戦闘1
片方が太くなった棒だった。
こん棒?
「これなら殴っても折れない」
コヤギがこん棒を振り下ろして殴る振りをしてから私に渡した。
受け取ってみると、見た目より重い。
「これで殴るん?
私にできるかなぁ」
重いので当たれば痛いだろうが、腕の力が尽きそうだ。
「ロッドみたいに魔法を増幅させたりできないけど、剣みたいに魔法を妨害したりしない」
コヤギが説明した。
「剣が魔法を妨害するの?!」
ハヌルが意外そうに聞き返した。
「たぶん、その子が剣を持つとすごく重く感じると思うよ」
コヤギが言った。
私はさっきの店で持った剣のことを思い出した。
ハヌルには軽い剣が、私には重かった。
「じゃ、早速いきますか、リン」
ハヌルが店を出て行こうとした。
「どこへ?」
こん棒をベルトに挿そうとしたが、ロッドが入っていると無理なようなので手に持ったままハヌルについて行った。
「表の犬たちを相手にしに!
コヤギ、町から出るから、鍵掛けに来て」
「おう」
コヤギは私に続いて店を出た。
ハヌルが町を囲っている塀にある門を開けた。
私とハヌルが出た後、掛け金のしまる音がした。
門番のコヤギが閉めてくれたのだろう。
「この子達は、ヌッテって呼ばれてるんだけど、こっちから仕掛けない限り襲ってこないからね」
ハヌルは町の外にいる犬たちを指差して言った。
私が黙っていると
「どうしたの?」
とハヌルが聞いてきた。
「どうした・・・って?」
私がハヌルを見ると、ハヌルは微笑んでいた。
「さぁ、どうぞ」
ハヌルが笑いながら手のひらを上に向けて、犬のほうをさして言った。
「え?
・・・え・・・?
えーっ?!」
もしかしたら、私に戦えと言ってる?
ハヌルはただ黙って微笑んでいた。
「犬、苦手や言うたやん!
無理やって!
こんなんで殴るやなんて、無理無理!」
私は抵抗しようとしたけど、ハヌルはただ黙って微笑み続けた。
「犬、怖いのにぃ・・・」
私はこん棒を握り締めて首を横に振った。
「リン、往生際が悪い!
行け!」
ハヌルは笑いながらも、私に出撃命令を出した。
仕方なく、私は一番近くにいる犬に一歩近づいた。
犬はこちらを見る様子もなく寝そべっている。
もう一歩近づいてみた。
犬は顔を上げてこちらを見た。
私の足はすくんだ。
「大丈夫。
ヌッテたちはこっちが触らない限り攻撃してこないから。
髪の毛一本って距離まで近づいても何にもしてこないから」
ハヌルが後ろで言った。
私は、ハヌルをチラッと見てから、また眼を犬に戻して、また一歩近づいた。
一歩。
一歩。
一歩。
手を伸ばせば触れそうな距離にまで犬に近づいた。
「こん棒で殴って!」
ハヌルが後ろで叫んでいる。
「え?
何もしてこぉへん犬を殴るん?」
私はハヌルを振り返った。
ハヌルはうなづいている。