
さっきのは偶然雷が落ちただけで、私がしたことじゃないのかもしれない。
やっぱり私にはそんな力なんてないんだ。
ハヌル、ナム、期待はずれでごめん。
コヤギ、色々話してくれたのにごめん。
あぁ・・・情けない。
「雷!落ちろ!」
心の中で思い切り叫んだ。
ポン
小さな音がして火花が散った。
キャン!
犬が鳴いた。
犬は立ち上がりきょろきょろ見回すと私を認めた。
ウー。
うなり声を響かせながら、ゆっくりと私の方に進んできた。
え?
どうすれば?
私は犬が近づいてくるのにあわせて後ろに下がった。
次の瞬間犬が飛び掛ってきた。
あかん!
私は心の中で叫んだ。
ドーン!!!
さっきより大きな音とまぶしい光。
でも今度は弾き飛ばされなかった。
犬のほうはさっきより飛ばされ、息もしていないようだった。
「やったじゃん、リン!」
ハヌルが駆け寄ってきた。
やった?
私が?
「雷落とせるんだ、リン。
思い通りに力を出すにはまだ訓練がいるのかもしれないけどね」
ハヌルのうれしそうな顔を見ると、私もうれしくなった。
「私にできた?
私にそんな力がホンマにあったんや」
私は安心から涙が出そうになった。
ハヌルは嬉々として喜んでくれていた。
「この2匹を持って帰って、今日はお祝いだ」
ハヌルが、今倒した2匹の後ろ足を持って引きずりながら林のほうへ歩いた。
私はハヌルから、犬を1匹受け取って同じように引きずりながら歩いた。
林に入る手前で、ハヌルが犬を担いで両肩にかけた。
「リン、ここからは引きずっちゃいけない。
臭いにつられていろんなのがきちゃうから」
ハヌルにそういわれて、私も犬を担ぎ上げた。
思ったより重くなかった。
犬を肩に担いで、ハヌルと並んで歩いた。
「もしかしたら…この犬、さばくんやんなぁ…」
私は包丁で犬を引き裂く場面を想像すると気分が悪くなってきた。
「最初は抵抗あるよね。
でも、すぐ慣れるよ。
この子たちは死んだ瞬間血が消えるから、思ってるほど気持ち悪くないよ。
ちょっとパサついててあんまり美味しくないけどね」
首を落としても血が出なかった。
見た目より軽い。
それは、ハヌルの言うとおり血が消えるからなのか、と妙に納得した。
納得はしたが、血が出なくても、犬が切られるところは見たくはないと思った。