町2
「やぁ、ハヌル」
猫がしゃべった。
木がしゃべる世界だから、猫がしゃべっても不思議はないのかもしれない。
「コヤギ、今日もひげが輝いてるね」
ハヌルは軽く挨拶をして町の中へ進んだ。
私はコヤギという猫が気になったが、ハヌルについていった。
「まずは・・・食料!
それから、服かな。
後は・・・後で考えよう!」
ハヌルは一番近くの店に入った。
私もついて入った。
食料品店のようだった。
いくつか並んだ食材の中からハヌルは適当に選び、買った。
そこの店主ともハヌルは挨拶を交わした。
そして、そこの店主も・・・猫だった。
次に入ったのは服屋。
ハヌルは、赤いフードつきのジャケットを私のために選んでくれた。
そしてやっぱり、そこの店主も猫だった。
ここは猫の町?
次に入った店は刃物を売っていた。
「このナイフよりもうちょっと長いのがほしいんだけど」
ハヌルは腰のナイフを猫の店主に見せた。
「ほう、もうそれでは物足りなくなったか?」
店主は棚から箱を取り出した。
「これならどうだ?
ハヌルなら扱えると思うが」
ハヌルが箱から取り出したのは、ナイフというよりは、剣と呼ぶにふさわしい長さの物だった。
さやから抜くと、銀色の輝く刃の光が冷たかった。
「強力?」
ハヌルがたずねた。
「かなりな」
店主が別の箱を取り出しながら言った。
「こっちのは女性向けだが、そっちの子にどうだ?」
と、私の方を見ながら言った。
「女性向けのを私にはすすめないで?」
ハヌルはそう言いながら、後から店主が出してきた箱から剣を取り出した。
長さはあるが、細身の軽そうな剣だった。
ハヌルは剣を抜いて、軽く振ってみた。
「すごく軽いね。
軽くて、振り回すには楽だけど・・・」
ハヌルが物足りなそうに剣をさやに戻した。
「威力がないから、ハヌルの好みではないだろ?」
店主はさやに入ったままの剣を私に差し出した。
「私に?」
ハヌルが軽いといった剣は、私には重く感じた。
見た目よりは軽いのかもしれないが、ハヌルみたいに振り回せるとは思えなかった。
「どう?」
ハヌルと店主が私の顔を覗き込んだ。
「うーん・・・。
扱えそうな気が・・・せん」
私は剣を鞘から出すこともなく店主に返した。
「そうか。
これより軽いのになると・・・」
店主が背を向けて別の箱を取ろうとした。
「あ・・・いや・・・。
どんなんにしろ、ナイフや剣は私には無理や」
「そう?
でも、武器も持たずに町の外に住むのは危険だぞ」
店主はゴソゴソと何か別のものを出そうとしていた。
「大丈夫。
この子は私が守る!」
ハヌルが私の肩に手を置いて言った。
「でも実際はこの子が私を守ってくれてるんだけどね」
「ほう?」
店主は手を止めて私を見た。
「剣を使わずに守るって、格闘家か?」
「ナムが言うには、自分や周りの人を守る力があるかもしれないって」
ハヌルが説明すると、店主はまたしゃがんでゴソゴソと探し始めた。
さっきとは違う色の箱を取り出した。
「永いことしまいこんでいたが、使う時が来たかな。
人を守る力となると・・・これが使えるかもしれない」
店主が箱をあけて見せたのは、50センチくらいの木切れだった。